海外メジャー「マスターズ」の舞台、オーガスタナショナルGCの難所と言えば11番から13番にかけての3ホール、通称アーメンコーナーが有名だが、「スタートホールでもある1番も注目ポイントです」と兼濱は言う。
「1番は445ヤード、パー4でゆるやかな右ドッグレッグのホールです。このホールの難しさは、ちょうどコースが曲がるポイントに合わせて、手前側は276ヤード、奥は309ヤードと縦に伸びたバンカーが設置されている点。しかもフェアウェイも手前辺りからグッと幅が狭くなり、両サイドは林に挟まれています」(兼濱、以下同)
PGAツアー2024シーズンのツアー平均トータル飛距離を確認すると295.5ヤード(編注:2024年4月4日時点)。もちろんトータルで300ヤードを軽々超える選手も中にはいるが、平均値を見ればちょうどドライバーショットが止まるであろう地点にバンカーが設置され、狙いどころが非常に狭くなっているというわけ。「このバンカーを気にせず打てるのは、キャリーで310ヤード飛ばす選手だけ。フェアウェイも狭いので、飛ばすうえに正確性もあるということです。観戦のうえで一つ指標にしてみると面白いですよ」と兼濱は言う。
ティーショットの狙いどころが難しいならば、刻む選択肢も頭に浮かぶが、そう単純にはいかないのがこのホールをさらに難しくさせている点だという。
「もちろん刻むのも間違いではないんですが、問題はグリーンです。砲台でかつアンジュレーションもあり、狙えるスペースも狭いため、なるべく刻む選択をせずにティーショットから距離を稼いでおきたいんです」
飛距離を稼ごうとするとティーショットのドライバーが難しい。刻むとセカンドショットでのグリーンオンが難しい。「シンプルにコースとしての難しさがあって、選択から選手たちの葛藤、そして特色が見えてきます」という。
「それこそ飛ばす選手はバンカー超えを狙うでしょうし、ロングアイアンが得意な選手ならちょっと距離を残す選択もあります。観戦時も気にしてみると面白いですよ。マスターズは結構スコアを伸ばし合うトーナメントですが、1番に関してはその難しさからスコアも悪くなりがちです。だからこそ1番をパーで切り抜けられるかで、まずふるいにかけられるんです。スタートホールの調子はその後にも影響しますからね。直近で優勝したジョン・ラームや、日本人でマスターズ制覇を成し遂げた松山英樹選手も、振り返ってみると1番ホールでしっかりパーを獲っています。中継を観戦するときはもちろん、時間帯的に視聴が難しくて結果を追う形になっても、上位陣の1番ホールのスコアに注目してみてください」
協力/学芸大ゴルフスタジオ