PGAツアー屈指の難コース、トリーパインズGCでおこなわれたファーマーズインシュランスオープンでマシュー・パボンがフランス勢初のチャンピオンに輝いた。久常涼と同様昨年のDPワールドツアー(欧州ツアー)ランキング上位に入って今季PGAツアーデビューを果たしたばかりのルーキーが今夏にパリ五輪が控える絶妙のタイミングで栄冠を掴み取った。

最終18番でティショットを曲げたパボンは2打目も深いラフにつかまる大ピンチ。それまで表情を変えずプレーしてきたがパーをセーブしなければニコライ・ホイガード(デンマーク)とのプレーオフにもつれる展開に顔色が変わった。絶体絶命かと思われた状況にパボンは3打目をピンそば2.5メートルに寄せ起死回生のバーディを奪って勝ち切った。

画像: PGAツアー「ファーマーズインシュランスオープン」を制したマシュー・パボン(写真/Getty Images)

PGAツアー「ファーマーズインシュランスオープン」を制したマシュー・パボン(写真/Getty Images)

「本当に特別です。ヨーロッパからここに来て世界最高の選手たちと戦う機会を与えてくれたPGAツアーにはいくら感謝しても足りません」と新チャンピオンは声を上ずらせた。

「ずっと夢だった場所で夢が現実になりました。でもまだ信じられない」

祖父と父はサッカーの有名選手。ゴルフよりサッカー人気が高いフランスで10代の頃の彼は「肩身が狭い思い」をしてきた。ゴルフインストラクターの母の手ほどきでクラブを握ったが当時はサッカーに進まなかった彼を大人は「くだらない」と切り捨てた。

いわば“落ちこぼれ”。しかもイップスにもなってプロの夢は諦めかけた。世界アマチュアランキングは「800位台が最高。僕のことを気にかけてくれる人は誰もいなかった」。

それでも彼は茨の道を歩むことを決めた。イップスを克服しミニツアーに挑戦し、コツコツと段階を踏みDPワールドツアーに昇格。ヨーロッパ中を駆け回り昨シーズン参戦185試合目で遂にスペイン・オープンに優勝。ランキング上位に入りアメリカ行きを決めたのだ。

今年のファーマーズは日曜日がNFLのビッグイベントと重なるため水曜スタートの変則スケジュールとなり土曜日にトロフィーを掲げたパボンは「何か不思議な感じ。まだ土曜日なので明日もラウンドがあるような気がする」と笑い、大好きな場所でプレーする高揚感を「アメリカ人になったような気がする」と独特の表現で周囲を笑わせた。

PGAツアーはパボンをトーナメントに優勝した初のフランス人と認定。19年のプエルトリコ・オープンでフランス生まれのマーティン・トレーナーが勝っているが二重国籍だったためアメリカ人扱いとなっている。

1999年の全英オープンではジャン・バンデベルデがフランス勢初の快挙を達成する寸前だったが最終ホールでまさかのトリプルボギーを叩きV逸。カーヌスティの悲劇として語り継がれている。

この夏母国でオリンピックが開催される。優勝賞金162万ドル(約2億4千万円)」に加えてシグネチャーイベントやメジャー大会への出場権、さらに地元でのオリンピック出場のチャンスを手繰り寄せたパボン。落ちこぼれから一転、檜舞台の主役になる!?

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