ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回はフェデックスランク79位で5年ぶりのシード復活を果たしたマイケル・キムについて語ってもらった。
画像: 23年ZOZOチャンピオンシップ3日目の10番ティーイングエリアのマイケル・キム(photo/Hiroyuki Okazawa)

23年ZOZOチャンピオンシップ3日目の10番ティーイングエリアのマイケル・キム(photo/Hiroyuki Okazawa)

子ども時代の感覚で打とう!

優勝は18年のジョンディアクラシックしかありませんが、そろそろまた優勝するんじゃないか? そんな雰囲気を醸し出しているのがこのマイケル・キムです。

さて、解説者の立場からすると、彼は非常にありがたい存在。というのもPGAツアーの選手のなかでは、SNSでの発信頻度が今一番高い選手。しかも、頭脳明晰なスマートさで、選手しか知り得ない興味深い情報も多く、ボクの解説にもとても役立っています。

たとえばメキシコで開催されたワールドワイドテクノロジー選手権では、会場のタイガー・ウッズ設計コースについて選手目線で語ります。またスウィング理論にも精通していて、ベン・ホーガンのスウィングについても持論を展開。いわく、「巷ではベストスウィングと言われているが、現代の選手でこのトップのポジションを目指す選手はいないだろう。昔はスピンが入るボールとクラブだったのでダウンブローに低く打ち出す人が多かった。今は低スピン高弾道でアッパーに打つ人が多いから」など。ちなみにキムはアマチュア向けに、ヒップターンの重要性も説いてくれています。

さらにZOZOチャンピオンシップで来日した際には、日本人の“おもてなし”に触れ、写真付きでプレーヤーズダイニングの様子を「歴代でNo.1」と絶賛しました。また3日目に松山(英樹)くんと同組が決まった際には、「明日はヒデキにおいしい寿司屋を紹介してもらおう」とユーモアセンスたっぷり。

キムはカリフォルニア大バークレー校では4勝を挙げ、パーマーカップ、ウォーカーカップでも活躍しています。全米オープンのローアマにも輝きました。アマチュア最高の栄誉でもあるハスキンズ賞、ニクラス賞も、同校では初めて受賞。チームが1シーズンで14試合中12勝というNCAA記録を作った際にも大きく貢献しています。それらの実績をもって大学2年の13年にプロ転向、ルーキーイヤーの15-16年シーズンで初シードを獲得、そして18年には初優勝を飾りました。

しかし18年には、すでにスランプに襲われていました。なかなか本来のゴルフができないなかでの優勝に驚いたのを覚えています。18年は10/27(予選通過試合/出場試合、以下同)、19年は4/26、20年は1/15、しかも19年の3試合、20年の1試合は予選落ちのない試合で、19年のセーフウェイから21年のソニーオープンまで、実に2年4カ月予選通過のできない日々が続いたのです。

時に明晰な頭脳は考え過ぎ、悩み過ぎを生むのでしょう。その間、コーチもとっかえひっかえ。最後はショーン・フォーリーにたどり着きます。そこで言われたのが、「子どもの頃の感覚でいかに打つか」。21年はシード落ちでしたが、30試合で9試合の予選通過。22年はコーンフェリーツアーから昇格を果たし、そして今年は5年ぶりのシード復活。地獄を見た男が復活劇の狼煙を上げています。来季は久しぶりの優勝が見られそうです。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa
※週刊ゴルフダイジェスト2024年1月2日号「うの目 たかの目 さとうの目」より

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