O編 馬場咲希プロ、今年は、エプソンツアー(米国の下部ツアー)で戦うことになったけど、コーチとしてはどう見てるの?
坂詰 どうというと?
O編 ほら、海外に行くと、他の選手が飛ばすし、コースも厳しいから、調子を崩したり、自信をなくしちゃったりする選手が多いじゃない?
坂詰 そういう点ではあまり心配してないですね。馬場ちゃん、物おじしないんで。他の選手がいくら飛ばしても、コースが狭かったりしても、そんなに気にしないで自分のゴルフができるんですよ。心配なのは、とにかく体調です。元々食が細いので、転戦でやせちゃうのが一番怖い。やせると飛ばそうとしてスウィングを崩しちゃいますから。
O編 親御さんや専属キャディやコーチもなしで、ひとりで戦うことを心配する向きもあるみたいだけど。
坂詰 本人はそんなに不安に思ってないようなので大丈夫だと思いますよ。技術についても、彼女が悪くなるときの傾向や、その直し方についてはずっと教えてきたので、今のところ心配はしていません。
O編 ところで、馬場プロのプレーのなかで、読者に参考にしてもらいたいところとか、マネしてほしいポイントみたいなのはある?
坂詰 そうですねぇ……。あぁ、決め打ちができるところはぜひマネをしてもらいたいですね。
O編 具体的に言うと?
坂詰 たとえば、ピンが奥のときって、絶対にグリーン奥には 外したくないので、ピンに届かない距離を打っていくわけです。
O編 グリーン奥に外したら、逆目が残ったり、ピンまで距離のない下りが残ったりして寄らないからね。
坂詰 でも、アゲンストの風が吹いているときは、ちょっと考え方が変わります。たとえば、50Yが残っているとしたら50Yきっちり打てば、最悪でもピンをオーバーすることはないし、アゲンストの風で止まりやすいから、ピンに寄せられるチャンスもあるわけです。
O編 アゲンストのときには、少し攻撃的に攻められるんだね。
坂詰 そういうことです。ところが、なかにはアゲンストでもオーバーするかもしれないと怖がって、50Yを打てない選手もいるんです。
O編 短い距離を打っちゃうってこと? それじゃ、結構ショートしちゃうんじゃないの?
坂詰 しちゃいます。だから、そこは怖くてもシンプルに50Yを決め打ちすべきなんです。
O編 馬場プロはそれができるんだね。
坂詰 ええ。「ここは50Yだね」って言うと、きっちり50Yのスウィングができる。そこで怖がって、スピードが落ちるとか、そういう変な反応がないんです。
O編 ただ、それってプロの精度があっての話でしょ? 普通の人は、50Yを打とうとして60Yのスウィングになっちゃうこともあるわけだから。アベレージゴルファーの場合、どんな場面で、どんな決め打ちをすべきなの?
坂詰 たとえば、グリーン手前にバンカーがあって、それを越える番手を持ったら、その番手どおりの距離を決め打ちすべきなんです。ところが、バンカーを越える番手を持ったにもかかわらず、力んで強く打とうとしちゃう人が多いんですよ。
O編 あぁ、バンカーに入れたくないと思って、さらに飛ばそうとしちゃうんだね。なるほど。それが決め打ちできていないってことか。
坂詰 同じように、グリーン右の池を避けるために、グリーン中央から左を狙ったとしますよね。それなら、狙ったところに向かって、いつもどおりのスウィングで決め打ちすべきなんです。ところが、それでも右が怖くて、球をつかまえ、左に外してしまう人がとても多い。
O編 池やバンカーが怖いと、過剰に反応しちゃうってことはあるよね。
坂詰 ええ。でも、ハザードを必要以上に怖がっているうちは、スコアって伸びないんですよ。
O編 それって、レベルにもよるんじゃないの?
坂詰 そうですね。たとえば、100を切れない人であれば、ハザードやOBを避けまくるというマネジメントでもいいと思うんです。でも、「なんでもかんでも危機回避」という考え方では、なかなか90 をコンスタントに切ることはできません。
レベルアップを図るのであれば、多少怖くても、自分の決めた距離、スウィングをやり切る。そういう意識を持って、やり切る訓練を普段からすべきなんじゃないでしょうか。
PHOTO/Tadashi Anezaki
※週刊ゴルフダイジェスト2024年3月26日号「ひょっこり わきゅう。第58回」より