O編 前回、馬場咲希プロが決め打ちできるところをマネてほしいという話を聞いたけど、ほかにも参考にしてもらいたいポイントとかある?
坂詰 小細工をしない強さじゃないですかね。
O編 どういうこと?
坂詰 馬場ちゃんがアメリカに行く直前に、ラウンドをしながら調整をしたんですよ。その日は風が強かったんですが、彼女は抑えた球を打つこともないし、力むこともなかったんです。前から思ってたんですけど、そういうところは強いなぁと。
O編 よく、風が強い日に低い球を打って力感が強くなると、次の日のスウィングに影響出たりするって言うよね。
坂詰 馬場ちゃんの場合は、風が強くても普段どおりのスウィングができるので、そういう心配がないんです。あと、フェアウェイが広いとか狭いとかにも、あまり影響されないのもいいんですよ。
O編 具体的に言うと?
坂詰 ほら、よく、フェアウェイが広いと、狙いどころがアバウトになってミスが出るとか、狭いと普段どおりのスウィングができなくてミスをするとかいうじゃないですか。でも、馬場ちゃんには、そういうのがないんです。コースが広くても、狭くても、そんなに反応しないで打てちゃう。
O編 狭いコースに打っていくの怖くないのかなぁ?
坂詰 ないのかもしれませんね。もちろん曲がることもあるんですよ。そういうホールは、次の日に嫌がったり、怖がったりするんですけど、実際にミスをするまでは、広いとか、狭いとかを気にせず、いつものリズムで打てるんです。
O編 へぇ。それは羨ましい。でも、参考にはしにくいねぇ。そんなに強い心を持てないもん。
坂詰 いや、嫌な景色を気にしないで打てるところを参考にするんじゃなくて、そういうときに小細工をせず、普段自分がやってるスウィングをするっていうところを参考にしてほしいんですよ。
O編 ん? どういうこと?
坂詰 ほら、タイガー・ウッズが、風が強い全英オープンに行くと、超低弾道のスティンガーショットを打ったりしますよね。でも、それって全英のときだけ打っているわけじゃなくて、普段からそういう低い球をたくさん練習していて、普段から試合で使っていて、いつでも打てるから打つわけです。
ところが、そういうのを見ると、普段それほど練習していない人でも低い球を打とうとするじゃないですか。でも、それってあまり上手くいかないと思うんですよ。
O編 あぁ、なるほど。慣れない技術や自信のない技術を使うのではなく、普段どおりのプレーをすることが、ミスをしない秘訣だということだね。
坂詰 そういうことです。風が強いときは低い球を打つとか、障害物を避けるときには、フックやスライスを打ち分けて攻めるとか、そういう知識があると、コースでやってみたくなると思うんです。
でも、普段からちゃんと練習していない人は、やっぱり上手くいかない。逆に、そういう小細工をすることで、スコアを大きく崩してしまう危険があるわけです。
O編 よく、プロはできることだけしかやらないって言うけど、それほど練習もしていないショットや、自信のないショットや技術は選ぶなってことだね。
坂詰 まぁ、アマチュアゴルファーの場合、ちょっと強引なチャレンジをして上手くいったりするのもゴルフの醍醐味だと思うんですよ。だから、やっちゃいけないとは言いませんが、スコアを作りたいとか、ハンディを上げたいというなら、そういうプレーは避けたほうがいいですよね。
O編 アンダーパーで回る馬場プロが、そういうことしないんだもんね。我々も見習わないと。
坂詰 もちろん、普段の練習で球を曲げたり、高さを打ち分けたりするな、という意味じゃないですよ。そういう練習はボールをコントロールする能力がアップするのでどんどんやっていいと思います。でも、それを大事な場面で使うなら、使える自信がつくまで練習しておかないといけないですよね。
O編 自信がなくても、もしかしたら上手くいくんじゃないかって、思ったりするんだよね(笑)。
坂詰 ちょっと器用な人だと、できちゃうこともありますからね。でも、スコアを作るためには、小細工できない不器用さも大事で、それが強さにつながるんだって、ボクは思うんですよ。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年4月9日号「ひょっこり わきゅう。第59回」より