1989年6月10日、コース造成構想をたててから約10年の歳月をかけて完成にこぎつけた富里GCが、成田空港C滑走路構想により、今月31日をもって閉場する。

コンセプトは「力と同様に技も」

富里GCの設計は世界中で数多くのゴルフコースを手掛け、姉妹コースのカレドニアンGCと同じJ・マイケル・ポートレット。コースの設計方針はスコットランドのロイヤル・トルーンGCの標語でもある「力と同様に技も」の再現。何度も来日を繰り返して建設が進められ、「このコースは、スコットランドの思想とアメリカ流のデザイン、そして日本の高度の建設技術が一体となった、巧妙で芸術的な傑作となりました」と自ら語っている。

画像: 武家屋敷のような純和風建築のクラブハウスは開場当初から話題を集めた。もちろんこのクラブハウスも取り壊しが決定している

武家屋敷のような純和風建築のクラブハウスは開場当初から話題を集めた。もちろんこのクラブハウスも取り壊しが決定している

過去にはトーナメントの舞台にもなるなど、美しくも難度が高いことで知られているが、バックティーでも6857ヤードと、近年のコースに比べると距離は決して長くはない。しかし自然の地形を利用しながらハザードを戦略的に配置し、さらに手入れの行き届いた極上グリーンには複雑なアンジュレーションがあり、方針と違わず「力と同様に技も」要求され、一度ラウンドすると何度でも挑戦したくなるものだった。

その設計がいちばん色濃く反映されているのが7番パー3。サイプレスポイントの16番にならって造られたこのホールは、ティーイングエリアから多少の打ち下ろしになる絶妙な高低差があるためグリーンの形やピンの位置がはっきりと見渡せる。しかし、手前の岩と池がプレッシャーを与え、ひとたび風が吹けば、たちまちプレーヤーに牙をむく。

画像: 岩肌をあらわに立ちはだかる池越えの7番。傾斜のきついポットバンカーも利いており、うねりのあるグリーンに、多くのゴルファーは手こずった

岩肌をあらわに立ちはだかる池越えの7番。傾斜のきついポットバンカーも利いており、うねりのあるグリーンに、多くのゴルファーは手こずった

ゴルフ本来の楽しさを再認識させてくれる名コースと国内外から評価を得ていたが、2015年9月に成田空港C滑走路構想が始まると、16年に拡張する成田空港用地にゴルフ場が含まれていることが判明。その後、紆余曲折を経て、今年いっぱいの営業をもって閉鎖することが決定された。

年明けからはクラブハウスをはじめ、池やバンカーも順次取り壊され、樹々をすべて抜き、更地にしてから国に引き渡される予定。最低でも1年はかかる見込みで、その費用もコースが負担するというが、コース運営会社やメンバーたちは将来の日本の利益のために断腸の思いで用地を差し出すという。

名残惜しいが、今まで日本のゴルファーに本物のゴルフを体感させてくれた富里GCには、ただただ感謝の言葉しか出てこない。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年12月19日号「ありがとう! 富里ゴルフ倶楽部」より

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