中島啓太はジュニアのロールモデルに!
優勝3回もさることながら、出場23試合中トップ10が17試合、最終日最終組が9試合。中島啓太プロの23年シーズンの成績です。
賞金王、最優秀選手賞(MVP)など6冠を獲得、しかしやり切って疲れ果てた感じのしない、「まだまだ勝てたんじゃないか」とすら思わせる余裕を残した一年でした。
余裕と同時に、全英オープンやPGAのファイナルQTでは結果を残せず、それがまた新たな大きい課題ともなっているようです。あくまでも23年シーズンは、中島くんの今後のゴルフ人生の通過点であり、24年へのさらなる飛躍への期待ともなっています。
実際、24年は日本の賞金ランク1位の資格で出場権を獲得した欧州ツアー(DPワールドツアー)が主戦場になりそうです。ここを足がかりに、いわゆる”久常ルート”でメジャー、PGAの出場権に挑んでいくことになるのでしょう。
さて、取材者として驚くのが、中島くんが一度も取材を断った記憶がないことです。アスリートたる者、自分の成績を出すことが最優先で、少しでも邪魔になる取材であれば断ってもいいし、それが普通のことだとボクは思います。ところが彼の場合、たとえば最終戦のJT日本シリーズでは、ラウンド前、ラウンド後のインタビューはもちろん、ラウンド中のインタビューにも応じています。
23年の前半戦はABEMAツアーですが、スタジオにゲスト解説に来てもらいました。どうしても断れずに仕方なく応じてしまうような場合、その思いはどうしても表情に出るもの。
ところが中島くんの場合、画面やメディアの向こう側にいるファンを想定しているのでしょうか、表情はもとより、気の利いた笑いも交えてくれますし、その磨かれた人間性もまたプロフェッショナルだと感じます。何より彼がラウンド中にイライラしたり、感情を爆発させる姿をボクは見たことがありません。
23年シーズンのJGTOアワード後の記者会見で、司会を担当したボクは、その点について質問しました。
すると「ボクも人間ですからイライラもしますが、それは損をするので自分でコントロールするようにしています」。
中島くんのキャディを務めることの多い島中大輔くんは、中島くんが普段でも焦ったりバタバタするのを、一度も見たことがないそうです。
PGAツアーで通算29勝、ゴルフ殿堂入りも果たしたジーン・リトラーは、ツアー一の紳士と評された選手です。そのリトラーですら、試合会場で抱えたイライラを、ホテルや家に帰ると植木鉢を投げて発散していたとか(このエピソードはボクのあいまいな記憶にあるものですが)。
いい悪いは別に、それがプロゴルファーであり勝負師の姿ですが、しかし中島くんにはそれが微塵も感じられません。
どこをとっても美しいスウィングはもちろん、その話し方や歩き方が醸し出す雰囲気は、そんな彼の人間性から生まれるものなのかもしれません。ゴルフだけでなく、その人間性、プロとしての考え方も含め、人気が出るのは当然だし、近い将来、子どもたちが目指すロールモデルになる逸材だと確信しています。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年1月30日号「さとうの目」より