日本ツアー参戦13年で、通算3勝のブラッド・ケネディ。来年はシニアツアーに参戦できる50歳になるベテランだが、今季も日本オープン3位タイなどトップ10入りは3回で賞金ランク25位と見事に賞金シードを獲得している。そんなケネディのコーチであるマイケル・ジョーンズ氏(文中ではMJ)にオーストラリアと日本のゴルフ環境やレッスンの違いを聞いた。【後編】
画像: ブラッド・ケネディが日本ツアーで初優勝した2012年ミズノオープン最終日。写真左のキャディがケネディのコーチであるマイケル・ジョーンズ(photo/Hiroyuki Okazawa)

ブラッド・ケネディが日本ツアーで初優勝した2012年ミズノオープン最終日。写真左のキャディがケネディのコーチであるマイケル・ジョーンズ(photo/Hiroyuki Okazawa)

オーストラリアでは若くて上手い人にはエキスパートだけが教える

GD それって日本では遅れている分野だと思うんですが。

MJ そうですね。日本ではまだスウィング、メンタル、マネジメントなど全て一人で面倒を見ているケースが多いですね。日本のプロも世界のツアーに出ていますが、まだまだ英語が喋れない人が多い。仕事で世界に行くなら最低限英語は必要になるので、これはクリアしないといけないでしょうね。ツアープロはみんな英語ができますから。そういう意味でもプロはビジネスマンなわけです。

GD やはり日本のやり方では限界がある?

MJ 一人のコーチが全部を見ると心配することしかできない分野が出てきます。その点スペシャリストが見れば、改善するための具体的な方策を与えることができる。私もオールマイティではないので手伝ってくれる人が必要。もちろんみんなライセンスを持っているエキスパートです。資格のない人がアドバイスするのは一番危ないですからね。オーストラリアでは若くて上手い人にはエキスパートだけが教えます。たぶんそこは日本と大きく違うと思う。ライセンスを持っている人じゃないと教えちゃいけない体制なんです。

GD 具体的にはマイケルさんはどんなことをするんですか?

MJ そうですね……。たとえばシーズンオフはフィジカルトレーニングがすごく大事ですが、シーズン中は少しでよくて、むしろメンタル面のケアがすごく大事になりますが、そのあたりのバランスがとれているかを見る。もしアンバランスならエキスパートに伝えて具体的に対策をとってもらう、といった具合です。エキスパートのアドバイスはアバウトではないため、実践するのがキツくてプレーヤーと衝突することもよくありますが、そんな時に間に立って正しい方向にもっていくのも私の仕事。チームでいうなら監督みたいな役割ですね。

GD オーストラリアと日本でプロのレベルはどちらが高いですか?

MJ オーストラリアのベストと日本のベストはたぶん一緒くらいです。層の厚みとなるとオーストラリアかな。

GD 日本のプロやコーチにアドバイスするとしたらどんなことでしょう?

MJ プロが自分一人で考えるのは大変です。プレッシャーが多すぎるので、少しずつでもいいからエキスパートに頼ったほうがいい。そうするとストレスが減っていい方向に回っていきます。今季日本ツアー最年長シードを守ったブラッド・ケネディ選手は有名なラグビーのメンタルトレーナーの指導を仰いでいます。コーチも一緒で、任せるところはエキスパートに任せたらいい。私も心理学者じゃないから、そこは任せている。みんなもっと楽になったほうがいいですよ。

画像: インタビューアーに日豪の違いを説明するジョーンズ

インタビューアーに日豪の違いを説明するジョーンズ

アレンジ力とメンタルが海外で成功するポイント

GD たとえば芝の違いなどで、日本とオーストラリアでプレーの仕方が変わるところはありますか?

MJ 確かに芝は違いますね。オーストラリアはバミューダ芝も多いですが、今はオリジナルの芝に変わってきています。コンビグラスと呼ばれる交配種で水があまりいらなくてしかも強い。深くはないですが絡む芝です。傾向的にはアメリカ南部・フロリダとかと同じ感じですが、地面が固いので打ち方やクラブが変わります。打ち方としてはスティープではなく、シャローにヘッドを低く動かします。また、アプローチなら下が固くて跳ね返るのでウェッジのバウンスは少なめが向きます。オーストラリアではフィル・ミケルソンみたいなロブショットよりはPWのほうが寄りますね。

GD それと比べると日本の芝はやさしいですか?

MJ ボールが芝に浮いているからやさしいですね。フェアウェイはきれいで浮いているし、ラフは時々目玉みたいになるけれど、出すだけなのは時々で大体打てます。だから日本の選手はリカバリーが上手なんです。

GD その技術を海外でやっても通じないってことですね。

MJ そうですね。フェアウェイでもボールは沈むし、ラフは長くてグリーンも固い。やはり海外で成績を出すには環境に慣れることが不可欠だと思います。場所が変われば仕事の仕方も変わる。アメリカでも同じものを使い、同じことをしていたらそれはビジネスではありません。でも、最近は海外に出ていろんなコンディションでプレーしている日本人選手も多く、練習も少しずつ変えているから上手くなっていると思います。

GD でも、基本的なテクニックが変わるわけではないんでしょ?

MJ はい。ベーシックな技はみんな一緒です。要はアレンジで、クラブのバウンスを減らすのもその一環。フェースを開いたり、ボールの位置を変えたりといったアレンジもありますが、そこは個々のフィーリングの部分なので教えられないところなんです。で、ファンダメンタル(基礎的事項)ができていれば最低限のことはできます。あとはメンタル。いかに自信をもってプレーできるかです。日本の選手が海外でスコアが出せるようになったのは自信をもてるようになったからでしょう。

マイケル・ジョーンズ
1968年生まれ。オーストラリア・ニューサウスウェルズ州出身。13歳からゴルフを始め17歳でハンディ1に。同年にはホームステイで来日、その後4年間を岡山県で過ごした。プロ転向は92年。2014年のミズノオープンではコーチをしていたブラッド・ケネディのキャディとして日本ツアーの初優勝に貢献、全英オープン出場も叶えた。現在はクィーンズランド州のサンクチュアリーコーブでクリニックを主宰する。

TEXT&PHOTO/Kazuya Kishi
THANKS/Cool Clubs

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