スウィングにおける右足の蹴りはアマチュアゴルファーにもよく知られていること。だが、その"やり方”が間違っているとしたら……。スウィングに詳しいプロに聞くと「右足の蹴り方で飛距離はかなり変わります」と言うのだ。本当に飛ぶのか? どう蹴ればいいのか? 北野正之プロに教えてもらった。
画像: 体の重さや強さで飛距離を伸ばしたい。ジョン・ラームは腕や手を使わない代表的な選手のひとり。超コンパク トなスウィングでも体の重さや強さを利用すれば、300Yを超える飛距離を出せるのだ(Photo/Blue Sky Photos)

体の重さや強さで飛距離を伸ばしたい。ジョン・ラームは腕や手を使わない代表的な選手のひとり。超コンパク
トなスウィングでも体の重さや強さを利用すれば、300Yを超える飛距離を出せるのだ(Photo/Blue Sky Photos)

右足の蹴りでインパクトが厚くなる!

飛距離アップはアマチュアの永遠のテーマ。「気づき」のアドバイスに定評がある北野正之プロは、

「飛距離に直結するボール初速を上げる方法はいくつかあります。たとえば、ミート率を上げる、ヘッドスピードを上げるなどなど。多くのアマチュアは、ヘッドスピードを上げようと考えます。ですが、私のレッスンではスピードより"重さ"を意識しましょうと教えます。

ヘッドスピードを上げるのは大変ですし、上がれば上がるほど、ヘッドは暴れるのでミート率が悪くなります。その点、自分の体重を利用するのは、難しくありません。ボールに自分の体重が乗るだけで、ボール初速は間違いなく上がります。そのカギが右足の蹴り方にあるんです」

右足の蹴りには、自分の体重を乗せるという目的があるわけだ。右足を蹴るとは、どういうイメージなのだろうか?

「ゴルフは地面にあるボールをターゲット方向に飛ばさなければなりません。ですからターゲットに向かって体当たりするような感覚が必要なのです。言うならば、ラグビーのタックルです。体の重さをヘッドを通してボールにぶつける、そんなイメージです。そのために右足の蹴りがありますが、アマチュアは蹴る方向が『上』になっています。これだと重さはボールに伝わりません。ターゲットに向かって体当たりのイメージですから右足は『前』(飛球線方向)に蹴っていくのが正解なんです」

右足を蹴って体当たり。そんな意識でクラブを振るアマチュアは少ないだろう。それでは具体的な「右足の蹴り方」を教えてもらおう。

右くるぶしを地面に近づけるように蹴るのが理想

画像: ステップ1:右くるぶしを地面に近づけるイメージ ステップ2:つま先を支点に右かかとを回す ステップ3:右足の甲を地面に近づけるイメージ

ステップ1:右くるぶしを地面に近づけるイメージ ステップ2:つま先を支点に右かかとを回す ステップ3:右足の甲を地面に近づけるイメージ

前方向への右足の蹴り方について、北野プロは3ステップで流れを教えてくれた。

「ステップ1の蹴り方が最も重要です。右のつま先で蹴るのではなく、右のくるぶしを地面に近づけるように“土踏まず”で蹴ります。こうすることでターゲットに向かって体当たりするように蹴っていけます。

ステップ2では、土踏まずで蹴った後、つま先を支点に右のかかとを回していく。この動きがスムーズなフォローにつながります。かかとを回すと腰も回りやすくなる。また、つま先で蹴ると右ひざが前に出やすくなり、右サイドがかぶってきます。その結果、アウトサイドイン軌道(カット打ち)になり、体重を乗せられなくなります。蹴るときは、右のくるぶしを意識してください。

ステップ3の右足の甲を地面に近づけるイメージも大切です。右足の甲を地面に近づけるようにすると、右ひざは左ひざに近づいていきます。この動きがつかめると腰が回りやすくなり、左足1本でフィニッシュできます。

まずは右足で蹴る。そこから始めてみてください。右足を蹴る動きだけで体重は乗るので飛距離は十分伸びるはずです。ただもっと体の重さを利用するには、左サイドの意識が必要になります」

右足の蹴りをさらにパワーアップさせるには、左サイドの動きが重要になると北野プロ。体が左へ流れ過ぎてしまうとパワーが効率よく伝わらないからだ。

「左ひざが流れるという動きですが、左サイドに壁がないと右足の蹴りのパワーがロスしてしまうのです。大切なのは左サイドを浮かせないこと。左サイドが浮かなければ、体重はしっかりボールに伝わります。

画像: 右足の蹴りを生かすには、左サイドが大事という北野プロ。「左サイドが浮くと体重は乗せられません。餅つき のように真下へクラブを下ろす。そのイメージが重要です。タックルと同じで体は低く保ちましょう」

右足の蹴りを生かすには、左サイドが大事という北野プロ。「左サイドが浮くと体重は乗せられません。餅つき
のように真下へクラブを下ろす。そのイメージが重要です。タックルと同じで体は低く保ちましょう」

ポイントは3つあります。左足の踏み込みと左肩を上げない。これが左サイドの壁の役割です。そして切り返しからダウンスウィングにかけて、手元を真下へ下ろすことです。アマチュアは切り返しからクラブを横に振ろうとします。クラブを寝かせる動き(シャローイング)が強いほど、左サイドは浮きやすくなります。そうではなく、手元は真下へ下ろす、クラブに体重を乗せていくような意識がポイントです」

ストッパーの役割を果たす左サイドの壁は、右足の蹴りのパワーを増幅させる大切な要素になる。この2つがセットになることで、ぶ厚いインパクトが可能になるのだ!

ドライバーからバンカー、パッティングまで。「右足の蹴り」はメリットいっぱい

右足の蹴り方で飛距離は確実に伸びるという北野プロ。だが、本当のメリットは、ほかにあるという。どういうことなのか?

「体重が乗った厚いインパクトは当たりが強くなります。その結果、ボール初速が上がるのですが、初速が上がるので大振りする必要がなくなります。これはプロにとってもアマチュアにとっても大きなメリットです。クラブは大きく振るほど、当てるのが難しくなります(ミート率が悪化)。ヘッドスピードが上がっても同じことが起こりますが、振らなくても飛びますから、曲がり幅もミスショットも少なくなります。飛んで曲がらないドライバーショットが打てれば、スコアメイクはグッとラクになるはずです。

さらにアマチュアが苦手なバンカーショットも驚くほど、簡単になります。深いラフよりも抵抗が強いバンカーでも右足の蹴りで生まれる厚いインパクトができれば、一発で出ます。フェースを開き、オープンスタンスで構えてなど、バンカーのセオリーがありますが、打ちたい方向に構えて右足を蹴るだけです。試してもらえれば、すぐわかりますよ」

大振りしなくてもドライバーが飛び、バンカーでも簡単に脱出できる。体重が乗った厚いインパクトは想像以上にメリットがある。

「ラウンド前の練習で、アマチュアは、今日は振れている・振れていないと考えますが、プロはインパクトの厚さで調子を判断しています。体重が乗っている・乗っていないです。アマチュアはスピードばかりを気にしますが、プロは重さを重視しているのです。

ゴルフボールは小さく軽いので、なかなか重さを意識できません。ですが、ゴルフボールより大きいソフトボールや鉄球を打つとなれば、当たり負けないように自分の重さを使うはずです。インパクトに合わせて体を重く、強く、硬く、そんな感覚が持てるとインパクトの厚さは変わっていきます。

体重の乗ったインパクトはパットの精度にまで好影響をもたらします。ショットほど、右足を蹴るわけではないですが、体重を乗せる感覚はパッティングにも応用できます。厚いインパクトは緩まないインパクトになり、タッチも方向性も整っていきます。ロングパットもショートパットもインパクトが緩まなくなるのです」

右足の蹴り方、そして左サイドの壁。それによって生まれる厚いインパクトは、飛距離だけでなく、スコアメイクにおいても重要な技術。北野プロおすすめのドリルでその感覚をマスターしよう。

画像: ドリル1は左足の外側のボールをボールを打ってみる。ドリル2は、ももにボールを挟んで打つ練習だ

ドリル1は左足の外側のボールをボールを打ってみる。ドリル2は、ももにボールを挟んで打つ練習だ

ドリル①→最初は右足の蹴り方を覚えるドリルから。左足の外側にボールを置き、右足の蹴りでボールをとらえます。右足を飛球線方向に蹴らないと上手く打てないはずです。

ドリル②→右足の蹴り方と左サイドの壁を同時にマスターするドリルです。ももの間の大き目のボールが落ちないように両足を内側に絞りながら、体重を乗せた厚いインパクトを意識しましょう。

PHOTO/Atsushi Tomura Tadashi Anezaki 協力/サザンヤードCC

※週刊ゴルフダイジェスト23年11月14日号「飛距離が伸びる『右足の蹴り方』」より

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