「憧れるな! 倒しに行け!」師匠からの言葉に背中を押され……
――ファイナルQTは初日からトップを独走していた砂川プロでしたが、3日目は後続の選手が迫る展開となりました。
砂川プロ(以下、砂川) 風向きが変わって強くなって、グリーンを上手くとらえないとボギーになったりするコンディションでした。2位の選手と2ストローク差で最終日を迎えることとなり、その晩、いつものように寺西プロに電話したんです。
寺西プロ(以下、寺西) 砂川のことは彼が高校1年生のときから面倒を見ていて、しょっちゅう電話で話をしますが、今回の最終日を迎えるにあたっては多少のプレッシャーはあるのかなと思い「どうや」って聞いたら「大丈夫です」と冷静でした。それで「他人なんか見んでいい。自分ができることをやり切れ」とだけ伝えました。
砂川 23年はレギュラーツアーに参戦できているにもかかわらず、自分のゴルフができずに失敗しました。ファイナルQTの最低ラインは20位以内ですが、寺西プロの言葉を聞いて、そこを意識しているようではまた同じことの繰り返しだなと。なので、今回は優勝しか考えませんでした。
2020年日本シニアオープンで優勝
「“勝つ”と決めたら覚悟を持って挑まないといけません」(寺西)
「試合会場となった鳴尾GCを実際のラウンドだけでなく、風向き、気温、カッパを着ることまでも想定して、何万回も頭の中でプレーをしてから挑みました。18番でウィニングパットを打つ自分をイメージできていて、それを現実に重ねた優勝でした」
ーー昨年、自分のゴルフができていなかった理由はどこにあったのですか?
砂川 技術的に焦りがありました。自分は身長があるほうではないですし、飛ぶほうでもありません。でも、ロングアイアンで止めてくる選手を見て、自分もそれができないと勝負にならないのではないかと思ってしまったんです。球を止めるために、少し上から入れてスピンを入れて……というようなことをしてしまって。
寺西 ドロー一辺倒でプロになったのに、初めてレギュラーツアーを1年通して戦うなかで、他の選手(フェードで球を止めてくる選手)を見て、そのプレー(フェードで球を止めること)をマネようとしていた。もちろん技術を磨くことは大切です。ただシーズン中にすべきことなのか? ということなんです。たとえ練習場で打てたとしても、その球を試合で使えなかったら意味がない。理想を追いかけて、現実を見ない。若い選手が陥りがちなミスにハマってしまっているなと。
寺西流 勝つ為の3カ条
- 他人なんか見んでいい、自分ができることをやり切れ
- その球は本番で使えるんかい?
- やってはいけないミスは絶対に避けろ!
トップ選手と同じ土俵に上がることで自分を見失うことがある
砂川 パー5バーディが少なかったのも、反省点です。2打目で届くか、届かないときはどうするか(グリーン近くまで打ってアプローチ勝負をするのか、刻んで3打目勝負でいくのか)のジャッジが曖昧だったことが原因。これもやはり飛ぶ選手を見て、自分も2オンを狙わなくてはいけないのではないかという気になり、刻むべきときに近づけようとしてしまったからでした。
寺西 無理に近づけようとした結果、中途半端な距離のラフに入れたりして、3打目も寄せ切れなくなる。スコアを作るうえで、一番やってはいけないミスです。
砂川 結局は周りに影響を受けすぎてたんです。
寺西 試合に出ると実績や人気のある選手が勢揃いしているので、どうしても憧れの選手に目がいってしまう。それは仕方がないことですが、憧れていたり恐れていたりするうちは、絶対にその選手を超えることはできません。勝つために試合に出ているのだから、そういう選手たちを全部倒してやるくらいの気持ちでないとあかんのです。「他人なんかみんでいい。自分ができることをやり切れ」というのは、そういうことです。
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2024年5月号の月刊ゴルフダイジェストでは寺西流の「マネジメント」や「メンタル」についても深く解説している。20年シニア賞金王の“強くなるためのゴルフ”をぜひ、月刊ゴルフダイジェストかMyゴルフダイジェストで確認を!
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PHOTO/Hiroaki Arihara
協力/美奈木ゴルフ倶楽部
※月刊ゴルフダイジェスト2024年5月号「強いゴルフは何が違うのか」をお教えします! より一部抜粋