より低くスピンの効いた弾道でピンを狙えるSM10
PGAツアーの2024年開幕戦「ザ・セントリー」で、ジョーダン・スピースやマックス・ホーマなどが手にした新しいウェッジ『ボーケイデザインSM10(以下・SM10)』の詳細がいよいよ発表になりました。
まず、『ボーケイデザイン』について少しおさらいします。2004年に米男子ツアー年間使用率で初めて1位に輝くと、それ以降その座をキープし続け、現在では50%を超える使用率を獲得している、いうなれば“ウェッジ界の雄”です。マスタークラフトマンであるボブ・ボーケイ氏は、ウェッジについて「バウンス・イズ・フレンド」とバウンスの有用性を訴えており、『SM10』にも6種類にも及ぶバウンス形状(ボーケイは“グラインド”と呼びますが)が存在するほどです。
バウンスの選び方の一つの基準は、人それぞれの入射角。アドレスでのボールの位置やハンドファーストの度合いに加えて、アウトサイドイン軌道なら入射角は鋭角に、インサイドアウト軌道なら浅い入射角になりやすいといった、人それぞれの持つインパクト条件によって候補を絞ることができます。
入射角が鋭角なタイプはDやF、Kなどの強めバウンス形状が。浅い入射角のタイプはS、M、Tといった少なめのバウンス形状が候補になるでしょう。
バンカーや芝の状態も含めてライやピンまでの距離、もう少し考えるとグリーンエッジからピンまでの距離によって様々なバリエーションが要求されるグリーン周りの状況の中で、自分にとって最適なバウンス形状を選ぶことは、スコアメイクに大いに役立つのは間違いありません。
今回の『SM10』には新たなグラインドの追加はありませんが、前作『SM9』にはなかった54度にMグラインド(バウンス8度)を追加。これは、ツアープレーヤーからの要望はもちろん、ウェッジを複数本入れるプレーヤーが増えてきたこと、さらにアイアンのストロングロフト化に伴い、下のクラブが増え、その結果、54度というロフト角の需要が高まったためだといいます。
また、54~62度のウェッジについては、いままでは構えた顔がグラインドによって微妙に異なっていましたが、『SM10』から同じ“顔”になっています。その結果、いままでは、グラインドは好きだけど、構えたときのイメージがでない、と選べなかったクラブでもグラインドの好みだけで選べるようになりました。『SM6』から採用されている“プログレッシブCG”という重心設計も踏襲されており、立っているロフト角の重心は低く、寝ているロフト角の重心は高く設計することで、ロフトなりの打点に重心位置を合わせたことでスピン量が一定しコントロール性を高めています。さらに、『SM8』のときに高評価だった“フォワードCG”を採用。インパクト時のヘッド挙動が安定し、さらに少し低めの弾道イメージが出しやすくなったといいます。
番手別重心設計は以前から採用されている設計手法ですが、特に56・58・60度のロフトではトップラインを厚くし、重心位置を高めに設定することで打点は重心よりも下になりスピン量を増やし低い弾道を生む効果が実感できます。
46~52度までのロフト角には短めのホーゼルとコンパクトな顔、そして真っすぐなリーディングエッジを採用。アイアンの流れで打ちやすくなったのも『SM10』の特徴です。また、重心位置を0.5~0.75ミリほど、ヒール寄りからトウ寄りに移動しており、これはツアープレーヤーがこの番手ではドローバイアスを必要としていないことから、この設定が生まれました。
このセンターに寄せた重心位置は、ある程度フルショットに近い距離を打つことが多い46~52度のロフトでつかまり過ぎることを防ぎ、方向性を高めています。
さらに、フェース面にも工夫が施されており、“TX9グルーブ”という溝は、インパクトエリアに熱処理を施すことで耐久性が2倍になり、またロフト角によって溝の形状が異なり、46~54度では深くて狭く、56~62度では浅くて広くなっています。
最近のタイトリストの特にツアーモデルの新製品は、ある意味大きく変えすぎないことで新製品に移行しやすくなっていると感じます。それでいて進化を感じられる点は、ツアーからのフィードバックを元に製品化するという好循環の表れでしょう。
バンカーショットだけでなく、その短さゆえダウンブローになりやすいウェッジのフェース面は痛みやすいので消耗品と考えるべきでしょう。スコアメイクに直結するスコアリングクラブとしてアップデートしてみてはいかがでしょうか。