坂詰 今回は、TPI(※文末に解説あり)が推奨する練習方法を紹介したいと思います。基本的にTPIでは、ブロック練習よりも、ランダム練習のほうが効率よく上達できると考えているんです。
O編 聞き慣れない言葉だね。まずは、ブロック練習とランダム練習の違いについて教えてよ。
坂詰 ブロック練習というのは、同じ番手を打ち続ける(番手を固定する)練習。ランダム練習というのは、1球ごとに違う(ランダムな)番手を使って打つ練習のことです。
O編 あぁ、そういう意味か。でもさ、日本にも「練習のときには、同じ番手を打ち続けるより、なるべく番手を替えて打ちなさい」って教えるプロは結構いるよね?
坂詰 そうですね。ただ、TPIの場合、その理由の説明の仕方が面白いんですよ。
O編 どういうこと?
坂詰 たとえば、7× 13 はいくつ? という計算問題があったとしますよね。答えは91 になるわけですが、この7 × 13という問題を100回解くのと、8× 11 、6× 15 、5× 18 というように、毎回違う問題を100問解くのと、計算力が付くのはどっちだと思いますか?
O編 そりゃ、違う問題を100 問解くほうでしょ?
坂詰 ですよね。だって、同じ問題を100回解いても、その答えを覚えるだけで、計算力が上がることはありませんからね。
O編 ゴルフも同じってことか。
坂詰 ええ。TPIでは、そういう説明の仕方をしています。計算力を上げるのと同じって言われるとわかりやすくないですか?
O編 うん。わかりやすい。ただ、番手を替えて練習したほうがいいっていう話をすると、「スウィングを固めるときには、同じ番手で同じ動きを練習したほうがいい」とか、「苦手な番手を克服するときには、同じ番手で練習したほうがいい」って、主張する人が多いんだよね。
坂詰 それが、そうでもないんですよ。たとえば、7番アイアンが苦手な人がいたとしますよね。その人が、7番が上手くなりたいと思うと、7番ばかり打ってしまったりするんですけど、実は毎回違う番手を使って練習したほうが7番を打てるようになるんです。
O編 そうなの?
坂詰 実際、TPIでは、実験をして、データを取っているんです。まず、グループを2つに分け、片方のグループには7番アイアンだけで100球を打たせ、もう片方のグループには、5番アイアンからPWまでの6本を使って100球を打たせます。
で、その48 時間後に、7番アイアンを10 球ずつ打たせたところ、後者のグループのほうが、明らかに結果がよかったんだそうです。
O編 そんなデータもあるのか。そりゃあ、興味深い……。ドライバーの調子が悪いと、ドライバーばっかり打っちゃったりするけど、FWやUTも打ったほうがいいってことだもんね。
坂詰 もちろん、ナイスショットを追い求めて、ひたすら同じ番手で打ち続けるのが楽しいというのであれば、それはそれでいいと思うんです。ゴルフは趣味ですから。でも、効率よく上達したいのであれば、ランダム練習のほうが効果的なんです。
O編 考えてみたらゴルフは道具が14 本もあるし、コースに出たら同じ番手を打ち続けることなんてないんだから、ランダムに打つ練習が必要なのは当たり前なんだよね。毎回違う番手で打つのは、ちょっと面倒くさいけど(笑)。
坂詰 1球ごとに番手を替えるのが面倒なのであれば、2~3球に1回でもいいと思うんです。あとは、1球ごとに目標を変えて打つのもいいんじゃないでしょうか。
O編 番手じゃなくて、目標をランダムにするんだね。
坂詰 そのとき、同じ打席でも、右にある目標のほうが狙いやすい人と、左にある目標のほうが狙いやすい人がいると思うんです。そういうものに対応するという意味でも、この練習は効果があると思います。
O編 練習のときには、同じ番手で、距離や高さや球筋(ドローやフェード)を打ち分けなさいって、アドバイスするプロも多いよね。
坂詰 そういう練習も、考え方は同じですよね。とにかく、同じ番手を持って、同じところを狙い、同じ球を打とうとする練習をするより、違う番手を使ったり、違う目標を狙ったりしながら、それに対応する練習をしていくほうが、上達は早いということは覚えておくといいんじゃないでしょうか。
●TPIとは?
TPIは、Titleist Performance Institute(タイトリストパフォーマンス研究所)の略称。スウィングメカニズム、クラブフィッティング、身体の特性や構造など、あらゆる面から、どうしたら効率のよいスウィングができるのか。そのためにはどんなエクササイズやトレーニングをしたらいいのか、などを研究している。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年5月28日号「ひょっこり わきゅう。第65回」より