「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけてきたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回は女子ツアーでミズノアイアンの使用者が増えている理由を教えてもらった。
画像: 8年ぶりに「ミズノプロ243」へアイアンをチェンジした稲見萌寧(写真/大澤進二)

8年ぶりに「ミズノプロ243」へアイアンをチェンジした稲見萌寧(写真/大澤進二)

国内メーカーが注目されるのはいいこと

みんゴル取材班(以下、み):昨年は高橋彩華が「ミズノプロ225」に替えた途端、フジサンケイレディスで初優勝。今年は同じ黄金世代の吉本ひかるが「ミズノプロ225」で明治安田生命レディス ヨコハマタイヤで初優勝しました。穴井詩は「JPX921ツアー」で2勝。稲見萌寧は8年ぶりに「ミズノプロ243」へアイアンチェンジしてTOTOジャパンクラシックで勝ちました。

また、以前ミズノと契約していた川岸史果は「ミズノプロ223」でリシャール・ミル ヨネックスレディス。原英莉花は「JPX923ツアー」で日本女子オープン、西郷真央は「JPX923フォージド」を使って伊藤園レディスでそれぞれ優勝。そのほかにも木下彩、三ヶ島かな、仲宗根澄香、エイミー・コガ、石井理緒らがミズノのアイアンを使用しています。ミズノのアイアンがクラブ契約フリーの女子プロに選ばれるのはなぜだと思いますか。

宮城:顔がいいという評価が多いですね。個人的には昔のミズノのアイアンはもっと顔がよかったと思っていますが、いまのミズノも外ブラと比べたらかなりいいです。ミズノのアイアンはライとロフトも他のメーカーと比較すると、合っていると思うので、最初からすんなりと入ることができます。ライ・ロフトは後から調整できますが、第一印象が大事です。

み:ミズノの顔のよさとは具体的にどの部分ですか。

宮城:一番はすわりのよさです。ぼくもそうしていますが、日本のメーカーがヘッドを設計するときは、まず樹脂のモックアップを作り、実際にかまえてみてソール角やプル角を調整します。そして鉄のマスターモデルを作ったときにも再度微調整します。これに対して外ブラはパソコンの中で設計が完結し実際のすわり方を見ません。だからかまえたときにぺらっと開いたりします。

あとは製造工場のクオリティも違いもあると思います。以前、海外の下請け工場を訪ねたときに、研磨職人が何に使う道具か知らずにヘッドを削っていると聞いて驚きました。ミズノも「JPX」を中国で生産していますが、その工場に出資もしているので生産管理は厳しく行っているはずです。

み:丁寧なモノ作りは日本メーカーの強みですね。機能面で何か違いはありますか。

宮城:中空の飛び系アイアンにタングステンをがっつり入れると、飛ぶけれど止まらないアイアンになります。でもミズノの場合はソールに極端な加重をしていないと思います。中空は構造上、高重心でスピンが入るので飛び系でもグリーンに止まります。

また、ミズノのアイアンは欧米規格でソール角が少ないため、インパクトを厚く入れる日本の男子プロには合いにくいけれど、ターフを取らない女子プロの打ち方には合いやすいといえます。ただ、極端にいえばある意味「ぶっつけスライス」のようなダウンブローで打つ稲見選手が替えたのはびっくりしました。

み:契約選手の人数が減っているのにアイアン使用者が増えているのは皮肉な感じがします。

宮城:昔、松山英樹選手がドライバーを使いたいと言ってきたときにキャロウェイは提供を断ったそうです。メーカー間には駆け引きがあって、ダンロップとの摩擦を避けるためです。ぼくがヨネックスにいたときも石川遼選手のアイアンは他の選手に出しにくかったです。

でも、ミズノの場合は契約選手が少なくなったことで、フリーの選手に提供しやすくなったのではないでしょうか。ミズノやヨネックスのアイアンは女子プロの活躍でこれからブレイクするでしょう。こういう形で国内メーカーが注目されるのはすごくいいことだと思います。

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