ツアー勝利数113勝という空前絶後の記録を達成した“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司。現在は、原英莉花、佐久間朱莉、小林夢果を始めとする多くの女子プロたちの師も務めているが、現役時代は1997年に世界ランキング5位、2010年には世界ゴルフ殿堂入りも果たした。そんな目覚ましい記録を有するジャンボ尾崎は、これまでにいくつかの名言を残している。その名言を7ヵ条とし、今回は体づくりの信念について語ったインタビューを紹介する。

「ゴルフは心・技・体ではなく、体・技・心の順なのだ」

一夜にして日本プロゴルフ界を一変させた男がいい続けている言葉。もう信念である。尾崎が出現するまで、プロゴルファーの世界は“職人の世界”であった。球筋をコントロールするために、小さな筋肉を使って器用にボールを操る。師匠から弟子へと業(わざ)を伝える、そんな世界であった。ところが、プロ野球から身を転じた男は、181cm、85kg、野球で鍛えた強靭な肉体を駆使して、当時のパーシモンで300ヤードぶっ飛ばした。これまでの規格をすべて変えたのである。

「なんといってもまず体がなければ、高度な技術など獲得することはできない。技術的に未熟なやつがいくら精神力は強いといっても高が知れている。まずゴルフをやる土台の体がなければ始まらないんだよ」と尾崎は口癖のようにいっていた。
アマへの助言を求めても「飛ばすためにはそれなりの体が必要なんだよ。ふだん何もしていない人が飛ばそうというのはムシがよすぎるんじゃないの」

そんな尾崎の信念を具現化したのが、オフの自宅でのトレーニング。弟の健夫、直道、飯合肇ら10数名のジャンボ軍団がさまざまなトレーニングに励む。野球出身の尾崎は個人競技のゴルフに団体競技の楽しさを持ち込んだともいえる。
「1人より大勢のほうが楽しい。メシを食べるのだって、トレもそう。1人でやるトレはひたすらつらいだけ、途中でいやになるよ。でも大勢でやると、きついことでも楽しくやることができるんだ。本来スポーツは明るく楽しいもの。歯を食いしばってというのは嫌いだね」と尾崎。
そのトレーニングにも時にはゲーム的要素を取り入れて、勝った、負けた、罰ゲームだと歓声があがっていたものだ。

画像: 2000年頃、ジャンボ軍団のトレーニングの様子。

2000年頃、ジャンボ軍団のトレーニングの様子。

また、リーダーシップをとって個人の体力測定の結果を見ると、その人に足りない要素を課すこともした。三勤一休、年齢があがってきてからは怪我を避けるためもあって、四勤(3日でやる内容を4日で)一休となった。

「飛ばし(振る)の筋力」について、尾崎はこういっている。
「下半身を鍛え、振る運動は下から上に動くことを認識することが、まず第一。走ってもいいし、器具を使ってもよし。背筋・腹筋を鍛えればフォロースルーを大きくできる。そして側筋。振るという動作は回転運動だから、側筋の働きは重要。ただし側筋を部分として鍛えることは困難だろうね。だから重いクラブ、またはバットを多く振って側筋をつくっていくんだよ」

さらに加齢していくにつれ、「力をつけるより柔軟性を磨け。飛ばしたくて肩や腕の筋肉をつけても、それによって柔軟性が失われるようでは逆効果でしかない。強い部分に頼りすぎるとバランスが崩れる」と言うようになった。

プロゴルフの革命児は、トレーニングにおいても革新の嚆矢(こうし)であった。このオフのトレは70歳を超えた今でも続けられている。継続できることこそ真の才能であろう。

TEXT/Masanori Furukawa

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