「RKB×三井松島レディス」でトーナメントレコードを更新し連覇を達成した岩井千怜。みんなのゴルフダイジェスト特派記者でプロゴルファーの中村修が抜群の安定感を見せたアプローチを解説。

強い雨と風の最終日に67をマークし2位に3打差をつけ連覇を達成した岩井千怜選手。2日目の硬く速いグリーンから最終日の飛ばなくなった天候、濡れて重くなったラフ、軟らかくなったグリーンへの対応力が見事でした。

FWキープ率は4日間を通して13位とそこまで調子が良かったわけではありませんでしたが、パーオン率は3位とアイアンでカバー。3日間でボギーは3つと平均バーディ率1位の選手がボギーを打たなければ限りなく優勝に近い存在になることを示しました。

画像: 「RKB×三井松島レディス」で今季2勝目をトーナメントレコードで飾った岩井千怜(写真/岡沢裕行)

「RKB×三井松島レディス」で今季2勝目をトーナメントレコードで飾った岩井千怜(写真/岡沢裕行)

スコアを崩さなかった要因になったグリーン周りのアプローチに注目してみます。最終日の9番パー4のグリーン奥から下りのラインを絶妙なタッチでチップインバーディを決めた場面では「54度で開いて打つか58度で打つか」の選択肢の中から58度を選びました。昨年に比べて「状況判断ができるようになった」と優勝会見で話しました。

画像: 9番パー4のグリーン奥からチップインバーディを決めた(写真/岡沢裕行)

9番パー4のグリーン奥からチップインバーディを決めた(写真/岡沢裕行)

「バンテリンレディスオープン」のアプローチ練習場での様子を見ながら写真を撮っていたので、千怜選手がどんな練習をしているのか紹介しつつ解説していきます。クラブはPWか9番アイアンと50度、54度、58度の4本を持って練習していました。

ピッチエンドラン、転がし、ロブ気味の球を上げる打ち方、ライのいい場所からスピンを効かせた寄せの4パターンをクラブを変えながら行っていました。まずはラフからのピッチエンドランから。

特徴的なのは左手のグリップです。ややフックグリップで握りフェースを返さないようにしています。テークバックからフォローにかけてフェース向きを変えずにコントロールしやすく手首の動きも抑えられています。上体だけでなく足の動きも自然と使えるようにスタンス幅も狭い点もポイントです。

画像: ピッチエンドランはややフックグリップで握りスタンス幅を狭くし、フェース向きを一定にしながら打つ(写真/中村修)

ピッチエンドランはややフックグリップで握りスタンス幅を狭くし、フェース向きを一定にしながら打つ(写真/中村修)

続いて転がして寄せるランニングアプローチではPWや9番アイアンを使います。短く持ちボール位置はやや右足よりに置き、狭いスタンス幅も左手をかぶせて握るフックグリップもピッチエンドランと同じです。

ライが悪かったり2段グリーンやピンまでの距離が遠い場合、グリーン手前にワンクッション入れてからグリーンに乗せる場合などを想定して練習していました。ピッチエンドランと同じようにテークバックで左腰がアドレスよりも少しだけ目標方向に動いています。そうすることで左サイドに軸ができ入射角がややダウンブローになり安定します。

画像: ランニングアプローチはPWや9番アイアンを使いスタンス幅は狭く、左手はフックグリップで握る(写真/中村修)

ランニングアプローチはPWや9番アイアンを使いスタンス幅は狭く、左手はフックグリップで握る(写真/中村修)

最後に58度を使用したロブショット。左手のグリップはスクエアかやや開いたウィークグリップで少し短く握っています。スタンス幅を広げ、腰を落としボールからも少し離れて立っています。背中が見えるくらいしっかりと上体も足の動きも使い、体全体の動きを連動させながら柔らかく振り抜いています。

画像: 58度を使ったロブショットはスクエアからややウィークグリップで握り、スタンス幅を広く腰を落とし体全体の連動させながら柔らかく振り抜く(写真/中村修)

58度を使ったロブショットはスクエアからややウィークグリップで握り、スタンス幅を広く腰を落とし体全体の連動させながら柔らかく振り抜く(写真/中村修)

練習日だけでなく、朝のスタート前、ラウンド後にも必ずといっていいくらい欠かさずアプローチ練習する姿を目にしています。先週もスコアを4つ伸ばし首位に並んだ2日目のラウンド後もしっかりとアプローチ練習に時間を割いていました。

こうした日々の練習の積み重ねができるのも練習環境の整ったレギュラーツアーならではですが、千怜選手はショットが安定していることもあり、パットやアプローチの練習の割合を多く取っているように感じます。

今大会では、ショットとアプローチやパットが噛み合ったこと、強い雨と風の中でも自分のプレーに集中できていたことが先週の岩井千怜選手の強さとなって表れていました。まだまだ今季の快進撃は続きそうです。

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