来年のシード権を決めるサバイバルレース。最終日は奇しくもルーキー・オブ・ザ・イヤーを争う2人の対決となった。かたや、かつて世界を虜にしたフェアウェイの妖精ローラ・ボーの息子エリック・コール。そして冬場は雪に閉ざされるスウェーデンの片田舎で育ったアバーグ。
すでにポイントランクトップ50以内を決めながらフォールシリーズにも果敢に参戦してきたコールだったが、最終日の前半崩れて3位タイに終わり、涼しい顔で10バーディ(1ボギー)を奪ったアバーグが栄冠に輝いた。4日間で叩いたボギーがこの日の1つだけとはあっぱれである。
「子供の頃からPGAツアーに勝つのが夢だったのでそれが叶ってうれしい」と声を弾ませた彼は今年プロ転向したばかり。蝉川泰果の前にアマチュア世界ランキング1位だった人物でジョージア工科大学をでたあと、大学ナンバー1に与えられるPGAツアーユニバーシティ1位の資格で今季11試合に出場した。
特筆すべきはDPワールドツアー(欧州)のオメガ・ヨーロピアン・マスターズでも優勝し、10月のライダーカップではキャプテン推薦でおよそ100年ぶりに“メジャーに出場経験がない”メンバーに選ばれたこと。
すると大会初日の午前ビクトル・ホブランとの北欧コンビでマックス・ホーマ&ブライアン・ハーマンペアを4&3の大差で破り、午後にはスコッティ・シェフラー&ブルックス・ケプカの強豪ペアを撃破して欧州チームの勝利に大きく貢献。一躍注目を集めていた。
今回の優勝でフェデックスカップポイントは96位から53位に浮上。年明けのセントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンに加え昇格試合のAT&Tペブルビーチ・プロアマとジェネシス招待への出場権が与えられた。
そして何よりうれしいのがマスターズの招待状。初のメジャー挑戦で、またまた規格外の凄いことをやってくれそうな予感が漂っている。
アバーグが61-61をマークした決勝ラウンド36ホールを同組でプレーした32歳のマッケンジー・ヒューズは勝者のポテンシャルの違いをこう表現した。
「沼地に囲まれた5番(407ヤード)で彼は楽々グリーンに乗せ、2パットでバーディを奪った。遠くに飛ばすだけでなくストレートに打ち出せる印象的なショット。彼は戦うのに必要なものをすべて持っている」
国内ツアーでも今季のメジャー覇者ブルックス・ケプカ、ウィンダム・クラークを擁した分厚いフィールドでアマチュアの杉浦悠太がダンロップフェニックスで優勝するなど、世界で20代前半のヤングガンが躍動している。
かつて男子プロのピークは30代といわれたものが最近は20代前半からたたみかけるように勝利の連鎖を呼び込む選手が多くなった。ちなみにデビューイヤーに欧米両ツアーで優勝したのはアバーグが初。決して一発屋ではない骨太の若手が世界のゴルフシーンを変える?