ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、今季PGAツアー初優勝を挙げたインド系アメリカ人選手、サヒス・ティーガラについて語ってくれた。
画像: フォーティネット選手権で初優勝を飾ったサヒス・ティーガラと父親のムラリダールさん、母親のカルナさん(Photo/Getty Images)

フォーティネット選手権で初優勝を飾ったサヒス・ティーガラと父親のムラリダールさん、母親のカルナさん(Photo/Getty Images)

見ていてワクワクするゴルフが持ち味のティーガラ

フェデックスカップ・フォールの初戦、9月のフォーティネット選手権。カリフォルニア出身のサヒス・ティーガラが、地元で嬉しいPGAツアー初優勝を飾りました。

その優勝の歓喜を、本人よりも体いっぱいで表現したのが父親のムラリダールさん。試合中は息子がナイスプレーをするたびに、ギャラリーの一人一人とハイタッチ。とにかくキャラクターが最高で、はた目を気にせずに誰よりも息子を応援する姿が微笑ましい。

そして、それを静かに見守るのが母のカルナさん。ときに父の暴走(?)を制止しては、強い家族愛でティーガラを支えているようです。

ティーガラは25歳のインド系アメリカ人。父は大学院進学のためにアメリカに移住、母はインドからの移民。そのため当人はアメリカ人ですが、インド人としての強い意識を持っています。今年のバラクーダ選手権で初優勝したアクシャイ・バティア、ともに欧州ツアー2勝のシュバンカー・シャルマやアーロン・ライなど、ここ数年でインド勢が台頭。

人口も世界一となり、いずれ経済でも中国を抜くと目されるインドですが、スポーツに限っては後進国。しかし、男子やり投げのニーラージ・チョプラが東京五輪、先の世界陸上でインド人初の金メダリストになったことで国民的英雄に。ティーガラらインド勢の躍進も、こうした流れのなかにあるのでしょう。ゴルフ界でも、今後はインド勢に注目が集まりそうです。

ペパーダイン大学から20年にプロ転向。コーンフェリーツアーを経て21年にPGAに昇格。そして22‐23シーズンは何度か優勝争いに加わり、トップ10フィニッシュは実に7回。しかし一方で、フェデックスランク31 位で最終戦のツアー選手権に進めず、悔しい思いも経験しています。

実は昨年、NETFLIXで『GOLF IS HARD』という番組が放映されました。邦訳すれば「ゴルフは難しい」ですが、番組の内容は「勝つのは難しい」というもの。

そこに登場したのが全米プロで敗れたミト・ペレイラと、昨年のフェニックスを首位で迎え17番でティーショットを池に落としたティーガラでした。そこにも誰よりも息子を応援し、誰よりも息子の敗戦を悔しがり、同時に息子を励まし、「よくやった」と声をかける父の姿が……。

実は今年の全米女子オープン。ハワイ出身のアリセン・コープスが優勝を決めた瞬間、一目散で水かけに走る中年男性を、どこかで見た人だなと思ったら、ティーガラのお父さん。ジュニア時代、家族ぐるみの付き合いをしていたそうでこの興奮ぶり。「自分の息子が優勝したらどうなるんだ!」と思ったものです。

子どものときから少しでも遠くに飛ばし、球を曲げて遊んできた結果、自然と身についてきた雰囲気のナチュラルさがあるスウィング。往年のパーマーやバレステロスのようにティーショットが散らばった後にどんなリカバリーショットをするのか、見ていてワクワクするようなゴルフ。何より父の献身的な応援は特別カメラで追われるほど。ティーガラだけでなく、父の姿も楽しみたいですね

画像: 「右サイドベンドが強く、頭1個分くらい沈む独特とも今時とも言えるスウィング。トップの切り返しからカット軌道になってスライスが出そうな雰囲気から、右サイドを倒しながら上手くシャローな軌道に持ってきます」(佐藤)

「右サイドベンドが強く、頭1個分くらい沈む独特とも今時とも言えるスウィング。トップの切り返しからカット軌道になってスライスが出そうな雰囲気から、右サイドを倒しながら上手くシャローな軌道に持ってきます」(佐藤)

※週刊ゴルフダイジェスト2023年11月28日号「うの目 たかの目 さとうの目」より

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