プロとアマチュアのスウィングを比較するとさまざまな違いに気付く。だが、どこに注目すべきなのか? そのヒントが「背中の丸み」にあるという。背中が丸いことでどんな効果が得られるのか? 飛距離アップに特化したレッスンが好評の服部公翼プロに詳しく解説してもらおう。
画像: 50歳を過ぎてもトップで活躍するフィル・ミケルソンら一流プロのインパクトには共通点がある。それが背中の丸みだ。猫背のような背中のカーブが、強くて正確なインパクトを生むのだ

50歳を過ぎてもトップで活躍するフィル・ミケルソンら一流プロのインパクトには共通点がある。それが背中の丸みだ。猫背のような背中のカーブが、強くて正確なインパクトを生むのだ

「猫背」は悪いことではない

服部公翼プロは、アマチュアとプロのショットにおける決定的な違いを教えてくれた。

「ショットを後方から見たとき、プロは例外なくインパクトで背中が丸まります。一方、アマチュアは背中が丸まるどころか、伸びてしまう人がほとんどです。ここに飛距離不足、インパクトの精度の低さ、弾道の不安定性など、すべての問題が集約されています。だからこそインパクトで背中が丸まる感覚をつかんでほしいんです」 

背中を丸めるというと「猫背」を想像するが、猫背でいいのか?

「猫背は悪いことではありません。タイガー・ウッズ、フィル・ミケルソン、ジョン・ラームなど、一流選手を見れば、一目瞭然です。では、なぜ背中が丸まるのか? その答えが“遠心力”にあります。プロはインパクトに向かって腰(重心)がボールから離れていきます。その理由は、回転半径を維持したいからです。回転半径が保てれば、遠心力を存分に使えます。プロのアドレスとインパクトを比較すると腰とボールとの距離が同じか、もしくは遠くなります。腰がボールから離れるほど、ヘッドが届かなくなりますから腕を伸ばす必要があります。これが背中を丸める動作につながるのです」 

「背中を丸める」ポイントは「お尻・肩甲骨・右ひじ・腹筋」の4つ

アマチュアはプロとは反対になる。つまりインパクトで腰がボールに近づいてしまう。

その結果、回転半径は失われ、遠心力の恩恵が受けられないのだ。 

プロのような「背中を丸めるインパクト」には、4つのポイントがあると服部プロ。

画像: 【お尻】「トップで右のお尻を後方へ引き、インパクトにかけて右お尻はそのまま、左お尻を後方へ引きます。この引いて引くイメージが持てると腰は前に出なくなります」(服部プロ)

【お尻】「トップで右のお尻を後方へ引き、インパクトにかけて右お尻はそのまま、左お尻を後方へ引きます。この引いて引くイメージが持てると腰は前に出なくなります」(服部プロ)

「まずはお尻をイメージしてください。構えたときのお尻の位置を基本として、テークバックでは右のお尻を後方へ引き、インパクトにかけて左のお尻を後方へ引きます。こうすることで腰(重心)がボールに近づかなくなります。 

画像: 【肩甲骨】「スウィングでは必ず肩甲骨の開閉が行われます。トップでは右の肩甲骨が閉じ、左が開きます。インパクトで左右の肩甲骨が開き、フォローでは左の肩甲骨が閉じ、右が開きます。覚えておきましょう」(服部プロ)

【肩甲骨】「スウィングでは必ず肩甲骨の開閉が行われます。トップでは右の肩甲骨が閉じ、左が開きます。インパクトで左右の肩甲骨が開き、フォローでは左の肩甲骨が閉じ、右が開きます。覚えておきましょう」(服部プロ)

そして肩甲骨の使い方ですが、ここが背中を丸める核心部です。背中を丸めるとは肩甲骨が開いた状態です。背骨から肩甲骨が離れることで背中に丸みが生まれ、腕が長く使えるようになります。腰が後方へ離れても腕の長さがあれば、ヘッドはボールに届きます。 

画像: 【右ひじ】前傾が保てると右ひじが通れるが、前傾が崩れると右ひじが通れない。「左手は伸ばし、右ひじは離していくイメージがベストです」(服部プロ)

【右ひじ】前傾が保てると右ひじが通れるが、前傾が崩れると右ひじが通れない。「左手は伸ばし、右ひじは離していくイメージがベストです」(服部プロ)

右ひじも大切です。右ひじは体の前で離れていくのが理想です。これを可能にするのが前傾角のキープです。前傾が起きてしまうアマチュアのインパクトでは右ひじが詰まってしまい、前に出せなくなります。お手本のリッキー・ファウラーのように右ひじが体から離れていくと、遠心力を最大限利用することができます。 

画像: 【腹筋】「お腹に力を入れるとお尻が後方へ下がる『くの字』になります。これが前傾キープに役立ちますし、背中も丸めやすくなります。インパクトに合わせて声を出すとより体感しやすいです」(服部プロ)

【腹筋】「お腹に力を入れるとお尻が後方へ下がる『くの字』になります。これが前傾キープに役立ちますし、背中も丸めやすくなります。インパクトに合わせて声を出すとより体感しやすいです」(服部プロ)

最後が腹筋です。お腹をキュッと締めるようなイメージです。そうすると腰が前に出づらくなります。つまり前傾を保ったまま、インパクトしやすくなります。感覚がつかめない場合は、インパクトに合わせて『ドーン』と声を出してみるといいです。腹筋に力が入るのがわかるはずです」 

下半身は上へ、上半身は下へ

画像: 「背中が丸くなるプロのインパクトは、アマチュアと真逆で前傾が深くなります。その結果、腰がボールから離れていきます。回転半径を長く保つことで最大の遠心力が生かせるようになります」(服部プロ)リッキー・ファウラーのインパクトがお手本だ

「背中が丸くなるプロのインパクトは、アマチュアと真逆で前傾が深くなります。その結果、腰がボールから離れていきます。回転半径を長く保つことで最大の遠心力が生かせるようになります」(服部プロ)リッキー・ファウラーのインパクトがお手本だ

お尻・肩甲骨・右ひじ・腹筋の4つがポイントになるが、その前提に上半身と下半身の使い方があると服部プロ。どういうことか?

「地面のボールを前に飛ばすゴルフでは、上半身と下半身でエネルギーの出し方が異なります。下半身は脚を伸ばすことでパワーが生まれます。つまり上に向かうエネルギーです。その力を押さえ込み、下へのエネルギーに変えるのが上半身の役割です。リッキー・ファウラーのインパクトがそれを証明しています。下半身は上へ、上半身は下への動きになりますから、背中が丸まらないとボールをとらえられないのです」

「背中を丸めるインパクト」は遠心力を生かす、大きなキーワードであることはわかった。

「ボールから離れる」?

では、どうすればマスターできるのか?

「インパクトではボールに近づかず、ボールから離れる動きが重要です。多くのアマチュアは、ボールから離れるなんて考えたことがないかもしれません。ですが、その動きをつかまない限り、遠心力は生かせませんし、インパクトで背中を丸めることもできません。 

ハンマー投げを思い浮かべてください。ハンマー投げでは、体をハンマーに近づけたりしませんよね。むしろハンマーから体は離れようとするはずです。ハンマーと体が引っ張り合うことで強いエネルギーが生まれるわけです。ゴルフも同じ。遠心力を生かすにはボールから離れること。そして離れてもしっかりボールをとらえられる体の使い方を覚えることです」 

服部プロは自然に「背中が丸まる」ドリルを6つ教えてくれた。その大前提に「ボールから離れる」があるのだ。

「ボールから離れるとは、体(脚やお尻)を引くのと同じです。ゴルフは押すのではなく、引く動きが重要です。左のお尻を後方へ引く、左足を後方へ引く、これらのドリルを繰り返すとボールから離れる動きがつかめるはずです。 

プロのインパクトは頭も下がります。これは背中が丸まった結果でもあります。お尻を後方へ引き(腰が離れる)、そのバランスを取るために上半身の前傾が深くなっていく。これが最も効率のいいインパクトを生む、体の使い方なのです。覚えておけば、ドライバーの飛距離だけでなく、アイアンやウェッジまで、すべてのショットが激変するはずです」 

インパクトは背中を丸めろ! この動き、試してみる価値大だ。

「背中が丸まる」6つのドリル

画像: ドリル①クロスハンド打ち

ドリル①クロスハンド打ち

◆ドリル①クロスハンド打ち

「クロスハンドでティーアップしたボールを打ちます。当たらない人はボールと体との距離が合っていない証しです」

ボールとの正しい距離感をチェックする最適なドリルだ。

画像: ドリル②遠いボールに構えて手前のボールを打つ

ドリル②遠いボールに構えて手前のボールを打つ

◆ドリル②遠いボールに構えて手前のボールを打つ

ティーアップしたボールの奥にボールを置き、そこに構え、ティーアップしたボールを打つドリル。

「手前のボールを打つのでボールから離れないと上手く当たりません」

画像: ドリル③スプリットハンドで餅つきインパクト

ドリル③スプリットハンドで餅つきインパクト

◆ドリル③スプリットハンドで餅つきインパクト

「スプリットハンドでクラブを持ち、餅つきのようにクラブを下ろし、シャフトをしならせます。この目的はインパクトに合わせてお腹を締めることです。グッと力を込めてシャフトをしならせましょう」

画像: ドリル④左手で右ひじを支え右手1本で打つ

ドリル④左手で右ひじを支え右手1本で打つ

◆ドリル④左手で右ひじを支え右手1本で打つ

左手の甲を右ひじの下に入れ、支えるようにして右手1本で打つ。

「右ひじを体から離していく感覚、前に出していく感覚が養えます。最初は素振りからでいいです」

画像: ドリル⑤右手を左お尻のポケットに入れ左手1本で素振り

ドリル⑤右手を左お尻のポケットに入れ左手1本で素振り

◆ドリル⑤右手を左お尻のポケットに入れ左手1本で素振り

左手1本でクラブを持ち、右手を左お尻のポケットに入れる。

左手1本で素振りしながら、右手を使って左のお尻を後方へ引っ張る。

左のお尻を後ろへ引く感覚がつかめる。

画像: ドリル⑥インパクト後、左足を後方へ引く

ドリル⑥インパクト後、左足を後方へ引く

◆ドリル⑥インパクト後、左足を後方へ引く

通常のトップからフォローで左足を後方へ引くドリル。

左お尻の引き方がつかめる。

「腰を引くようにインパクトするので前傾が深くなり、背中も丸めやすくなります」

PHOTO/Hiroaki Arihara、Tadashi Anezaki、Blue Sky Photos、Yasuo Masuda

THANKS/オークラランドゴルフ練習場

※週刊ゴルフダイジェスト2023年11月7日号「インパクトは背中を丸めろ」より

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