初優勝、復活優勝、連続制覇。今季、国内外の女子ツアーで活躍した4人のショットメーカーのスウィングをスウィング解説に定評のある中井学プロが解説する。
画像: 原英莉花は2度目の日本女子オープン制覇、小祝さくらはミネベアミツミ レディスで復活優勝、ローズ・ジャンはプロデビュー戦で初優勝、櫻井心那は資生堂レディスで初優勝を含む4勝を挙げた

原英莉花は2度目の日本女子オープン制覇、小祝さくらはミネベアミツミ レディスで復活優勝、ローズ・ジャンはプロデビュー戦で初優勝、櫻井心那は資生堂レディスで初優勝を含む4勝を挙げた

原英莉花は、オープンに構えてつかまるスウィング。肝は右足の踏ん張り 

画像: トップで上下の捻転差が大きく、そこから体のターンで球をとらえていくドロー的なスウィングをベースに、少し球を逃がしてフェードを打つ

トップで上下の捻転差が大きく、そこから体のターンで球をとらえていくドロー的なスウィングをベースに、少し球を逃がしてフェードを打つ

腰の手術から復活して日本女子オープンというメジャーでの優勝、素晴らしかったですね。原英莉花選手のスウィングには、師匠であるジャンボ尾崎さんと似たものを感じます。少し左サイドをオープンにした構えからドローの動きでフェードを打つのは、まるでジャンボさんのようです。 

トップで上下の捻転差が大きく、そこから体のターンで球をとらえていくドロー的なスウィングをベースに、少し球を逃がしてフェードを打つ。飛距離と精度を両立させ、引っかけを嫌う典型的な動きです。 

フェードで飛ばしたいアマチュアにとっても、彼女のように、まずはドローを身につけてから、そこをベースにフェード要素を加える方法はおすすめです。 

画像: 「クラブを走らせすぎずに遅らせてレイトヒットしてフェード要因を加えています」(中井)

「クラブを走らせすぎずに遅らせてレイトヒットしてフェード要因を加えています」(中井)

腰の手術以前と比べると、切り返しからダウンスウィングにかけての左へのウェイトシフトが少し穏やかになったように見えます。スライド量を減らすことで腰への負担を抑えていますが、無理をしなくても十分飛んでいますし、本人もそれがわかって自信を得たはずです。 

原選手のスウィングは、ダウンスウィングで右足つま先をしっかり踏んで、そこで踏ん張って体を回していくのが特徴。そしてクラブを走らせすぎずに遅らせてレイトヒットしてフェード要因を加えています。 

この右サイドの踏ん張りのせいか、インパクトで右肩の位置が高く、少し詰まりを感じます。それでも引っかけないように強引に体を回していく動きは腰への負担が大きそうですので、もしかすると腰痛の原因はこの辺にあるのかもしれません。

小祝さくらは、絶妙な力感で静かに切り返し大きく腕を走らせる 

画像: フェードヒッターだが、「上半身の動きや、上下の捻転差が大きく、インサイドからボールにアタックするところなどで、ドローヒッター的な特徴が多く見られます」(中井)

フェードヒッターだが、「上半身の動きや、上下の捻転差が大きく、インサイドからボールにアタックするところなどで、ドローヒッター的な特徴が多く見られます」(中井)

小祝さくら選手は、飛距離も出るしアイアンショットの精度も高く、いつも安定して上位に顔を出しているショットメーカーという印象です。 

いまはフェードボールを武器にしていますが、小祝選手のスウィング自体はとてもニュートラルで、ドローヒッターかフェードヒッターか非常にわかりにくい。ただ上半身の動きや、上下の捻転差が大きく、インサイドからボールにアタックするところなどで、ドローヒッター的な特徴が多く見られますので、ナチュラルな部分はドロー系なのだと思います。 

画像: 「フォロー後半から体をぐるっと押し込んでフェード的な回り切ったフィニッシュを作っています」(中井)

「フォロー後半から体をぐるっと押し込んでフェード的な回り切ったフィニッシュを作っています」(中井)

それをフェードに変えているのは、やや左に片寄ったアドレスと、左に突っ込むように回り切ったフィニッシュでしょう。アドレスでは少し左に多く体重がかかり、ボール位置も左寄り。スウィング自体はドローっぽいのですが、フォロー後半から体をぐるっと押し込んでフェード的な回り切ったフィニッシュを作っています。 

小祝選手自身は、アドレスを変え、フィニッシュの収まる位置だけを意識することで、あまりスウィングを変える意識を持たずに自然とフェードが打てているのだと思います。 

アマチュアがお手本にしてほしいのはグリッププレッシャーです。小祝選手はアドレスからフィニッシュまでグリップの握りの強さや形が一切変わっていないように見えます。とくに、切り返しでこれほど右手を静かに使える選手は珍しい。だからこそ、プレッシャーのかかる場面でも強いのでしょう。このグリップの力感は、ぜひ真似してください。

ローズ・ジャンは、構えがスクエアで力感がないからアジャストの必要なし 

画像: すべての人に真似してほしいというジャンのアドレス

すべての人に真似してほしいというジャンのアドレス

米女子ツアーのデビュー戦で優勝したという二十歳の新星ローズ・ジャン。彼女のスウィングはシンプルそのもの。ここまでニュートラルでクセのないスウィングをする選手は珍しく、アマチュアにとっても最高のお手本と言っていいでしょう。 

なかでも最も素晴らしく、すべての人に真似してほしいのがアドレス。まったく力みがなく、見事なまでの脱力感。静止画でこれほど脱力を視認できるアドレスはそうそうありません。 

ムダな力が抜けるのは、左右の片寄りがなくバランスが完璧に左右50対50で立てているから。このアドレスを目指すだけで、絶対に上達します。 

画像: インパクトで左肩からヘッドまでがキレイに一直線に揃うのもジャンの特徴だ

インパクトで左肩からヘッドまでがキレイに一直線に揃うのもジャンの特徴だ

ジャンはこの美しいアドレスから、大きなアークでスウィングしていきます。上体の力みがないので、下半身のターンに上半身がついてきているだけの非常にシンプルな動き。動きを妨げるものがないので、余計なアジャストが必要ないのです。おそらく左肩の後ろあたりに支点をイメージし、左腕を長く真っすぐに使って振っているのでしょう。インパクトで左肩からヘッドまでがキレイに一直線に揃います。 

あえて難点を挙げるなら、ニュートラルがゆえの不安定さ。ニュートラルでど真ん中なだけに、ズレたときに左右どちらにも行く可能性がある。ジョン・ラームのような「ワンサイド」とは対極にあります。ここをどう管理していくかが今後のカギになるでしょう。 

とはいえ、とても完成度が高くキレイなスウィングであることは確か。これから先の活躍が楽しみです。

櫻井心那は、右を粘って左でジャンプ。地面の力で飛ばす 

画像: 「右サイドが粘りながらエネルギーをため、早い段階で左足を踏み込んで、跳ぶようにカウンターを当てて上方向にエネルギーを解放。それを回転に転換しています」(中井)

「右サイドが粘りながらエネルギーをため、早い段階で左足を踏み込んで、跳ぶようにカウンターを当てて上方向にエネルギーを解放。それを回転に転換しています」(中井)

櫻井心那選手は地面反力をとてもうまく使っていて、現代的で効率の良い、いかにも飛ばし屋らしいスウィングです。 

バックスウィングはコンパクトで、腕はほとんど使わずに体だけを回しているのが見て取れます。そこから右サイドが粘りながらエネルギーをため、早い段階で左足を踏み込んで、跳ぶようにカウンターを当てて上方向にエネルギーを解放。それを回転に転換しています。結んだ髪の毛がフォローで上に跳ねているのが、その証拠です。 

インパクト前にはすでに左足が浮いていて、フォローではクラブと頭が引っ張り合うような形。ジュニア時代に重いクラブでゴルフを覚えたからこそ身につくスウィングですが、前傾を保って右肩が低いフォローは、アマチュアにも真似してほしいポイントですね。

PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa、Shinji Osawa、Yasuhiro JJ Tanabe

※週刊ゴルフダイジェスト2023年10月31日号「2023年チャンピオンスウィング図鑑」より一部抜粋

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