ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は日本シリーズで優勝争いした中島啓太、蟬川泰果、金谷拓実の「NSK」と日本の男子ゴルフ界について語ってもらった。
画像: 日本シリーズの表彰式。中央の中島啓太、左手前の蟬川泰果、左後方の金谷拓実の「NSK」。石川遼(右)らベテラン勢との戦いに今後も期待したいが、若手たちはみな世界へ!?(撮影/姉崎正)

日本シリーズの表彰式。中央の中島啓太、左手前の蟬川泰果、左後方の金谷拓実の「NSK」。石川遼(右)らベテラン勢との戦いに今後も期待したいが、若手たちはみな世界へ!?(撮影/姉崎正)

三者三様のキャラとスタイルのNSK時代到来!?

日本ツアー最終戦のゴルフ日本シリーズJTカップは、23年シーズンを象徴する見応えある名勝負となりました。カシオまで中島啓太、金谷拓実の賞金王争いとなりましたが、JTカップの結果を受けて、蟬川泰果が2位に割って入り、最終的に賞金ランク1位中島、2位蟬川、3位金谷となりました。賞金ランキングは1年間の成績で決まるとはいえ、この3人がツアーを引っ張った1年でした。

この3人が最終日を最終組で迎えたのは、全26試合中、中島9、金谷7、蟬川5試合。まさにNSK時代の到来と言えるでしょう。

JTカップではその3人の優勝争いに、(石川)遼くんが加わったのもこの1年、いやここ数年の日本のゴルフ界の象徴でした。今の若手選手のロールモデル的存在が石川遼であることは明らか。彼の活躍でジュニア人口や競技が増え、プロトーナメントに出る機会も増えて、そのなかで育ってきた若手が今、活躍しています。

倉本(昌弘)さんの史上初のアマチュア優勝から27年の歳月を経て高校1年でツアー優勝した石川。その4年後に松山(英樹)くん、さらに19年の金谷くんと続くわけですが、20−21年の中島くん、22年の蟬川くん、そして今年はダンロップフェニックスで杉浦悠太くんと、実に4シーズン連続でアマチュア優勝が続いています。

これに刺激を受け、”僕だって”と思う選手が、来年以降も続くに違いありません。これはすでに潮流を通り越し、ゴルフ界の地殻変動と呼ぶべき現象です。

テレビの仕事のない初日は、1番ホールで全選手のティーショットを見るのが、ボクのここ数年のルーティンになっていますが、JTカップで感じたのが、実に興味深いNSKのキャラクターとゴルフスタイルの違いです。弾道の高さひとつとっても、高弾道の蟬川、中弾道の中島、低弾道の金谷と三者三様です。

画像: NSK、3人のもう1つの共通点は、世界アマチュアランク1位に輝いたこと。中島はJGTOアワードで賞金王のほか、最優秀選手、平均ストローク、最優秀新人、バーディ率、ゴルフ記者賞の6冠に輝いた(撮影/姉崎正)

NSK、3人のもう1つの共通点は、世界アマチュアランク1位に輝いたこと。中島はJGTOアワードで賞金王のほか、最優秀選手、平均ストローク、最優秀新人、バーディ率、ゴルフ記者賞の6冠に輝いた(撮影/姉崎正)

4日間を通じたデータを見ても3イーグル、20バーディ、7ボギー、2ダブルボギーの蟬川、1イーグル、16バーディ、4ボギーの中島、19バーディ、5ボギーの金谷と、ゲームの作り方もまったく違います。

これはボクの勝手なイメージですが、車に例えると蟬川は凸凹道でも砂嵐を立ててアグレッシブに突き進むオフロード車、中島は高速道路を颯爽(さっそう)と走る洗練されたスポーツカー、それに対して金谷の集中力とガッツで耐え忍びながらチャンスを待つ感じは、壊れることなく愚直に走り続ける国産車といったイメージです。

それはスタッツにも表れていて、(JGTO)アワードではイーグル率で蟬川、バーディ率と平均ストロークで中島、パーキープ率で金谷の受賞となりました。

NSKの名勝負は、日本ツアーではこれが見納めとなるかもしれません。しかし、彼らに続く若手も含め、その舞台は今後、世界へとつながっていくはずです。

ここ10年、日本のゴルフ界を代表して松山くんが世界で戦ってきました。松山くんもまた、若手のロールモデルであり、実際に世界を視野に入れた若手も増えています。

日本ツアーが寂しくなるという意見もあるでしょうが、PGAツアーをはじめ世界で活躍する日本人選手を想像するだけで、ワクワクします。そして、それを支えるのも日本ツアーの役目なのです。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年12月26日号「うの目 たかの目 さとうの目」より

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