坂詰 ボク、基本的に女子選手を指導することが多いので、男子ツアーに行くことがほとんどないんですが、今季は3試合ほど見てきたんですよ。それで思ったんです。男子は面白いなって。
O編 どういうところが?
坂詰 たとえば、技術的な部分で言ったら、女子よりも男子のほうが圧倒的に上手い。これは女子のレベルが低いって言ってるわけじゃないですよ。でも、男子ツアーに行くと、女子ツアーでは見られない球が見られる。「え? そこから止められるの?」みたいな。
O編 あぁ、それはあるよね。
坂詰 ボクが、片山(晋呉)プロのキャディとしてツアーを見ていた2000年頃と比べても、ツアー全体のレベルが上がったなぁって感じがします。
O編 道具や計測器の進化の影響も大きいよね。
坂詰 間違いないですね。昔は、自分の感覚だけが頼りでしたからね。調子が悪くて球が曲がっているときにも、その原因がどこにあるのか、正確にはわからなかった。
O編 プロも、選手同士でチェックしながら直したりしてたよね。目のいいプロは人気だったもん。
坂詰 それでも、人間のすることだから、その判断は曖昧なわけです。原因が曖昧だと、なかなか先に進めないじゃないですか。その点、今はトラックマンやモーションキャプチャーのような計測器があるから、球が曲がる原因がひと目でわかっちゃう。
O編 それがわかると、欠点を直しやすいし、不調も長引かないよね。
坂詰 ただ、ボクは、そういう科学的なデータが絶対だとは思ってないんです。ゴルフは人間がやることなので、数字やデータだけでは上手くいきませんから。
O編 自分の軌道や、インパクトロフトやフェース向き、入射角度を、理想の数値に近づければ結果が出るってもんじゃないってことだよね。
坂詰 もちろん、それで上手くいく人もいるかもしれませんよ。でも、人にはそれぞれの感覚があるので、理想と言われる動きに拒否反応を起こす人もいるわけです。そうすると、練習で数字は揃ったのに、実戦では曲がるなんてことになりかねない。
O編 データを妄信していると、思わぬ落とし穴があるってことか。
坂詰 ええ。でも、一定の基準で計測されたデータがあると、選手が納得して練習に取り組みやすいんですよ。「自分は今こうなっているからこの球が出るのか」ということがわかれば、これからすべきことがわかりますからね。
O編 その積み重ねが技術の向上につながったということだよね。
坂詰 そのうえ、道具は進化しているし、トレーニング法も確立してきているわけですからね。昔よりも上手くなるのは自明の理だと思います。
O編 男子ツアーが面白いと思ったのは、技術面だけ?
坂詰 いやいや、やっぱりすごいのは飛距離とパワーですよ。プロスポーツって、普通の人ができないことをやってくれるのが魅力じゃないですか。メジャーリーグの大谷選手だって、あのスピードボールもホームランも桁外れだから見てみたくなるわけでしょ?
O編 昔に比べると、プロはホントに飛ぶようになったよね。
坂詰 たとえば、蟬川(泰果)プロなどは、ツアーでも飛ぶほうだと思いますが、河本(力)プロが当たると30Yくらい置いていかれるって言ってましたからね。一見の価値があるんじゃないでしょうか。
O編 トーナメントに行ったらココは見てほしいってところ、ある?
坂詰 本戦はもちろんなんですが、おすすめは練習場ですね。プロがどんな球を打つのか、どんだけ飛ぶのか、よぉ~くわかると思います。あとはアプローチの練習も必見です。これは会場によって、近くで見られるところと、そうでないところがあるんですが、近くで見られるなら、じっくり見てほしい。
O編 どんなところを?
坂詰 プロの場合、アプローチはあらゆる状況をイメージして練習しますからね。その多彩な技を見るだけでも面白いはずです。たまには、本戦ではめったに使わないロブショットやスピンショットも見られますし。そういうのは、レベルが高すぎて参考にはならないかもしれませんが、それも含めて楽しめるんじゃないでしょうか。
O編 実際に見て、マネして、できなかったときに、プロの凄さがわかるかもね。
坂詰 男子ツアーは、いま世代交代が進んで、世界でも戦える選手が出てきていますからね。読者のみなさんも、ぜひ一度ツアー会場に行って、男子プロの技術やパワーに触れてみてはいかがでしょうか。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年6月25日号「ひょっこり わきゅう。第69回」より