選手それぞれにテーマを与える
O編 プロにとって、オフシーズンはじっくりと技術を見直せる時期だと思うんだけど、わきゅうの見ている選手たちは、どんな感じで調整する予定なの?
坂詰 馬場(咲希)ちゃんに関しては、いま運転免許取得中なので、それが終わってから始める予定です。
O編 合宿するの?
坂詰 いや、泊まり込みではやらないで、何回か練習場やコースでチェックをしながらテーマを与える感じでいこうかなと。
O編 馬場さんには、大きな問題がないってことだね。
坂詰 そうですね。大きく変えるようなことはないですかね。
O編 昨年、資生堂レディスで首位に立って注目された宮田成華プロは?
坂詰 昨年は、残念ながらシードが取れなかった(メルセデスランキング79 位)ので、今年は取らせたいですね。
O編 テーマは?
坂詰 彼女の一番の魅力は飛距離なんです。ですから、そこをしっかり仕上げようと思ってます。昨シーズンは、強く振ったら曲がる状態だったので、球を置きにいくようなショットが多かったんですよ。でも、そのままだと不安は消えないし、飛距離がどんどん落ちちゃいますからね。ちゃんと振れるようにすることがテーマです。
O編 シーズン中だと、大きな修正をするのは怖いもんね。
坂詰 ええ。彼女の場合、何年か離れていて、昨年のシーズンインのタイミングでボクのところに戻ってきたんです。だから、昨シーズンは、スウィングとか未調整のまま戦わざるを得なかったんです。
坂詰 言い方は悪いかもしれないけれど、ごまかしながらプレーするしかなかったわけだね。
O編 ええ。シーズン中に技術を変えると、バラバラになっちゃう危険がありますからね。だから、スウィングはあまりいじらないで、シャフトで調整したりしてたんです。
坂詰 どういうこと?
O編 彼女の場合、調子は悪くてもクラブパス(軌道)は非常に安定してたんです。つまり、球が安定しないのは、インパクトのタイミングがズレて、フェース向きが安定していないのが原因だったわけです。
ただ、そこでグリップやスウィングを矯正してしまうと、軌道も悪くなるかもしれないので、スウィングは変えず、元の軌道のまま、フェース向きが安定する(タイミングが狂いにくい)シャフトに替えることで、ショットのバラツキを抑えたんですよ。
O編 なるほど。安定した軌道という長所を生かしたまま、短所を抑えようとしたわけだね。
坂詰 ベストではないけれど、ベターかなと。
脚で打つのがテーマです
O編 ちゃんと振るのがテーマだってことだったけど、具体的には、どんなことをするの?
坂詰 ちゃんと振るっていうのは、下半身でスウィングするってことなんです。基本的に、球を安定させるには、腰の回転で打つ必要があります。でも、腰って、腰単体で回すことはできないわけです。
O編 腰を回すためには、下半身=脚を使う必要があるんだね。
坂詰 そういうことです。彼女の場合、まだまだ、体を止めて腕を振るクセがあるので、とにかく下半身でスウィングする。そういう練習を徹底してやらせようと思っています。
O編 以前に教えてもらった、キャスター付きのイスに座ってクルクル回る脚の使い方だよね? 両足で地面を踏んで、脚を伸ばすことで腰を回転させる。
坂詰 それです。クラブがトップに上がったら、右足で地面を踏んで腰を左にスライドさせ、左足で地面を踏みながら脚を伸ばして腰を回転させる。その動きを、素振りから、球を打つところまで、とにかくやってもらおうかなと。
O編 体に染み付いた動きってなかなか取れないものだけど、シーズンインまでにきっちり仕上げてもらいたいね。
坂詰 ま、彼女の場合、基本的にはジュニアの頃からその動きをボクが指導してきたわけです。ただ、ここ何年か離れていたことで、悪いクセが出ているから、もう一度やり直すって感じですかね。
O編 とにかく、飛距離が出るっていうのは魅力だし、アドバンテージが大きいからね。期待してます。
PHOTO/Shinji Osawa、Takanori Miki
※週刊ゴルフダイジェスト2024年2月6日号「ひょっこり わきゅう。第52回」より