O編 わきゅうはプロコーチだけど、プロキャディとしての経験も豊富だよね。そんなわきゅうが、スコアが100くらいの人のキャディをするとしたら、どんなアドバイスをするの?
坂詰 ま~、とにかく褒めちぎりますね。いいですよ、いいですよって。ミスしても、全然問題ありません。ナイスショットし たら最高ですって、ずーっと褒めてると思います。
O編 ははは、何それ(笑)
坂詰 いやぁ、スコアが100くらいの人って、ラウンド中に、いいことよりも悪いことを口にするほうが多い気がするんですよ。「今日は球がつかまらない」とか「パターが入らない」とか、「あのOBがなかったらなぁ」とか。
O編 まぁ、よほど上手くいってるときじゃないと、「今日はショットがいい」とか、「パットが入ってる」なんて言わないかもね。自慢してるって思われたくないっていうのもあると思うけど。
坂詰 でも、それってあまりいいことじゃないと思うんです。だって、悪いことを口にするっていうのは、ミスを引きずってる証拠ですからね。ミスにがっかりして、肩を落としたままプレーしたって、いいショットなんて出るわけないし、何より楽しくないじゃないですか?
O編 なるほど。だから、褒めちぎって、そういう状態にさせないようにするってことか。
坂詰 そうですね。悪いことばっかり考えて、口に出していたら、流れが悪くなるし、スコアもどんどん悪くなっちゃいますから。それを避けることで、結果的にいいプレーもしやすくなるし、いいスコアも出やすくなると思うんです。
O編 それはそうかもしれないね。
坂詰 プロだってシングルだってミスをするんだから、100くらいの人がミスをするのは仕方ないと思うんです。それなのに、一発ミスをすると、すごいがっかりしたり、自分を責めたりする人が多い。
O編 自分のミスに対して厳しいというか、ミスを受け入れられないんだろうね。
坂詰 でも、スコアが100の人は、練習場だって、なかなか10球連続でナイスショットを打てないですよね? まして、本番になれば、練習よりミスが増えるわけです。だから、そんなにがっかりしなくていいんですよ。
O編 具体的には、どんな言い方をするの?
坂詰 たとえば、ティーショットがちょっと曲がったり、当たりが悪くて飛ばなかったりしても、「いいじゃないですか。グリーンに向かって打てるんだから問題ないですよ」とか。ミスショッ
トが林とかバンカーに入っても、「池やOBじゃないからペナルティはないですよ。ラッキー。ついてますね」とか。
O編 最悪のミスじゃないんだってことを言葉にして、ミスを受け入れやすくするわけだね。
坂詰 馬場(咲希プロ)ちゃんのキャディをするときも、基本的には同じです。球が大きく曲がっても、「OBじゃないからいいじゃん」「グリーン狙えるから問題ないよ」「次のショット頑張ろうよ」って。
O編 そうやって言うことで、曲がったという事実から意識を遠ざけるってことかな?
坂詰 そういうことです。とにかく、ミスを引きずるのが一番怖いので、次のショットに意識を向けるようにしてます。
O編 ま、実際には、わきゅうがキャディに付くことはないんだから、自分で自分の心をコントロールするというか、そういう気持ちの持っていき方を覚えておくといいかもしれないね。
坂詰 そうですね。とにかく、自分で自分を褒めるといいですよ。多少ミスをしても、「ミスは誰でもするんだ。OBじゃないからいいよ」とか、「あそこにいくよりはマシだ。よかった」とか、「フェアウェイとラフの幅にあるからOK」と受け入れるんです。そのうえで、「ミスを繰り返さないように、次の1打に集中しよう」「いますべきことをやろう」と、気持ちを前に向けていけたらいいんじゃないでしょうか。
O編 プロでもミスはなくならないんだから、ミスとの付き合い方は訓練しておかなくちゃね。
坂詰 そうそう。プロでもミスはなくならないんです。ただ、ミスを減らす練習の仕方はあるので、覚えておくといいんじゃないでしょうか。
O編 ミスを減らす練習?
坂詰 ええ。その手段として、TPIではブロック練習より、ランダム練習を推奨してるんです。
O編 何それ?
坂詰 それは、次回詳しく説明することにしましょう。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年5月21日号「ひょっこり わきゅう。第64回」より