スウィング中の空気抵抗を軽減する「エアロダイナミックスシェイピング」。ソールのフェース寄りに配置された2つのウェイトによる低重心化によって、ボール初速の向上を狙った「パワーブリッジウェイティング」。そして、フェース全体を15ポイントに分割しAIを駆使してそれぞれに最適な設計を施し、反発エリアを拡大させた「パワーシェル・H・O・Tフェース」。この3つのテクノロジーを搭載した「エアロジェット LS ドライバー」をクラブ設計家の松尾好員氏と共に検証してみた。

寛容性と飛距離を切り分けたコブラの英断

コブラは2023年に創業50周年を迎えた。その歴史の中で多くの名プレイヤーが愛用し、記憶に残る数々の名シーンを作ってきた。なかでも強烈な印象として残るのがタイガー・ウッズとグレッグ・ノーマンだろう。

1996年に史上初の全米アマ3連覇を達成し、鳴り物入りでプロの世界へ飛び込んだタイガー・ウッズは、翌年の1997年、プロ転向後初めて出場したマスターズで初優勝を飾った。大会史上最少ストローク、最年少優勝という大記録だった。

   

プロ転向後、タイトリストと総合契約を結んだタイガーだったが、タイトリストにはタイガーが納得するクラブがまだなく、「Titleist」の文字の入ったキャッティバッグの中身はタイトリスト、ミズノ、クリーブランドなどが混在し、ドライバーはコブラの「キングコブラツアーメタル」だった。

タイガーがコブラを使用した理由のひとつにグレッグ・ノーマンの存在があった。コブラのドライバーはノーマンの放つ豪快なドライバーショットには必要不可欠な存在で、迫力のある弾道と飛距離で世界中のゴルフファンが魅了されてきた。

タイガーもその内の一人だった。

画像: 1997年のマスターズで初優勝を飾ったタイガー。

1997年のマスターズで初優勝を飾ったタイガー。

プロ転向からわずか10カ月、マスターズ初優勝から2カ月後の1997年6月、タイガーは世界ランク1位に登り詰め、絶対王者だったノーマンからその座を奪い取った。ノーマンからタイガーへ、主役交代のバトン的存在となったのが「キングコブラドライバー」だった。

画像: コブラ「キング LTDx LS」ドライバー。「キング」は当時から改良が重ねられ、現在も愛用するゴルファーは多い。

コブラ「キング LTDx LS」ドライバー。「キング」は当時から改良が重ねられ、現在も愛用するゴルファーは多い。

   

歴史の1ページに名を残す偉大なゴルファーが愛用していたコブラのドライバーだが、「2020年からさらに飛距離性能が良くなっている」とクラブ設計家の松尾好員氏は言う。

その要因として挙げられるのが、タイプやレベルの異なるそれぞれのゴルファーにフォーカスしたクラブ開発にある。

大きく分けると寛容性の高さ(芯を外しても打球が曲がらず、直進性が保たれる)を求めて大慣性モーメントヘッド設計に比重を置いた「やさしいモデル」と、低重心で重心深度が浅く、少ないスピン量で飛ばせる「飛距離に特化したモデル」の2つだ。

クラブの設計をする上で生じる矛盾を分析し、それぞれの特徴を最大限に強化したことでクラブの完成度が格段に上がった。

ここで「設計上の矛盾」について触れておくと、寛容性を求めたモデルはヘッドの慣性モーメントを大きくして打球の直進性を保つことができる反面、重心深度が深くなりフェース面の重心(スイートスポット)も高くなる。重心が高くなるとスピン量が増え、打球は吹き上がりやすくなるため飛距離ロスに繋がってしまう。

それに対して飛距離に特化したモデルはスピン量が抑えられ、吹き上がらずにキャリーを稼ぐことができる。重心深度が浅くなり、スイートスポットも低くなる。そうするとヘッドの慣性モーメントは小さくなり、寛容性が低くなる。

寛容性を求めることと、飛距離を求めることはクラブ設計の観点から水と油の関係と言えるわけだ。この矛盾を割り切り、それぞれのコンセプトに沿ったドライバー設計に力を注いだことで、コブラの言う「飛距離の壁を越える」テクノロジーが急速に確立してきたと言えるだろう。

寛容性を捨てた、尖った性能が魅力的

ここからは実測データをもとに凄腕シングルでもある松尾氏にクラブ分析と試打レポートしてもらいます。

クラブ&ヘッドデータ

クラブの長さが45.25インチ(以下、すべて実測値)、クラブ重量も301.3グラムと共に「標準」です。スウィングウェイトがD4.7と「非常に大きい」ので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメント(基準値:282万~286万g・㎠)が294万g・㎠と「大きい」ものになっています。ドライバーのヘッドスピードが47m/sくらいのゴルファーにとってタイミング良く振りやすくなっていると言えます。

画像: 【試打クラブスペック】●ロフト角/10.5度 ●ライ角/56度 ●価格(税込)10万4500円 ※すべてメーカー公表値

【試打クラブスペック】●ロフト角/10.5度 ●ライ角/56度 ●価格(税込)10万4500円 ※すべてメーカー公表値

「コブラのドライバー」と聞いて思い浮かべるのはヘッドの輪郭形状が三角形型のイメージですが、このLSモデルはエアロジェットの他の2モデル(エアロジェット、エアロジェットマックス)と比べて、縦長形状になっています。

試打クラブは10.5度で標準のSPEEDERのNXのSシャフト。実際に試打したところ、シャフトはかなり軟らかめの設定なので、ヘッドスピードが40m/sくらいのゴルファーでもリズムよくスウィングできそうです。        

画像: ソールのフェース側寄りにウェイトが配置されていることで、重心深度が浅く設定されている。

ソールのフェース側寄りにウェイトが配置されていることで、重心深度が浅く設定されている。

ヘッドはやや小ぶりでソールのフェース側寄りにウェイトが配置されていることで、重心深度が「浅く」設定されています。

同シリーズの2モデル(「エアロジェットMAX」と「エアロジェット」)よりもフェース面上の重心(スイートスポット)の高さを低く設定できているのが特徴です。

重心深度が「非常に浅い」ウェイト配分によってヘッドの慣性モーメントは、「小さく」なっており、寛容性を求めたヘッド設計ではないことが分かります。

ヘッドのネック軸回りの慣性モーメントも同じシリーズの2モデルと比べて「小さい」ので、ダウンスウィングでのヘッドの操作性が良く、弾道をコントロールしやすくなっています。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年2月6日号「ヘッドデータは嘘つかない!」より

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