5月某日、6月最終週に開催される資生堂レディスオープンに向けて、会場である戸塚カントリー倶楽部で、プロキャディによるハウスキャディへの研修会が行われた。その研修会を取材したので「みんゴル」読者へお届け!

ベテランプロキャディ森本氏の技術を戸塚CCのハウスキャディへ

今年も6月最終週に戸塚CCで資生堂レディスオープンが開催される。その試合を約1カ月後に控えた5月某日、「よりよい体制で大会運営を」という思いから戸塚CCのハウスキャディ向けに研修が行われた。講師として登壇したのは日本プロキャディー協会代表理事で現在まで37勝に貢献しているプロキャディの森本真祐氏と、通算7勝を挙げた原田香里プロ。参加したのは戸塚CCのハウスキャディ約50名。

画像: プロキャディの森本真祐氏

プロキャディの森本真祐氏

講師/日本プロキャディ協会代表理事・森本真祐(もりもと・しんすけ)

学生時代、ゴルフ同好会に所属。アルバイトでトーナメントのキャディをする機会があり、その楽しさに魅せられてプロキャディの世界へ。
2019年、キャディの若年層育成や中堅層のセカンドキャリア創出を目指し、「出口もあって入り口もある、そんな環境を整えていきたい」という思いで日本プロキャディー協会を設立した。

現在まで約26年間プロキャディとして活躍し、その間に桑原克典、谷口徹、アン・ソンジュ、畑岡奈紗などのバッグを担ぎ、延べ優勝回数は37回を誇る。

神奈川県 戸塚カントリー倶楽部。1961年開業。

資生堂レディスオープンの会場となる西コースは井上誠一氏が設計。日本プロゴルフマッチプレー、日本オープン、日本女子オープンなどのメジャー大会が開催されたこともある名門コース。

2019年から資生堂アネッサレディスオープン(資生堂レディスオープンの前身)の開催コースとなり、毎年多くのギャラリーを迎えている。

画像: 神奈川県 戸塚カントリー俱楽部

神奈川県 戸塚カントリー俱楽部

キャディ研修は、室内での「座学」と実際にコースに出ての「実務」の2つの軸に沿って行われた。森本氏が帯同中に意識していること、原田プロが試合中にされて嬉しかったこと、嫌な印象を持ったことなどをシチュエーションごとに語ったほか、ハウスキャディの面々からも様々な質問が飛び交い、賑やかな雰囲気で、しかしとても真剣な空気を保ったまま進められた。

画像: 約50名のハウスキャディが研修に参加した。

約50名のハウスキャディが研修に参加した。

早朝は大雨に降られコースでの研修実務の催行が危ぶまれたが、なんとか天気が回復して資生堂レディス開催コースである西コースへ。

原田プロに森本氏が、戸塚CC所属プロ2人それぞれにハウスキャディが帯同という形で、実際にプレーをしながら進められた。基本的な所作はもちろん、雨天を想定し傘をさしながら選手のケアをするトレーニングも。大会当日は何が起こるかわからないので、あらゆることに対処できるようにと準備は入念だった。

研修に参加し、今回初めて資生堂レディスに携わるというハウスキャディ2人に話を聞けた。キャディ歴16年(うち戸塚CCは2年)のベテランキャディは「通常の業務に比べて意識しないといけないところがいっぱいありました。例えばガードバンカーをならすときの音にも気を配って、グリーン上でプレーに入る選手がいたら一度手を止めないといけなかったり、雨のときにはギリギリまでボールの上に傘をさしておかないといけなかったり。とにかく新鮮で、全然違うなって。やっぱり今日見て勉強したことと実際にやるのとではまた違うのかなって思うので、頑張らなきゃなと思いました」と話し、またキャディ歴2年の若手キャディは「いつもお客様4人に対して1人なので、試合はマンツーマンだし大丈夫だろうと思ったんですが、今日見ていて常に瞬時の判断が必要なんだなと実感しました。森本さんを見ていると、やることも多いのにすごく動きがスムーズで。これがベテランか、と衝撃でした」という。

一般ゴルファーからしたらハウスキャディもある種プロではあるが、そんな彼女たちから見てもトーナメントで担ぐプロキャディの動きのなめらかさと判断力はすごいと大絶賛。

画像: 移動中もハウスキャディからの質問が飛び交っていた

移動中もハウスキャディからの質問が飛び交っていた

もし今大会で選手に帯同することがあるとしたら? との質問には、「今日学んだことをただただ忠実にこなし、できるだけ選手に寄り添って一生懸命にまわりたいですね」と不安を垣間見せながらもやる気に満ちたコメントがあった。

戸塚CCでキャディ研修が行われたのは今年で2回目。森本氏は女子ツアーの合間を縫っての参加だった。毎週日本各地でバッグを担ぐハードスケジュールの最中ではあるが、キャディ研修について「もっと各地で広がっていってほしい」と、キャディの人材育成を計る森本氏ならではのコメント。

キャディを務めるにあたって、日々忙しいなかで体調管理に気を配ることはもちろんだが「人と人とのことなので正解がないことが難しい。担ぐプロやシチュエーションによって左右されるし、同じことは起こらないので常に周りを見てアンテナを張って、臨機応変に対応することが求められる」と“難しさ”を語った一方、「ロープの中だけのわくわくドキドキ感がある。それに病みつきで、優勝するともっと気持ちが良くて。あれをもう一度! と思っているうちにここまで来ました。こんなに刺激的なことはないと思っています。仕事が大好きなので、身体が動く限り担いでいたいですね」と氏の感じるキャディの魅力についても笑顔で語った。

画像: 研修が終わってからも、個別に質問対応する森本氏。

研修が終わってからも、個別に質問対応する森本氏。

プロキャディ業界の展望について尋ねると、「将来的には“小学生のなりたい職業ランキング”にプロキャディという職業が入ってきて欲しい」と話し、現状は整備されていない「教育機関もこれから構築していきたい」と業界の拡大に意欲的。現状はオフシーズンの太平洋クラブ八千代コースで年に1回キャディ研修会を行っているとのことで、多く参加者を募りたいとコメントした。

プロの試合には欠かすことのできないキャディ。まだまだシーズンが続くが、選手のプレーに留まらず、帯同キャディとのやり取りやその仕事振りに着目してみるのも新たなツアー観戦の楽しみのひとつになるかもしれない。

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