米下部ツアーに参戦の馬場咲希とルーキー2人のゴルフへの向き合い方
O編 馬場(咲希)さん、今季はEPSONツアー(米国の下部ツアー)に参戦するんだね。
坂詰 そうですね。正式にエントリーしたみたいです。
O編 昨年プロテストに受かって、今年は国内で見られると思ってたファンも多かっただろうけど。
坂詰 スケジュールの関係で(米国の予選会に出るため)、日本のQTに出られず、出場資格を得られませんでしたからね。主催者推薦で出られる試合だけで頑張るという選択肢もあったと思いますが、EPSONツアー(予選会62位タイの資格でエントリー)で頑張るみたいです。
O編 下部ツアーだと、賞金が少ないから大変そうだね。移動距離も長いから、交通費、宿泊代などの経費がバカにならないだろうし。でも、こういうとき、全米女子アマ優勝のタイトルが効いてくるのかな。スポンサーなしじゃ、ちょっと厳しそう。
坂詰 国内でも1年で1000万はかかると言われますからね。米ツアーはもっとかかるでしょう。本人もわかっていると思いますが、いろいろな人の助けがあっての挑戦ですよね。
O編 EPSONツアーって、年間の上位10 名に入ると、レギュラーツアーの出場権がもらえるんでしょ? (みんゴル編集部注:掲載号発行後に米LPGAの規約改定があり、24年シーズンのEPSONツアーの11~15位の選手は25年LPGAレギュラーツアーの出場カテゴリー15番目に入り、出場権を獲得する見込みとなった)
坂詰 あと、上位10 人に入ると、1万ドルのスタートアップ費(支度金)がもらえるので、そこを狙っていく感じだと思います。
O編 応援してますよ。
坂詰 ま、ボクは彼女が日本に帰国したときと、電話でアドバイスを送るくらいだと思いますけどね。
O編 契約選手たくさんいるもんね。そういえば、馬場さんと一緒にプロテスト受かった稲垣那奈子さんと、髙木優奈さんはどんな感じなの?
坂詰 稲垣さんは、お世話になっているプロに頼まれて昨年の5月から、髙木さんは、昔から仲のいいプロキャディからの紹介で、見ることになったんです。
O編 じゃ、稲垣さんの話から聞こうかな。
坂詰 稲垣さんは、ナショナルチームのメンバーで球を打つのは上手いんだけど、体の柔らかい女性特有の”ゆるみ”があったので、そこを直す感じでした。
O編 ゆるみって?
坂詰 バックスウィングが、ちょっとリバース(ギッタンバッコンの動き)気味で、重心が浮いて、体を使い切れてなかったんです。
O編 アマチュアにも多い動きだよね。どんなアドバイスしたの?
坂詰 シャドースウィングや素振りでムダな動きを抑えつつ、下半身で打つ感覚を徹底していく感じで。まぁ、レッスンの内容はともかく、彼女の場合は、プロになりたいって気持ちがものすごく強かったのと、ゴルフに対する向き合い方がよかったんだと思います。
O編 向き合い方とは?
坂詰 よく、プロコーチに教わったらそれだけで上手くなると思っている人がいるんですが、そうとは限らないわけです。言われたことを、意味もわからずやっていても、何も変わりませんからね。
その点、彼女の場合は、自分がやりたいことに対して何が足りないのか、自分のやり方は合っているのか、どうしたらできるようになるのかを、向こうからぶつけてくる感じだったんです。だから、ボクはテーマを与えて、彼女は次に会うまでにそのテーマをクリアしてくるという感じでやれたんですよ。
「"エサの捕まえ方"を教えたいんです」(坂詰)
O編 あぁ、一から十までコーチに依存するんじゃなくて、自分で考えて、自分のなかにないものをコーチから引き出そうとしたわけだね。
坂詰 そういう会話ができる選手だったから、結果につながりやすかったんだと思います。
O編 教わっただけでは上手くならないというのは、アマチュアのプレーヤーも同じだよね。
坂詰 ええ。ゴルフに限らず、言われて仕方なくやったことって身にならないじゃないですか。自分で目標を持って、問題を見つけて、自分の力で解決して、初めて自分の力になると思うんですよ。
O編 コーチは、その方法がわからないときの手助けをする感じだね。
坂詰 たとえば、保護した野生の鳥のヒナを飼育するとき、エサを与えるだけじゃ、野生に返したときに生きていけないわけです。野生に返すためには、エサの捕まえ方を教えてあげる必要がある。ゴルフのレッスンもそれと同じだと思ってるんです。
ボクは、単に直すのではなく、プレーヤーが自分で修正できるように教えたいんです。そのとき、プレーヤーには、自分で考える姿勢が絶対的に必要なんだと思うんですよ。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年2月20日号「ひょっこり わきゅう。第53回」より一部加筆しました