「無人スタジオは“自習室感覚”で使ってください」(羽生)
コロナ禍以降、あちこちで「インドアゴルフ」の看板を見かけるようになった気がするが……。
「インドアのスクールだったら昔からありましたし、10年ほど前はゴルフバーがブームになったこともありましたよ」とゴルフ場コンサルタントの菊地英樹さん。「シミュレーションゴルフが一般化してきて、仲間でワイワイとゲームを楽しみながら飲食もできるとあって人気でした。ただ、お客さんが混み合う時間帯と極端に少ない時間帯があり、経営は難しかったようです。今は少なくなりましたね」。
確かに最近はあまり話題にならない。一方で増えているのが無人タイプのインドアゴルフスタジオ。背景には「街の練習場がどんどんなくなってきたことがあります。設備にお金がかかる練習場を、代替わりを機にマンションや倉庫にしたケースも聞きます。すると、そこに勤めていたレッスンプロの仕事がなくなってしまい、インドアスタジオを開業するケースが増えました」という。
また「コロナ禍で事業再構築補助金が受けられるとあって、飲食業やパチンコ店から転向したケースも。無人のフィットネスジムも増えましたが、出入場を管理できるオペレーションシステムが進化し、ソフトを導入すれば人件費をかけることなく営業できるようになったのです」。
人件費がかからない分、料金も安く済むならゴルファーも大喜びだが……。
「インストラクターなど教える人が不在のインドアスタジオは、すでにある程度の腕前の人の“自習用”と考えてください」というのは、インドアゴルフ練習場「無人くん」を展開するサンクチュアリゴルフ代表取締役のジュン羽生プロ。
すでにある程度の腕前はあるが、近場に練習場がないというような場合に、コスパのいい無人スタジオはぴったり。「例えば、5打席ある『無人くん』成田店だと、最安で1回96円で打ち放題になりますから」という。
しかし、スタッフ不在とあれば気になるのが安全面だが「無人スタジオは基本的にカメラが設置されているので、さほど心配要りません。24時間営業の無人のフィットネスジムでお客さんが寝入ってしまったという話は聞いたことがありますが、インドアゴルフスタジオでそういった話は聞きません」と羽生プロ。
「“機器が充実“”コスパがいい”など特徴が大事」(菊地)
スタジオには自由に使える貸しクラブもあるが、「盗まれるなんていうこともありません。そもそも、会員登録をしていて、不特定多数の人が出入りしているわけではありませんから」(羽生プロ)。
また最近では、無人のスタジオでも「トラックマン設置!」と、機器の充実を謳うスタジオも多いが、羽生プロは「トラックマンのデータを自分で分析して生かせるのは、HC5よりも上手なレベルではないでしょうか。トラックマンデータはレントゲン写真のようなものなので、素人が数値を見て“診断”なんてできません。ですから私はトラックマンの数字を写真に撮ったり、トラックマンのアプリをスマホに入れてデータを取るなどして、自分の先生に見せて分析してもらうという使い方をおすすめしています」。
では、林立するインドアゴルフの選び方は…?
「まず料金をしっかり見ること。月会費が数万円なんてところはザラにあって、もっと高いところももちろんあります。そういうところは内装に凝っていて、高級ソファが置いてあったりするんですが、上達が目的なら凝ったインテリアは要らないでしょう。プライバシーを守りたい有名人や、友達などを呼んで自慢したいという人向けです」。
もちろん“自慢したい派”が悪いわけではない。ただ、高いからいいだろうというわけでもない。自分の目的をしっかり把握して選ぼう。
通う目的を明確に | 自身の腕前と相談 | 価格は適正か吟味 |
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上達したいのか、友達と人目を 気にせず楽しみたいのか。 前者はオープン・複数打席のあ るスタジオ。 後者は個室タイプを選ぼう。 | 初心者ゴルファーが無人スタジ オでスキルアップを目指そうと するのは危険。 スクールと併用したり、レッス ン付きのコースがあるスタジオ を選んだりしよう。 | あまりに高い月会費や入会金の スタジオは接待用、自慢用など のケースが多い。 |
そして、実はすでに「インドアスタジオ林立時代から淘汰時代に入っているのも事実です」と羽生プロ。「補助金が下りたからといって、飲食などの異業種からインドアゴルフに転向した人たちも少なくありませんが、ゴルフの上達と同じでそんなに簡単に進むものではありません」。
菊地さんも「人件費がかからないから経営は簡単というわけにはいきません。ゴルフバーのときと同じように、無人インドアスタジオでも混み合う時間帯と人が入らない時間帯はあります。周囲が繁華街か住宅地かビジネス街かなどで条件は異なります。今後は『トラックマンやパットビューがある』とか『とにかく安い』『アクセスがすごくいい』など、どれだけ特徴を打ち出せるかが生き残りのキモとなります」。
羽生プロも「ノウハウがないと大変でしょう。うちにも他業種からインドアゴルフに転向したいと問い合わせをいただくことがあり、現在『無人くん』のフランチャイズ化を進めているところです」。
腕に自信があるなら、コースでラウンドしつつ、普段は気になる点、課題などを安上がりな無人スタジオの自主練でチェック。初心者ならレッスン付きのコースを選ぶなど、今なら選択肢は多い。能あるゴルファーは寒いうちにインドアで爪を“隠す”ならぬ“研ぐ”のもいい。もちろん、近年の夏場の酷暑の折にも最適なので、インドアゴルフ、ぜひ試してみて。
※「週刊ゴルフダイジェスト」2024年2月13日号「インドアゴルフ最前線リサーチ」より