23年シーズンJGTO下部ツアー「ABEMAツアー」で1125万3106円を獲得し、歴代最高賞金で賞金王に輝いた生源寺龍憲。1月16日からタイのスプリングフィールド・ロイヤルCCとレイクビュー・リゾート&GCの2会場で実施されるアジアンツアーのQスクールに向けたトレーニングの合間にインタビューに応えてくれた。
画像: 生源寺龍憲(しょうげんじ・たつのり)。1998年5月15日生まれ。山口県出身。同志社大学卒。高校は岡山県の作陽高校で渋野日向子と同級生。名字は天台宗の開祖・最澄生誕の地といわれる滋賀県の“生源寺”が由来

生源寺龍憲(しょうげんじ・たつのり)。1998年5月15日生まれ。山口県出身。同志社大学卒。高校は岡山県の作陽高校で渋野日向子と同級生。名字は天台宗の開祖・最澄生誕の地といわれる滋賀県の“生源寺”が由来

強気の発言で自身を鼓舞

“生源寺”という珍しい名前と、身長が162センチの小柄な体で23年6月「ジャパンクリエイトチャレンジin 福岡雷山」、同年7月「南秋田CCみちのくチャレンジ」とABEMAツアーで2連勝を飾ったことで編集部内でも話題になり、初コンタクトをとったのが8月のレギュラーツアー「横浜ミナト Championship ~Fujiki Centennial~」。線状降水帯が発生したコンディションが悪いなか、礼儀正しく、難しい質問に対しても真摯に応えてくれた。あれから約5カ月。23年シーズンの振り返りと、24年シーズンに向けた思いを聞いた。

「ABEMAツアーの初優勝は『ジャパンクリエイトチャレンジ in 福岡雷山』。プレーオフでの優勝だったんですが、僕が先にバーディパットを決めて、2オンした服部(雅也)君のバーディパットが残っていて。『入れてくるだろうし、次のホールかな』って思ったら、外れての優勝。それまで、勝てそうで勝てなかったんで、ほっとしたし、本当に嬉しかったです。開幕から『今年は勝ってもおかしくないな』と自分では思ってたし、『何で勝てないんだろ』という感情だったので、『やっと勝てたな』って感じでした」と本人が話すように、5月の「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP CHALLENGE inFUKUI」では初日に64を出し、2位に2打差をつけた首位スタートもあった(とはいえ、2日目に昨季ワーストの78で予選落ち)し、同月「太平洋クラブチャレンジトーナメント」では優勝した富村真治と2打差の2位タイと、このときすでにABEMAツアーで上位の実力を備えていたといえる。

画像: 23年シーズンの成績はABEMAツアーは2連勝を含む7試合でトップ10入り。レギュラーツアーは13試合中10試合で予選通過だった

23年シーズンの成績はABEMAツアーは2連勝を含む7試合でトップ10入り。レギュラーツアーは13試合中10試合で予選通過だった

初優勝した次の試合でも優勝。その要因を聞くと、「感覚的には『ふつうにやったら勝てるだろう』と(笑)。そのときの調子が良いというよりも、1勝して、ここまで自分のやってきたことに間違いはなかったという自信もあって。他のプレーヤーに比べても自分の実力は高いし、抜けているという感覚も芽生えていたので、やっぱり勝てるなって思っていました」。“生源寺は強気の発言で自身を鼓舞するところがある”とJGTOの公式HPにも書いてあるのも頷ける。
その流れで史上最高額でABEMAツアーの賞金王に輝いた。「賞金王はもちろん獲りたいと思いましたけど、2勝目を挙げたところで、“賞金王”より“3勝目”が欲しかったんです。だから、3勝目を目指してゴルフをしていたら賞金王だったって感じ。2勝目からはずっと優勝争いしていて、パッティングでリズム作れなかったり、最終日に伸ばせなかったりで、結果としては3勝目に到達できなかったんですけど……」。2連勝後はレギュラーツアーにも出場するようになり、ABEMAツアーには5試合中3試合の出場にとどまったが、その3試合で3打差の3位タイ、2打差の4位タイ、1打差の2位タイとしっかり優勝争いをしている。また「23年シーズンのABEMAツアーの上位3~5人はレギュラーツアーでも十分トップを争える力があると思うし、自分もそこに入っていけると思っている」と生源寺が言うように、生源寺よりも先にABEMAツアー2連勝を達成した鈴木晃祐や同1勝の杉原大河、金子駆大などはレギュラーツアーでシード権を獲得している。

パーオン率とトータルドライビングが武器

3勝目ができなかったとはいえ、ABEMAツアー賞金王の資格で24年シーズンはレギュラーツアーで1年間戦える、いわゆる“裏シード”は確保できた。「人生設計ではないんですが、計画としては1年早まった感じですね。23年シーズンはまずABEMAツアーで20位以内に入って、24年シーズン前半戦のレギュラーツアーに参戦して、25年からレギュラーツアーで1年間戦うって感じだったので」。計画としては早まったものの、レギュラーツアーで優勝争いをしていくためには、長所を伸ばしていくことが近道と考えているようで、「スタッツでいえば自分はパーオン率とトータルドライビング(平均飛距離とフェアウェイキープ率の順位を足した数値で少ないほうが良い)が武器なんです。24年シーズンのレギュラーツアーでは平均飛距離が295Y、フェアウェイキープ率が60%以上を目標にトレーニングしていきたいですね。もちろん、もっと飛ばしたいんですが、ただ飛ばすだけなら、飛ばしのテクニックを入れればなんとかなるんですが、コントロールした中で飛ばしたい。考え方としては正確性が先で、次に飛距離です」。ちなみに、生源寺が目標としている数値を23年シーズンに当てはめると、平均飛距離25位の安本大祐が294.91Y、フェアウェイキープ率26位の大槻智春が59.969%なのでトータルドライビングが51になる。この数値は23年シーズン賞金王でトータルドライビングが52の中島啓太を抜いて2位になる計算だ。

画像: 自身を「ショットメーカー」といい、アイアンの精度には自信を持っている

自身を「ショットメーカー」といい、アイアンの精度には自信を持っている

ここまでは自身の感覚で話してもらったが、23年シーズンのスタッツで22年シーズンより明らかに向上したパッティングについて話を振ってみた。「まず、シーズン前にしっかりパターフィッティングをして、どのモデルが自分にとって一番再現性が高く、タッチコントロールができているかがわかったのは大きいと思います。その結果、ショートパットが決まるようになりましたね。ちなみに、ラインの読みも研究はしているんですけど、上手くいったりいかなかったり(笑)。あとはセカンドショットやサードショットでパーオンしたときのショットの精度が上がって、カップまでの距離が短くなったのではないかと。パッティングのスタッツが63位から11位に上がったというのは、実はパッティング技術の向上というだけではなく、ティーショットで飛距離が出るようになり、その結果、短い番手でグリーンが狙えるという流れがこのスタッツになったんだと思います。もともとドライバーが曲がる方ではなかったんですが、ウィークポイントが飛距離で飛距離が出せないからチャンスが少ないと分析したんです。だからそこに対して、スウィング改造ではなく、フィジカル、とくにお尻のパワーをアップするトレーニングが上手くいったんだと思います」。

25歳で世界に出るのは早くない

24年に向けてを聞くと、「スケジュール的には1月のアジアンツアーのQスクールファイナルのあとは3週間のトレーニング合宿を福岡で実施します。メンバーとしては未病リハビリセンターハレルの今林伸司さん(生源寺の後輩・久常涼と同じトレーナー)のもとで、ハレルに来ているプロやジュニアです。アジアンツアーのQスクールが終わっていないので断定はできないんですが、どっちも出れたら、国内ツアーとアジアンツアーの両方のシード権が獲りたいですね。そのほうが自分のチャンスの幅が増えるので。いま25歳なんですが、この年齢で世界に出るのは早いとは全然思っていなくて、どんどん上のステージに挑戦していきたいんです。フィールドのレベルの違いとか、環境の違いとかはあると思うのですが、よりアグレッシブな選手が多いところに身を置きたいんです。アジアンツアーはDPワールドツアーとの共催も多いので、そのステップアップも狙いたいですね」。
世界を見据えている生源寺に少し意地悪な質問をしてみた。24年シーズンから香妻陣一朗の参戦が決まったLIVゴルフについてだ。将来的には考えているのかと聞くと、「LIVみたいな高額ツアーっていうのはやっぱり魅力的だと思いますが、まずは4大メジャーに出場したいんですよね。自分が十分にやり切ったと思った後にLIVもありだと思うんですけど、優先順位的にはPGAツアーに出たいですし、やっぱりメジャーです」とあくまで初志貫徹のメジャー志向。「とはいえ、どのフィールドが自分に合うかはわからないですが、DPワールドツアーやアジアンツアーはいろいろな国で試合をするので日程的にもタフだけど、それがまた楽しそうだし、いろいろな経験ができると思います。だから、アジアンで出れる試合があれば、国内よりはそっちを優先するかもです。アジアンで経験を積むことで、国内ツアーが簡単に感じられるかもしれないし、国内ツアーに専念するよりは成長スピードが速いのかなとも思うので」。

画像: インタビューはご飯を食べながら。スタバではソイラテやオーツミルクラテを頼むという

インタビューはご飯を食べながら。スタバではソイラテやオーツミルクラテを頼むという

話が出た同じトレーナーに見てもらっている後輩の久常涼について聞くと「久常が小学6年生のときに僕が作陽高校に入学したんですが、練習場が一緒だったのでずっと一緒に練習してきました。試合も一緒に行ったりします。彼のABEMAツアーからレギュラーツアー、それからDPワールドツアーで今年はPGAツアー。どのカテゴリーも1年でステップアップしていく展開が早いですよね! 年齢的にも余裕があるし、そういうスピード感は僕自身も大事にしたい。行きたいときに行けないというのがもったいないし」と久常の活躍が自身のモチベーションに繋がっているようだ。

その久常に負けじと、「メジャーへの道はミズノオープンもあれば、全米オープンの予選会もある。チャンスはあると思っています」と力強く語る生源寺。24年は辰年、龍憲(タツノリ)が上り竜のごとく駆け上がっていく姿がいまから待ち遠しい。

※2024年1月23日号(1月9日発売)では『ナイスオンが増える! キャリー距離の法則』と題し、生源寺プロのレッスン記事を掲載。そちらも是非!

PHOTO/Hiroaki Akihara
THANKS/ザ・クラシックゴルフ倶楽部

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