ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、PGAツアー史上8人目のアマチュア優勝を果たしたニック・ダンラップ選手について語ってもらった。
画像: 「飛距離、ショット、グリーン周り、パットと、今どきの穴のない選手」(佐藤)

「飛距離、ショット、グリーン周り、パットと、今どきの穴のない選手」(佐藤)

歴史に名を残す偉業を達成したが、周囲は「あいつなら勝って当然」

ジ・アメリカン・エキスプレスで、91年のフィル・ミケルソン以来33年ぶり、PGAツアー史上8人目のアマチュア優勝を果たしたニック・ダンラップ。アラバマ大2年の20歳です。

歴史に名を残す偉業を達成しましたが、周囲は「あいつなら勝って当然」と、さほど驚くことなく受け止めているようです。

エリート街道を歩み続けたダンラップらしいところ。21年に全米ジュニア、23年には全米アマを制しましたが、「勝って当然」と周囲が思うのは、その輝かしい戦歴だけではありません。

優勝後にアラバマ大のコーチが語ったのは、「野球でも確実にアラバマ大のレギュラーになっていただろう。少し北に生まれたらアイスホッケーの名選手になっていたはずだ」というスポーツ万能さ。子ども時代はNFL主催のスキルチャレンジイベントで、ファイナリストになったこともあるようです。

そのなかでなぜゴルフを選んだかといえば、毎年PGAツアーチャンピオンズ(シニアツアー)の開催される、アラバマ州のグレイストーンG&CC、その6番ホールから歩いて100ヤードのところに家があったから。

12歳で出場したジュニアの大会で59を叩き出し、2位に13打差をつけて圧勝。アラバマ州ジュニア選手権の14歳〜18歳の部を、14歳で優勝します。日本でいえば中学2年生が高校3年生を向こうに回して勝ったわけです。

さらに17歳でコーンフェリーツアーのマンデーで62を出して本戦出場、18歳では全米ジュニア、18、19歳で2年連続全米オープンに出場、その後も歴史と伝統のある大会で勝ち続け、19歳で全米アマ優勝となるのです。

ちなみに全米ジュニアと全米アマを制したのは、ほかにはタイガー・ウッズしかいません。

その間、ゴルフの故郷とも言うべきグレイストーンのメンバーから、「頼むからダンラップをクラブ競技に出さないでくれ」と悲鳴が。メンバーはじめ彼のゴルフを知る人は皆、彼の「すごい話」をひとつは持っているようです。

タイガーでもよく聞きましたが、やはり子どもの頃からずっとスターだったのですね。

たとえば優勝した全米アマは、誤球もあってスタートから7ホールで5オーバー。そこでキャディを務めていたコースの先輩プロ(J・カール)が、ヤーデージブックの8番ホールのところに「ここから事を起こしたらすごいストーリーになるよ」と書き込みます。その言葉に勢いをつけられたか、タイガー以来、史上2人目の快挙へとつながります。

アメックスでも、優勝を決めたパットの前に、キャディを務めたアラバマ大のアシスタントコーチが「こんなのお前のママだって入るよ」。優勝のプレッシャーもかかる約2mのスライスラインを、はた目にはいとも簡単に沈めました。

飛距離、ショット、グリーン周り、パットと、今どきの穴のない選手。

全米アマでもそうでしたが、勝負どころのパット、ときにロングパットをことごとくねじ込む。スタッツだけでは語り切れない勝負強さとオーラ。伝説を作る選手の特徴です。

PHOTO/Blue SkyPhotos

※週刊ゴルフダイジェスト2024年2月27日&3月5日合併号「うの目 たかの目 さとうの目」より

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