コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックスAI」は、スウィング動画をAIによる3D解析技術でデータ化することができる。今回は先日幕を閉じた男子メジャー大会初戦、マスターズトーナメントにおいて、初メジャーにもかかわらず、単独2位フィニッシュのラドビッグ・アバーグのスウィングを「スポーツボックスAI」の3Dデータをもとに、ゴルフコーチ・北野達郎に解説してもらった。

みんなのゴルフダイジェストをご覧の皆様、こんにちは。SPORTSBOX AI・3Dスタッフコーチの北野 達郎です。今回は先日開催された「マスターズ」で、2勝目を挙げたスコッティ・シェフラーに次ぐ2位と健闘したラドビッグ・アバーグをスポーツボックスAIで分析しました。なお優勝したシェフラーのスウィング分析は先月末に掲載されておりますので、良かったらそちらもご覧ください。

関連記事;ザ・プレーヤーズ選手権を史上初の連覇! 現在世界1位のスコッティ・シェフラーのアイアンスウィングをAIで分析

さて、アバーグのスウィングを分析すると、

1.大きく長いスウィングアーク

2.スウィング中の体重移動が大きい

の2点が特徴的です。それでは早速チェックしてみましょう。

右手の「オントップ」グリップの特徴がよく表れた、レートコックのテークバック

まずアドレスですが、グリップは左手がストロング、右手がスクエアです。なかでも注目したいのは右手のグリップで、ウィークに近いスクエアです。この右手のグリップは「オントップ」と呼ばれるタイプで、このタイプはテークバックで右肘があまり曲がらず、大きなスウィングアークを描くのが特徴です。ちなみに優勝したシェフラーもこのタイプです。また胸と骨盤の左右差を表す「SWAY GAP」は−7.7cmで、胸を骨盤より右にセットしています。

画像: 画像①アドレス/左手はストロングでつかまりを確保し、右手はウィークに近いスクエア。右手のグリップは「オントップ」と呼ばれるタイプ

画像①アドレス/左手はストロングでつかまりを確保し、右手はウィークに近いスクエア。右手のグリップは「オントップ」と呼ばれるタイプ

右手のオントップの特徴がよく出ているテークバック(P3/左腕が地面と平行)のポジションを見てみましょう。スポーツボックスのデータ項目「LEAD WRIST ANGLE」は、左手首の縦コックの角度を表しますが、アバーグの左手首は118度で90度まで曲がっていません。続いて「SHAFT ANGLE FACE ON」は、アドレスに近い位置を0度としてクラブの角度がどれだけ変化したか? を表しますが、こちらはP3で165度と地面と垂直の180度まで到達していません。この2点がP3までの角度の変化が少ない=レイトコックで大きく長いテークバックを取るタイプと言えます。

このレイトコックのメリットには、スウィングアークが長くなりますので飛距離を出しやすいという特徴があります。往年のレジェンド、ジャック・ニクラスやグレッグ・ノーマンのテークバックとよく似ています。

画像: 画像②テークバック(P3)/左がアバーグ、右がノーマン。両者とも左手首とクラブの角度の変化が少なく、レイトコックのタイプ

画像②テークバック(P3)/左がアバーグ、右がノーマン。両者とも左手首とクラブの角度の変化が少なく、レイトコックのタイプ

右から左に体を揺さぶるバックスウィング

次にテークバック(P3)~トップ(P4)を見てみましょう。ここでの特徴は、「左右の動きが大きい」点です。バックスウィングでの胸と骨盤の左右の移動量を計測すると、胸が右に最大−4.5㎝
、骨盤が右に最大−5.8㎝にそれぞれ動き、トップでは胸は+1.5㎝左、骨盤は−3.9㎝右と、どちらもテークバックで右に体をスライドさせてからトップでは左に戻ってアドレスに近い位置まで戻ります。この「右から左に戻る動き」はツアープロ全員に共通する特徴ですが、アバーグの特徴は特に「胸の動き」が大きいことです。P3で−4.5㎝、トップで+1.5㎝ですのでP3~トップにかけては6.0㎝左へ戻っています。この胸が右から左へ大きく動くのがアバーグの特徴で、最近はこのタイプは少なくなったと言われますが、アバーグにはこの動きがマッチしているのでしょうね。

画像: 画像③テークバック~トップ/胸と骨盤は一旦右にスライドしてトップでは左に戻る。アバーグはこの動きが大きいのが特徴

画像③テークバック~トップ/胸と骨盤は一旦右にスライドしてトップでは左に戻る。アバーグはこの動きが大きいのが特徴

切り返しからインパクトは、一旦左に動いてセンターに戻る理想的な左右の動き

そして切り返し(P5)~インパクト(P7)を見てみましょう。P5のポジションでは胸も骨盤もまだ左に動き続けています。胸の左右移動量(アドレスを0とする)を表す「CHEST SWAY」は+8.5cm左、骨盤の左右移動量を表す「PELVIS SWAY」は+5.4㎝左と、それぞれ左に動いていますが、インパクトでは胸が+1.9㎝左、骨盤が+12.2㎝左と、骨盤は左に動き続けているのに対して胸はインパクトにかけて右に戻ってアドレスに近い位置にいるのがわかります。

画像: 画像④切り返し~インパクトの比較/切り返しでは胸・骨盤ともに左に動いて、インパクトでは胸が右に戻っている

画像④切り返し~インパクトの比較/切り返しでは胸・骨盤ともに左に動いて、インパクトでは胸が右に戻っている

私がアマチュアの方に参考にして頂きたいポイントは、この切り返しからインパクトにかけての胸の左右の動き方です。アマチュアの方に多い胸の動きのエラーには、まず切り返しであまりに早く胸を右に残し過ぎて右肩が下がり、過度なインサイドアウト軌道で右プッシュやチーピン、あるいはドライバーでのダフリといったミスに悩むケースがあります。このケースの方はトップから切り返しでは、まず一旦左足に体重を乗せる意識を持つと良いでしょう。例えば片足立ちのドリルなら「左足1本だけ立って打つ」ドリルが有効です。左足1本ドリルでは、胸が右に戻ると右足側にバランスを崩しますので、左足の上に胸を残す意識で練習しましょう。

画像: 画像⑤アマチュアに多いエラー例/左はインパクトにかけて胸を右に残し過ぎるエラー、左はインパクトにかけて左に動き続けてしまうエラー

画像⑤アマチュアに多いエラー例/左はインパクトにかけて胸を右に残し過ぎるエラー、左はインパクトにかけて左に動き続けてしまうエラー

もう1つのエラーには、切り返しからインパクトにかけて胸が左にずっと動き続けてしまう「突っ込み」によって、過度なアウトサイドイン軌道やスライス、あるいはテンプラやトップといったミスに悩むケースがあります。このケースの方には逆に「右足1本だけ立って打つ」ドリルが有効です。右足1本ドリルでは胸が左に突っ込んでしまうと、インパクト以降で必ず左足側にバランスを崩しますので、右足の上に胸を残す意識を持つと良いでしょう。

今回はラドビッグ・アバーグのドライバースウィングを分析させて頂きました。マスターズの前週に行われたバレロ・テキサス・オープンではティーショットでドライバーのヘッドが吹っ飛び、そのショットが何と1オンするなど、2週続けて話題を提供してくれたアバーグ。これからメジャーでどんな活躍を見せてくれるのでしょうかまた楽しみな選手が現れましたね!

「Pシステム」一覧表

P1:アドレス
P2:シャフトが地面と平行
P3:腕が地面と平行
P4:トップ
P5:腕が地面と平行
P6:シャフトが地面と平行
P7:インパクト
P8:シャフトが地面と平行
P9:腕が地面と平行
P10:フィニッシュ

PHOTO/Blue Sky Photos

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