プロに転向したのは今年の6月!
現時点でまだ、その名前の呼び方が確定していない選手を紹介します。これまでPGAツアー、つまりアメリカではラドビッグ・エイバーグと呼ばれてきましたが、今回のライダーカップを境に母国・スウェーデンの発音に近い"ア(オ)バーグ"と呼ぶようになるかもしれません。実際、ライダーカップでは記者たちから「スウェーデン語では何と発音するんだ」と質問が出ていました。
ライダーカップ欧州選抜のルーク・ドナルドは、スウェーデン出身のこの24歳の若者をキャプテンズピックで選出。まだPGAで未勝利の選手の推薦は、異例なことでサプライズでもありました。ただアマチュア時代の実績を見れば、当然とまでは言いませんがボクも選ばれる資質は十分にあるし、今後の欧州選抜を引っ張っていく逸材だと思います。
テキサス工科大出身で、在学中、22、23年にベン・ホーガンアワード、23年はジャック・ニクラスアワード、ハスキンズアワードと3賞を独占し、22年には世界アマチュアランク1位になり、プロ転向する23年6月まで29週君臨しました。全米学生を終えるとプロ転向ができるPGAツアーユニバーシティ制度のもと、今年から1位は直接PGAツアーに行けるようになり、6月のカナディアンオープンでプロデビューしました。
その活躍が注目されるなか、多くの人の予想以上の安定感を発揮、7月のジョンディアクラシックでは4位。ティーショットの数字も素晴らしく「ライダーカップに呼んだほうがいいのでは?」との声が上がってきます。その後、8月の欧州ツアーのD+Dリアルチェコマスターズで4位、オメガ欧州マスターズで優勝しメンバー入りは決定的に。ライダーカップに選出された後、PGAに戻った10月のサンダーソンファームズ選手権で2位。PGAでの優勝はもはや時間の問題でしょう。
ルーク・ドナルドがその存在を知り、ライダーカップの候補として考えたのは、まだエイバーグがアマチュアだった1月のドバイ。この試合でエイバーグは初日、トップに立つのですが、一緒に回ったモリナリ兄弟の兄エドアルドが、「こいつすごいよ」と報告したのがきっかけだとか。ちなみにエドアルドはライダーカップで情報収集と分析を担当、アメリカチームは「150ヤード以内は強い」というデータ分析が、戦略のみならずコース設定にも及び、欧州チーム優勝の陰の功労者でもあります。
本人は8月のウィンダム選手権まで出場し、それまでに優勝できなかったらフェデックスフォールシリーズの7試合で125位以内を目指す腹づもりだったようです。しかし9月にキャプテンズピックで選ばれると、戦いの舞台をヨーロッパに変更、3試合に出場し4位、優勝、10位の結果を残し、ライダーカップに臨みました。ライダーカップではデビューマッチで勝つものの、あとは負け。これもいい経験になるに違いありません。
強い選手特有の空気感に包まれており、アメリカでも、いつ勝つのか、という話題でいっぱい。統一した名前を急ぐのは、そのためでもあるのです。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年11月21日号「うの目 たかの目 さとうの目」より