全米オープンの舞台のなかでももっとも難しいといわれるパインハーストNo.2でブライソン・デシャンボーが、10年ぶりのメジャー勝利に指先がかかったローリー・マキロイを土壇場で下し栄冠に輝いた。激しいガッツポーズのあと空を仰いだのはそこにいる憧れの先輩ペイン・スチュワートに報告と感謝を伝えるため。優勝カップを愛おしそうに抱きしめた彼にギャラリーは大興奮。かつてのお騒がせ男はいつの間にかヒーローになっていた。

「人生最高の瞬間」を迎えた彼はまず父の日の優勝について触れ亡き父ジョンさんに敬意を表したあと「これはペイン・スチュワートに捧げる勝利でもあります」と99年にここでメジャー勝利を飾った4カ月後に不慮の飛行機事故で亡くなったスチュワートに思いを馳せた。

画像: 2回目の全米オープン制覇を成し遂げたブライソン・デシャンボー

2回目の全米オープン制覇を成し遂げたブライソン・デシャンボー

「僕がSMU(サザンメソジスト大学)を選んだ理由も彼。ハンチングを被った理由も彼。すごいですよね」というとオマージュを込め用意していた紺色のハンチングを被った。99年にスチュワートが優勝したときと同じ色だ。

試合中被れなかったのはLIVのキャップでプレーしなければならないという契約上の問題があったから。実はキャディバッグにはこの紺色のハンチングをぶら下げて戦っていた。

中盤の5ホールでマキロイが4バーディを奪って通算8アンダーまで伸ばし優位に立った。メジャーの最終日、勝つべき選手が見せるゾーンに入ったようなゴルフ。10年ぶりの勝利(メジャー)に手がかかったように見えた。

画像: ローリー・マキロイは1打及ばず、10年振りのメジャー勝利を逃した

ローリー・マキロイは1打及ばず、10年振りのメジャー勝利を逃した

対するデシャンボーはこの日の朝、練習場でドライバーのフェースにひびが入りスペアクラブでプレーした。それもあってティーショットが荒れまくった。しかし怯まずに耐え攻めることを恐れなかった。

流れが変わったのは15番。それまで長いパットを次々に沈めてきたマキロイが短いパーパットを外しボギー。最終ホールでもアプローチを70センチに寄せながら下りのパットがカップの右をすり抜けパーをセーブできず1打足りずに涙を飲んだ。

デシャンボーも18番のティーショットは大きく左に曲がり木の根が張り巡らされたウェイストエリアへ。パーを逃せばプレーオフに突入する状況で2打目はグリーン手前の難しいバンカーへ。ここからパーをセーブした選手は4日間を通して誰もいない。

しかし彼は果敢にピンを狙い手前1.3メートルに寄せ勝ち切った。

画像: 18番ホール、グリーン手前のバンカーから見事に寄せ切りパーセーブし、勝利を決めた瞬間の1枚

18番ホール、グリーン手前のバンカーから見事に寄せ切りパーセーブし、勝利を決めた瞬間の1枚

20年の全米オープンはコロナ禍のため無観客。6打差の圧勝を飾ったのにラフをものともせず飛ばしてコースを力をねじ伏せるスタイルに「ゴルフを違うものに変えてしまった」と逆にベテランから非難を浴びた。

今回は違う。緊迫した優勝争いの最中でも体の不自由なファンにサインをし両手で手を握る。先月の全米プロで準優勝したときも熱心にファンサービスする姿に待望論が巻き起こった。大ギャラリーを味方につけた彼は「U.S.A」コールで歓迎された。

デシャンボーをPGAツアーで観たいという声は今後さらに高まるだろう。

撮影/Blue Sky Photos

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