目指すは2100を超える全国のゴルフ場を下道&車中泊で完全制覇
全国のゴルフ場を制覇する。ゴルファーなら誰もが一度は抱く夢だろう。
それに現役のサラリーマンが挑戦している。それも下道を使い、車中泊しながらだ。木村公一。62歳。愛知県在住で中日総合サービス専務の肩書を持つ。
中日新聞の折り込み広告を扱う会社で、仕事はかなり忙しい。にもかかわらず全国2100余のゴルフ場制覇を目指している。すでに47都道府県のゴルフ場を各1カ所以上回り、制覇したゴルフ場の数は983カ所に達した。
全国のゴルフ場制覇を目指すゴルファーはほかにもいるはずだが、高速道路を使わず、すべて下道で、車中泊しながら挑戦し続けているのは、おそらく木村だけだろう。
お金がないわけではない。前述したように現役の会社役員だ。当然、平日は勤めがあるので、ゴルフ場巡りは連休を除けば週末のみ。
金曜日の夜に自宅を出て、途中で車中泊し、土曜と日曜はラウンドして下道で帰宅。
月曜日には普段通りに出社して勤務する。すでに自宅のある愛知県や周辺の岐阜県、三重県、静岡県などはほぼ制覇し、現在は、西は岡山や広島、東は東京周辺へと遠征中だ。
「この年末年始は12月29日から1月8日まで10泊11日で岡山県と広島県のゴルフ場を10コース回る予定でした。普段は土日しかラウンドできないので、年末年始やゴールデンウィークの連休は、全国制覇を加速させる絶好のチャンス。正月も家でのんびり寝ているわけにはいかないのです」
計画は、病気で伏せっていた実母が3日に急逝したため中断して帰宅したが、それまでは大晦日も元日もなく5連チャンしている。木村は、なぜ全国制覇を目指すようになったのだろうか?
陣取りゲームが好き。3年で地元岐阜と愛知の210コースを完全制覇
「ゴルフは35歳のとき、会社の接待に必要だからと始めて、メンバーコースも3つ持ち、月例にも出てシングルを目指したのですが、ハンディは10で止まったまま。もともと同じコースばかり回ってもつまらないので、同じ金を払うのならいろんなコースを回りたいと。それで52歳のとき、愛知と岐阜のゴルフ場210カ所を3年間で制覇。そこから火が付いて全国制覇を目指すようになったのです」
若い頃から“陣取りゲーム”のような遊びが好きで、東京勤務の際には群馬県を担当して同県内の温泉165カ所を制覇。また旨いと評判の焼き肉店を400店以上食べ歩くなど、凝り性でもあった。
「普通の人はゴルフが上手くなりたいと思うでしょ。私は違った。どんなに上手くなってもサラリーマンの身で日本オープンに出て日本一になれるか、絶対に無理だ。だけど全国のゴルフ場制覇ならサラリーマンでもできる。それをやって日本一になろうと考えたのです」
もとは中日新聞の販売部門に勤めていたので、販売店対応や新聞拡張員対策などの仕事絡みで社内ゴルフコンペや付き合いゴルフにはしょっちゅう誘われた。
「でも全国制覇を目指してからは、上司や先輩の誘いも断って、未経験のゴルフ場をプレーするようになったので、会社では変わり者扱いでした。それでもとにかく全国制覇を目指したかった」同調圧力に弱い日本のサラリーマンには珍しいタイプ。根底にあるのは"人のやらないことをやりたい”というオンリーワンのアイデンティティだ。
それが「下道」「車中泊」という途方もない発想を生んだ。
漫画『釣りバカ日誌』ならぬ『ゴルフバカ日誌』を地でいく痛快サラリーマン木村公一さん。この特集の後半は2024年2月20日号の「週刊ゴルフダイジェスト」とMYゴルフダイジェストにて掲載中!
また来週から木村公一さんの『ゴルフバカ日誌』の週イチ連載も予定しているので、こうご期待!
THANKS/箱根湯の花ゴルフ場
TEXT/Kenji Takahashi
PHOTO/Takanori Miki
*数字は2024.1.28現在
※週刊ゴルフダイジェスト2024年2月20日号「車中泊で日本一!」より一部抜粋