一昨年の全米女子アマを制し、23年12月のプロテストで合格した馬場咲希プロを、中学1年から指導しているのがプロコーチの坂詰和久(さかづめかずひさ)、通称『わきゅう』だ。坂詰コーチと20年以上の付き合いがあるベテラン編集者Oが、謎キャラコーチの気になる話を聞き出す。今回は「オフシーズンの合宿」がテーマだ。
画像: 昨年、プロ入りした、わきゅうの契約選手たち(左から、馬場咲希、髙木優奈、稲垣那奈子)は、国内で調整する予定(撮影/有原裕晶)

昨年、プロ入りした、わきゅうの契約選手たち(左から、馬場咲希、髙木優奈、稲垣那奈子)は、国内で調整する予定(撮影/有原裕晶)

"チームわきゅう"のオフシーズンは、個別合宿

O編 シーズンオフになると、海外で合宿をするプロが多いけど、わきゅうも、契約しているプロと一緒に海外に行く予定はあるの?

坂詰 渡邉(彩香)さんのチームとタイに行きますけど、あとは国内で個別にやる予定です。

O編 個別? あぁ、選手ごとに合宿をするってことか。でも、わきゅうのところ、契約選手たくさんいるじゃない? ひとりずつやるのは大変じゃないの?

坂詰 まぁ、そうなんですけどねぇ。みんなを一カ所に集めて練習したり、合宿したりするのって、デメリットを感じちゃうんですよ。

O編 どういうこと?

坂詰 たとえば、ある選手が「この合宿ではアプローチをしっかりやりたい」と思っていたとするでしょ? でも、ベテランで実績もある選手が、「ラウンドのなかで練習してきた技術を試したい」って言い出したら、それに付き合わなくちゃいけなくなったりするわけですよ。

O編 あぁ、なるほど。そこで、「いいえ、私はアプローチやりたいので、どうぞラウンドしてきてください」とは言いにくいよね。

坂詰 でしょ。仮に、それを言えたとしても、ボクはひとりしかいないので、どちらか一方しか見ることができないわけです。それじゃあ、合宿の意味がないじゃないですか。

O編 まぁ、それだと、ひとりで練習しているのと一緒だもんね。

坂詰 集合時間や練習時間にしても、大人数で動けば、誰かが誰かに合わせなくちゃいけないでしょ。本当は疲れていて、もう少し休みたいと思っていても、言い出せないかもしれないわけです。

O編 もし、それでケガをしてしまったら、元も子もないか……。

坂詰 食事にしても、そうです。必ず、誰かが誰かに合わせることになる。スポーツ選手にとって、食事はとても大切なのに、食べたくないものを食べなくちゃいけなくなったり、いま自分に必要なものを取れなくなったりするわけです。

O編 選手によっては、管理栄養士に食事のアドバイスを受けて、食事を管理しているケースもあるもんね。

坂詰 そうそう。そういうものが、人に合わせることでおろそかになる危険もあるじゃないですか。

O編 そう考えると、確かにデメリットはあるか。

坂詰 もちろん、大人数でやることのメリットはたくさんあると思うんです。強い選手の練習方法やゴルフに対する姿勢は、近くで見るだけで参考になるし、競馬の併せ馬じゃないですけど、一緒にトレーニングをすることでその効果がアップしたりしますからね。でも、ボクはどうしても、デメリットのほうを強く感じちゃうんですよ。

人を気にしない力も必要

O編 ゴルフは個人競技だもんね。団体競技だったら、チーム内で人に合わせたり、人を気遣ったりすることがパフォーマンスにつながるかもしれないけれど、ゴル フの場合は、逆効果になるケースもあると。

坂詰 そうですね。もちろん、ゴルフだって、他のプレーヤーに対するマナーは大切ですよ。自分勝手なスロープレーや、わがままな言動は慎まなくてはいけないと思います。でも、そういうマナーができているのであれば、人のことなど気にせず、ひたすら自分のプレーに集中したほうがいいと思うんですよ。

O編 それができる選手は強いよね。ベテランに気を遣い過ぎていたり、強い選手のプレーを見て引け目を感じていたりしたら、パフォーマンス下がっちゃうもん。

坂詰 でしょ。言い方は悪いかもしれないけれど、パフォーマンスを上げるためには、他人のことなんて気にしている場合じゃない。ゴルフには、そういう部分が必要なんです。そういう姿勢でいるためにも、合宿はひとりひとりのほうがいいと思うんですよ。

O編 なるほどね。

坂詰 同時にたくさんの選手を教えていると、『チームわきゅう』なんて呼ばれることがあるんですけど、うちはチームじゃないんです。

試合の練習日に一緒に練習ラウンドをすることはあっても、基本的にはみんなが個人。渡邉さんは渡邉さんだけで、渡邉さんとボク。馬場(咲希)ちゃんは馬場ちゃんだけで、馬場ちゃんとボクというように、あくまで個人と個人。ゴルフはそのほうがいいと思うし、ボクはそういう感じでいたいと思うんです。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年2月6日号「ひょっこり わきゅう。第51回」より

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