ビジョン、視覚や視力についてもゴルフメンタルには影響しますが、この分野に取り組もうとしている選手は、世界を見ても少ないです。癖を知るだけでも、大きな気づきがあるので、今回はゴルフスポーツビジョンについてお伝えします。
ゴルフは目からの情報が8割!
私はプロ野球審判をしていた時に、いち早くスポーツビジョンのトレーニングを取り入れ、20年以上専門医の下で取り組んで来ました。日本で第一人者と言われるスポーツビジョン専門のオプティメトリストにメニューを組んでもらい、“目の筋トレ”をしてきました。
一般的にはスポーツビジョンというと、速いものが見えるためのトレーニングだと思われていますが、実はそれだけではなく、ゴルフにも生かされるべき内容が満載です。
ゴルファーは目からの情報8割で、色々な状況判断をしています。ティーインググラウンドからの景色、ハザードまでの見え方、目標への距離感、視覚的なプレッシャー、グリーンのライン読みなど、ラウンド中に決断するゴルフの80%は目からの情報に頼っています。
目を“唯一の剥き出しの臓器”と考えると、サングラスをして保護する人もいますが、ほとんどのゴルファーは無防備です。また目は“アスリートが鍛えない唯一の筋肉”でもあります。飛距離アップのための筋トレ、安定感を増すための体幹トレなどには労力を注ぎますが、80%も視覚からの情報に頼っている目に対しては、保護もケアもトレーニングもされていないのが現状です。
ラウンド中にどれくらい錯視錯覚が起こっているかご存知でしょうか? ゴルフ場には練習場にあるマットや打席の直線、フラットなライは一切存在しません。曲線、傾斜が入り乱れて、特にグリーンに関しては、上りのパットなのか下りのパットなのかがわからなくなるくらい錯視錯覚が起こります。距離感ですら、実際より遠くに見えたり、逆に近くに見えたりもします。ゴルフコースの設計者はティーインググラウンドにも2%〜3%の傾斜をつけています。これは水の流れが必要な傾斜を確保するためです。
よくあるのが、4人全員のティーショットが右に行ってしまった場合などには、後方からティーマークの方向だけを確認して、その向きに騙された! と片付けていますが、実際にはこの2%〜3%の傾きが影響している場合が多いのです。
グリーン上も最低でも2%の傾斜が水捌けのために必要なので、傾斜の入り乱れでゼロラインができたり、錯覚でフラットに見えたりします。
実際にショートパットを外した時に口から出てくるのは、「引っ掛けた」「フェースが開いた」など技術的なことが原因だと思っている方もいますが、実は傾斜計を当てるとしっかり傾斜が効いているのがほとんどです。真っ直ぐに見えて、曲がったりするラインは、目には見えない1%くらいの傾斜があったりします。この1%程度の傾斜は、視覚的にはフラットに見えてしまうのです。
ゴルフ用の目の筋トレとは?
では、普段、どのようにすればいいのでしょうか? 距離感やグリーン上のライン読みなど、早い人で20代後半、遅い人でも30代後半には動体視力は衰え、微妙に影響が出てきます。全く自覚症状がないために、誰も気付いていないのは悲しい事実です。プロ野球選手の例を挙げると、引退の要因は体力の衰えと思っている選手が多いのですが、実はスピードに付いていけなくなるのは、体力的な問題ではなく、動体視力の衰えなのです。
動体視力はトレーニングで向上も維持も可能になります。これらを補うためには目の筋トレが必要になってきます。1日5分〜10分程度のストレッチになります。
片目、両目など数種類の目のストレッチをやるだけで、1ヶ月後には集中力、判断力、決断力アップに繋がります。今はPCやiPadなどでも、色々な動体視力向上用のアプリが出ていますし、自分の腕を伸ばして親指を上下左右に動かしながら片目、両目で追う眼球運動トレーニングも気軽で効果的です。
ゴルフにはビジョントレーニングが情報処理能力アップにも役立ちます。この情報処理能力とは、コースを記憶する能力、分析にも役立ちます。記憶というのは、映像の積み重ねで自然に覚えることができます。
あなたは一度ラウンドしたコースを鮮明に覚えていますか? ラウンド後に、6番の右のガードバンカーは・・・12番の左の池は・・・という会話に付いていけますか? 情報処理能力が優れている選手は、いったんラウンドしたゴルフ場の各ホールはどういう景色なのか、どこにハザードがあって、どう攻略したらいいのかなど、コースを映像で鮮明に覚える能力が長けています。