早くも西海岸シリーズに突入している米PGAツアーだが、2024シーズン開幕以降、試合毎に使用者数を伸ばしているニュークラブがある。それがタイトリスト ボーケイ・デザイン『SM10ウェッジ』だ。

クラブ契約の枠を越えてボーケイウェッジを使用する選手が後を絶たない

PGAツアー開幕戦のザ・セントリーでツアーデビューし、ジ・アメリカンエキスプレスで本格的なツアー供給が始まったSM10は、すでにモデル単体で30%を超えるシェアを獲得(AT&Tプロアマ/モデル別ウェッジカウント31%/ダレル・サーベイ社調べ/タイトリスト公表)。これは最も近い競合ウェッジブランド(全モデルの合計)のシェアを、たった1モデルで2倍以上引き離す圧倒的な実績である。

モデル名のSMとはSpin Milledの頭文字をとったもので、数字は10世代目であることを表す。ボーケイウェッジは、96年にボブ・ボーケイ氏がリーダーに抜擢されて開発プロジェクトがスタートし、98年に初代シリーズを発売。フェース面とスコアラインを精密機械加工で仕上げたSpin Milledは05年に初代モデルが登場している。

ブランドの草創期にはタイガー・ウッズやフィル・ミケルソン、アーニー・エルスらがボーケイウェッジを手にメジャーの舞台で名勝負を繰り広げ、現在はスコッティ・シェフラー、ジャスティン・トーマス、ジョーダン・スピース、ラドビッグ・アバーグなどのトップランカーが最新のSM10で超絶テクニックを披露。その信頼性がクラブ契約の枠を超えたものであることは、ボーケイウェッジのPGAツアー年間ウェッジ使用率が50%を超えていることからも想像することができる。

画像: タイガーの最強時代を支えたボーケイウェッジ(2000年全米オープン)(撮影/岩井基剛)

タイガーの最強時代を支えたボーケイウェッジ(2000年全米オープン)(撮影/岩井基剛)

画像: 昨シーズン、ルーキーイヤーながら、DPワールドツアー、PGAツアーで勝利。そして抜擢されたライダーカップでも大活躍したL.アバーグ。彼の手にもボーケイ『SM10』が握られている(撮影/Blue Sky Photos)

昨シーズン、ルーキーイヤーながら、DPワールドツアー、PGAツアーで勝利。そして抜擢されたライダーカップでも大活躍したL.アバーグ。彼の手にもボーケイ『SM10』が握られている(撮影/Blue Sky Photos)

では、ボーケイウェッジはなぜブランド創設30年で独占的と言えるまでの信頼を勝ち取ることができたのか? その答えをTeam VOKEYを率いるカリスマ、ボブ・ボーケイ氏(タイトリスト マスタークラフトマン)の掲げる開発哲学の中から見つけ出してみたい。

「ウェッジとはスコアリングクラブである(ボブ・ボーケイ)」

画像: タイトリスト マスタークラフトマン、ボブ・ボーケイ。世界最高峰のプレーヤーからのフィードバックを重視し、不動のNo.1ウェッジを作り続ける

タイトリスト マスタークラフトマン、ボブ・ボーケイ。世界最高峰のプレーヤーからのフィードバックを重視し、不動のNo.1ウェッジを作り続ける

本格派のウェッジブランドを立ち上げるにあたって、とにかく世界中のツアー現場に足を運び、プレーヤーがウェッジに何を望んでいるのかをヒアリングして回っていたボーケイ氏。そこで得た確信のひとつが「ウェッジとはスコアリングクラブである」という大前提だった。世界のトップランカーといえどもパーオン率が100%にはならないし、ショットを曲げてバンカーや深いラフからアプローチすることも当然多い。

画像: さまざまな状況からどれだけピンに寄せられるか。それこそがウェッジに求められる性能だ(撮影/有原裕晶)

さまざまな状況からどれだけピンに寄せられるか。それこそがウェッジに求められる性能だ(撮影/有原裕晶)

その中でスコアを作っていくために最も必要なことが“アプローチをできるだけカップの近くに寄せること”。それができれば1パット率が高まってスコアマネジメントは容易になる。つまり、スコアはウェッジショットの成功が作るだということを多くのプレーヤーと対話する中でボーケイ氏は感じ取ったわけである。

「スコアアップに導くウェッジはひとつではない」(ボブ・ボーケイ)

スコアリングクラブとしてのウェッジ開発において、ボーケイ氏が常に念頭に置いているのが数多くの選択肢をプレーヤーに用意すること。その理由はウェッジほど使用する条件(距離、ライコンディション)がその都度違うクラブは他になく、寄せを成功させるための弾道イメージもプレーヤーによって大きく異なっている。ボーケイ氏はこうしたウェッジならではの多様性をSHOT VERSATILITYというワードで表現している。

画像: 豊富なロフト設定に加え、多彩なグラインドが揃うボーケイ『SM10』。グラインドは、フルソール系の「F・S・K」、大きく削られた「D・M・T」の6種類がラインナップされている(撮影/有原裕晶)

豊富なロフト設定に加え、多彩なグラインドが揃うボーケイ『SM10』。グラインドは、フルソール系の「F・S・K」、大きく削られた「D・M・T」の6種類がラインナップされている(撮影/有原裕晶)

ボーケイ・デザインウェッジは46〜62度まで2度ピッチで設定されたロフトバリエーションに加え、グリーン周りのアプローチで使用されるロフト帯では複数のソール形状(グラインド)を選択できるようになっている。他のウェッジブランドが在庫リスクを懸念してバリエーションを絞り込もうとする中で、ボーケイウェッジだけが選択肢を拡充し、その豊富なバリエーションの中から最適を選び出すシステム(フィッティング)を確立してきた。

草創期はあくまでもツアーバンの中での選択肢(プロゴルファーだけの特権)であったソールのカスタムグラインドも、SMシリーズ5代目のSM5(2014年)からは一般にも供給を開始。今では「一般のゴルフショップで売られているラインナップで、世界ツアーの8割以上のプレーヤーニーズに応えることができる」とボーケイ氏が言うほど、ツアーレベルの選択肢が一般ゴルファーにも広がっている。

「テクニックではなく、ロフトの組み合わせで距離を作る」(ボブ・ボーケイ)

豊富なロフトバリエーションの背景には、多様性への対応だけではないボーケイ氏の開発哲学がある。それが“飛距離の打ち分けはフルショットを基準に行うことでシンプルになる”というもの。
ウェッジをショートアイアンの延長としてとらえ、最も安定して気持ちよく振れるスウィング(フルショット)での飛距離差を10〜15ヤードに設定。どのロフトを組み合わせればPWとSWの間をフルショットで埋めることができるのか? アイアンのロフト設定が多様化するにつれて、ボーケイウェッジのロフト体系も変わってきているのはこのためである。

画像: 『SM10』のロフトバリエーションは46~62度まで2度刻み。写真でもわかるように、ホーゼルの長さをフローさせるなど、ロフト別に重心位置などを細かに調整。用途に合わせて最適な弾道を繰り出せる(撮影/有原裕晶)

『SM10』のロフトバリエーションは46~62度まで2度刻み。写真でもわかるように、ホーゼルの長さをフローさせるなど、ロフト別に重心位置などを細かに調整。用途に合わせて最適な弾道を繰り出せる(撮影/有原裕晶)

また、フルショットで使われるロフトモデルとグリーン周りで使われるロフトモデルを分けてイメージし、ロフト別の重心設計やヘッド形状の調整、ロフト別に溝の深さ・幅さえも変えているのも、最新作SM10ウェッジ設計の大きな特徴となっている。

「ウェッジはボールを止めることに特化したクラブである」(ボブ・ボーケイ)

ボーケイ氏のウェッジ開発哲学を示す3つ目のキーワードが“バックスピンの最大化”である。フェースの平滑性を極限まで高めて摩擦係数を増やし、シャープな溝のエッジで芝を切りボールとフェースとの直接コンタクトを実現するSpin MilledのTXグルーブ。これもあらゆるコンディションからボールをカップ際に止める! という開発目標から生み出されたテクノロジーだ。

画像: グルーブ(溝)もリフトごとに個別設計されている『SM10』。TX9グルーブはスピンミルド加工と溝の間の細かなミーリングによりスピン性能が最大化される(撮影/有原裕晶)

グルーブ(溝)もリフトごとに個別設計されている『SM10』。TX9グルーブはスピンミルド加工と溝の間の細かなミーリングによりスピン性能が最大化される(撮影/有原裕晶)

昨今ではアイアンセットのPWではなく、ボーケイウェッジの46〜48度をPWとして使用するプレーヤーが急増しているが、その理由についてボーケイ氏は次のように語っている。

「それはツアーレベルのプレーヤーにとって、PWが狙った場所にボールを止めるためのクラブになっていることの証明です。特別な重心設計、特別なフェース加工、驚くほどシャープな溝を使って特別なスピン性能を発揮する、それがボーケイウェッジなのです」(ボーケイ氏)

ツアーでの独占的ともいえる使用率の背景にある、ウェッジ界のカリスマが掲げる孤高の開発哲学を今回は紹介した。次回は前作からのスイッチを加速させている最新のウェッジ、SM10の多彩なグラインドとその選び方について詳しく紹介します。

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