ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は世界ランク1位でマスターズで2度目の優勝を遂げたスコッティ・シェフラーについて語ってもらった。
画像: マスターズで2度目の優勝を飾ったスコッティ・シェフラー(PHOTO/Blue Sky Photos)

マスターズで2度目の優勝を飾ったスコッティ・シェフラー(PHOTO/Blue Sky Photos)

今年のマスターズは、シェフラーの世界ランク1位らしい堂々たる勝ちっぷりで幕を閉じました。

タイガー以降、断トツの強さを見せているのがシェフラー。長期間にわたりゴルフ界に君臨したタイガーと比較するわけにはいきませんが、今回の2度目のグリーンジャケットはタイガーと"肩を並べる扉を開いた"とは言いすぎでしょうか。

27歳での複数回優勝はジャック・ニクラス、タイガー(ともに25歳)、セベ・バレステロス(26歳)に次ぐ4番めの若さです。今年は出場9試合で3勝、ジ・アメリカン・エキスプレスの17位タイが最も悪い成績で、他はいずれもベスト10フィニッシュ。ちなみに昨22-23シーズンは出場25試合で、ベスト10入りは優勝3回を含む20試合。予選通過は一昨年の8月から36試合連続で続いています。

さらに言えば昨シーズンは史上初めてSGのオフ・ザ・ティー、アプローチ・ザ・グリーンの両部門で1位に輝き、希代のショットメーカーであることをスタッツでも証明しました。あえて難を探せばパッティングでしたが、パーマー招待でマレットに替えてから優勝、優勝、2位、そしてマスターズでの優勝です。

3日目終了後、首位で迎える最終日の心構えを聞かれ、「エネルギー(Energy)と期待値(Expectation)のマネジメント」と答えました。しっかりと休んで栄養を取ってEnergy を蓄えておくこと(体)と余計なExpectation を持たずに目の前のことに集中すること(心)がまず大事で、そこを上手くマネジメントできれば自ずと技も良いものが出てくるということでしょう。

それを自分に言い聞かせ、最終日は「頭を下げてずっとプレーしていた」そう。結果やスコアに一喜一憂することなく目の前の一打に集中する、という意味でしょう。象徴するシーンが、18番グリーンに上がってきたとき。

すでに優勝は決まった状態でしたが、帽子を取ることもパトロンに手を振ることも笑顔を見せることもなく、ようやく表情をゆるませガッツポーズを見せたのが、ウィニングパットを決めた瞬間でした。

思えば2年前の優勝時には、首位で迎えた最終日の朝、緊張と興奮で泣き叫び、妻のメレディスさんの「あなたがいくつ打とうが、皆あなたを応援している」の言葉に励まされ、コースへと向かったと言います。

2年間でメンタル面も大きく成長。「妻が喜んでくれればそれでいい」という大・大好きな奥さんは第一子の出産で今回は帯同できず、結果を出せないのではと考えたのは取り越し苦労。代わりに親友たちと夜を過ごし孤独にならないようにしたそうです。

ショットの調子は万全ではなく、3日目終了後、コースに照明を点灯してもらい、キャディのテッド・スコット、コーチのランディ・スミスとともに、ひとり夜遅くまで練習。自分の調子や流れを見ながら押すところと引くところを上手くマネジメント。

横綱が初日から会心の相撲を取るわけではなく、15日目に向かって次第に自分の形に持っていくのと似ていますね。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年5月7&14日合併号「さとうの目」より

シェフラーの強さの秘密

This article is a sponsored article by
''.