国内男子ツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」を制し賞金ランク2位で締めくくった蟬川泰果。みんなのゴルフダイジェスト編集部員でプロゴルファー・中村修がそのスウィングを解説。

賞金ランク1・2・3位が優勝争い

ゴルフ日本シリーズJTカップは前週に賞金王を決めた中島啓太、同2位の金谷拓実、3位の蟬川泰果という若い3名が最終ホールまで優勝争いを続ける見どころのある展開になりました。

松山英樹の開拓した道を辿ってアマチュア世界ランク1位からマスターズに出場した金谷拓実と中島啓太の二人。その後を追ってアマチュアでツアー2勝を挙げた蟬川泰果との優勝争いで、今シーズンの国内男子ツアーを盛り上げた若い3人のプレーは目に焼き付けておきたいと感じさせる白熱したものでした。

画像: 「ゴルフ日本シリーズJTカップ」で最年少優勝を果たした蟬川泰果(写真/姉崎正)

「ゴルフ日本シリーズJTカップ」で最年少優勝を果たした蟬川泰果(写真/姉崎正)

金谷選手はアジアンツアーでも優勝し、賞金ランク3位の資格で来季のDPワールドツアーの参戦資格を得ていますし、中島選手はこの後、PGAツアーおよびコーンフェリーツアー出場に向けた予選会に参戦。今回の優勝で、賞金ランク2位に上がった蟬川選手も同じく欧州への参戦権を得ましたので、海外志向を持つ3人のプレーが国内で見られる回数は減ってしまうことでしょう。

画像: 前週に賞金王を決めた同学年の中島啓太(左)と最終戦の優勝で賞金ランク2位で今季を終えた蟬川泰果(右)(写真/姉崎正)

前週に賞金王を決めた同学年の中島啓太(左)と最終戦の優勝で賞金ランク2位で今季を終えた蟬川泰果(右)(写真/姉崎正)

ただ、松山英樹選手だけでなくオーストラリアで2週連続2位で終えた星野陸也選手やDPワールドツアーのルーキーオブザイヤーを獲得しPGAツアーへの昇格を決めた久常涼選手など、海外で活躍する選手たちが増えることは、宮里藍を見て育った黄金世代のように次世代へとつながります。

練習日に蟬川選手に来季の海外への挑戦を聞くと「ウェイティングで現地に行くのがリスクがあるので、出場が確定した状態で参戦したいですよね」と話していました。JTカップが始まる前は賞金ランク3位でしたので、より上位の資格で参戦できることになりました。

画像: 好調なドライバーショットでフェアウェイを捉えチャンスメイクできた(写真/姉崎正)

好調なドライバーショットでフェアウェイを捉えチャンスメイクできた(写真/姉崎正)

2024年4月には日本ツアーとDPワールドツアーの共催大会「ISPS HANDA選手権」が太平洋クラブ御殿場コースで開催されますので、日本勢から新たなヒーローが生まれるかもしれません。

蟬川選手のキャラクターに触れておくと、まだアマチュアとして出場していた一昨年の「三井住友VISA太平洋マスターズ」の練習ラウンドについて歩くと、見に来ていたギャラリーに対してサインしたボールを手渡しし、一緒に写真を撮るサービスぶり。そういうファンに対する気遣いがギャラリーを沸かせるプレーにも表れているこでしょう。

下半身をゆるませずに体幹をねじり上半身と下半身の捻転差を作る

前置きが長くなりましたが、スウィングを見てみましょう。左手の甲が正面から見える“ストロンググリップ”で握るので、アドレスで手元は体の真ん中に位置します。そこから下半身をゆるめずにテークバックすることで、しっかりと体幹が捻じられた安定性のあるバックスウィングへとつながっています。

画像: 下半身をゆるませずに体幹を捻じったバックスウィングがスウィングのテンポや安定性を高める(写真/中村修)

下半身をゆるませずに体幹を捻じったバックスウィングがスウィングのテンポや安定性を高める(写真/中村修)

ダウンスウィングでは下半身から切り返し、インパクトでおヘソがターゲットを向くくらいしっかりとターンさせていることが見てとれます。これは「今週はドライバーが曲がらないように打てるひらめきがあったんです。腰の回転を作ればきれいなフェードがかかっていたので、ライン取りしたいときはフェードボールの調整がいうことを聞いてくれた」と会見で話していたことと重なります。

画像: 上半身と下半身の捻転差を作りながら腰をターンさせることでコントロールの利いたフェードボールを操った(写真/姉崎正)

上半身と下半身の捻転差を作りながら腰をターンさせることでコントロールの利いたフェードボールを操った(写真/姉崎正)

フェードヒッターはインパクト付近で体のターンが止まると、左に打ち出したボールがフェードせずに左に巻くいわゆる「逆球」になってしまいます。逆球はコースマネジメントからも外れるのでスコアを崩す最も大きなミスの一つになります。

ダウンスウィングで腰を回そうとして上半身も同じ回転量になってしまうと捻転差が作れずアウトインのカット軌道になりがちです。蟬川選手の腰のキレは、下半身をゆるませずにテークバックすることで、筋肉の伸張反射を使って上半身と下半身の捻転差を作ることで生まれています。

勝負強い蟬川泰果らしいプレーで、来季は海外ツアーで大暴れする蟬川選手の姿を見せてくれることでしょう。

残るは競技は、12月10日に開催される男子ツアー、シニアツアー、女子ツアーがチーム戦で戦う「日立スリーツアーズ」のみとなりました。女子ツアーからは山下美夢有、シン・ジエ、岩井明愛、岩井千怜、小祝さくら、櫻井心那の6名。男子ツアーからは、金谷拓実、蟬川泰果、ソン・ヨンハン、平田憲聖、稲森佑貴、石川遼の6名、シニアツアーからは、P・マークセン、藤田寛之、I・J・ジャン、山添昌良、久保勝美、飯島宏明の6名が参加します。各ツアーのトップ選手のプレーを見られる年内最後のチャンスです。お見逃しなく。

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