「10K」とは、ヘッドの上下左右の慣性モーメントを合計した数値(単位はg・㎠)が10K(10000)を超えているほど大きいことを意味し、いわゆる曲がりにくいことを示す、話題のキラーワードとなっている。
ユージのような飛ばし屋は、宿命として曲がると大変なことになることが多いが、果たして「10K」ドライバーが、この飛ばし屋の“大曲り”を、どこまで抑えることができるのか、さっそく検証していこう。
1本目は、テーラーメイド「Qi10 MAX」。「Qi10」の「Q」はクエスト(探求)、「i」はイナーシャ(慣性モーメント)、「10」は10K(1万)を表し、打点がズレても打ち出しが左右にブレづらいというのがセールスポイントとして挙げられている。
ユージは普段は「Qi10 LS」を使っているが、「LS」はディープフェースのコンパクトなヘッド形状で、ロースピンで低弾道で飛ぶように設計されたトッププレーヤ好みのモデル。一方の「MAX」は余剰重量をヘッド前方と後方に配置することで、ヘッド全体の慣性モーメントを大幅に向上させ、飛距離だけでなく「やさしさ」を極限まで探求したモデル。「LS」はタイガー・ウッズ、「MAX」はコリン・モリカワなどが使用。ドライバーの飛距離300~330ヤードのユージの相性はどうだろう。
普段はロフト9度のドライバーを使うユージだが、まず10.5度のロフトで3球打ってみた。
1球目 右に9.5ヤード 飛距離265.8ヤード
「いいですよ。(ほぼストレートで)ほんのりフェードだけど。でも、あんまり行かないね」と訝るユージに、スピンが多すぎますかね(3989rpm)と『ギア王』の指摘が入ると、「ロフト角10.5度かぁ。じゃあ次は(抑えて)打ってみます」とユージ。
2球目 左に37.2ヤード 飛距離303.3ヤード
低めに抑えたけど距離は十分出てますねと言う『ギア王』に対してユージは、「でもちょっと左につかまえ過ぎでした。次はコースに入れるぞという意識でまっすぐ打ってみます」と宣言。
3球目 左に8.7ヤード 飛距離270.4ヤード
ユージは、「ちょっと左に行ったけど、でも方向は狙いやすいです。非常にコントロールしやすいかも」との手応えを感じたようだ。
ここで、ロフトを10.5度から8.5度に変更。ユージの普段使用のロフト角度に近づけて打ってみた。
1球目 右に40.8ヤード 飛距離269.7ヤード
初めて大きくスライスした弾道を見て、「うんうん。じゃちょっとドローボールで行かしてもらいます」と宣言のユージ。
2球目 右に15.9ヤード 飛距離260.1ヤード
ドローボール宣言したユージだが、打球は右に出て戻って来ず。「なんかつかまりづらいな。(打とうとした)感覚とちょっとズレがありますね。もう1回行きます」と、『大慣性モーメントヘッド』の特性に戸惑いを感じつつ、再度、ドローに挑戦。しかし。3球目は右へ、4球目は左へと続けてストレートに飛ぶ球が出て、“曲がる球”がなかなか打てない。
「結局、打ち出した方向にそのまま、まっすぐ出てるんですよね。それが多分、『大慣性モーメント』の効果なんだという気はします。」(ユージ)
確かに、ここまで打った中で、球が曲がったのは8.5度1発目で打ったスライス一回だけ。他はほぼストレートの弾道だ。そして結果的に8.5度で打った4球目の打球は、左に1.5ヤード真っすぐ飛び出して飛距離は307ヤードと、申し分のないショットだった。
「フェードやドローを打つ遊びをしようと思ったんだけど、それはしづらいかも。でも多くの人は、そうなりたくない(球が曲がりたくない)のになってしまうのを、この『Qi10 MAX』はまっすぐにしてくれるわけだから、これすごい性能高いなぁ」と結論づけた。
2本目はピン「G430 MAX 10K」。460ccの複合素材ヘッドはピンのドライバー史上で最も慣性モーメントが大きく、最も寛容性が高い“真っ直ぐ飛ぶ”ドライバーという触れ込みだ。その性能をユージが検証する。
1球目 左に44.1ヤード 飛距離265.8ヤード
左に大きく曲がるフックボール、「左に引っ張っちゃった。あ、でも今は意識して左に打とうとしたんです。OK。わかった」と、何かをつかんだ様子のユージ。
2球目 左に59.5ヤード 飛距離300.8ヤード
弾道は大きなドローボールで飛距離は300ヤード超えに、「このクラブは曲げたいと思ったらしっかり曲がる。うん、打ち分けしやすいかも。次はフェードをやってみます」と勢いづく。
3球目 右へ41.8ヤード 飛距離210.7ヤード
弾道は大きく右へ。「あ、やりすぎた。でもこっちの方がフェースコントロールはしやすいですね。じゃあ最後は、まっすぐ打ってみます」と言って、仕上げに入る。
4球目 左へ3.7ヤード 292.7ヤード
宣言通りに、ほぼストレートの弾道を打ち面目躍如のユージ。
「さっきの『Qi10 MAX』はどんなに手をこねても、真っすぐ行こうとする力が働いて言うことを聞かなかったけど、この『G430 MAX 10K』は、右や左を狙いたいという時のコントロールがすごくしやすいです。僕の手元の感覚ですけど、インパクトでボールを捉える時のフェースの位置の把握がすごくしやすいです」と、「G430 MAX 10K」のコントロール性能を絶賛。
最後に、2つの『10K』ドライバーの特性の違いに関して、ユージに聞いてみよう。
「ユージ的感想としては、テーラーメイド『Q10 MAX』は、とにかくまっすぐ行く。ピン『G430 MAX 10K』は安心して狙ったとこ行く、という違いを感じましたね。使い分けとしては、テーラーのほうは、飛ばすぞっていう時にいいかもしれない。要は飛ばすぞっていう時ほどあっちこっちに行きやすくなるので、そういう状況で勝手にまっすぐ飛ばしてくれるのは有難いですよね。ピンのほうは狭いコースやハザードが多いホールなんかで、絶対に左サイドは避けたいっていう時とかに、確実にコントロールができる安心感があります」
同じ「10K」のクラブでも、特性の差がかなり出た今回のユージの試打だったが、ドライバー選びの参考にしてみてはいかがだろうか。