風に翻弄されるリンクスコース
ポートマーノックGCは、アイルランドの首都ダブリンに位置するリンクスコース。ほとんどのホールでフェアウェイ中央が高く、両サイドが低い形状になっているうえに地面がかなり硬いので、狙ったところに落としてもフェアウェイに止まる可能性が低くとても難しいコースでした。初日から3日目は平均6メートル、4日目は14メートルの強風が吹き、300ヤード地点にあるバンカーまで3番ユーティリティや3番ウッドで届いてしまうほど。番手を下げてもかなり飛距離がでてしまうのが厄介でした。
グリーンも硬く仕上がっていて、着弾してしまうと必ずグリーン奥。たとえば150ヤード残っていたとしたら120~130ヤード地点に落とす必要がありましたが、うまく落とせても傾斜があってバンカーが待ち受けていて、相当狭いエリアを狙っていかないといけないシビアなコースでしたね。グリーンの外に落としてどうやって転がってピンに寄っていくのか、この計算をするのは愛桜にとって今までにない経験でした。
OBはほとんどないのですが、ファーストカットの奥のラフは膝まで伸びているし、その奥にはヘザーと呼ばれる植物が生い茂ったエリアがあるホールも。このヘザーに入れてしまうと見つかってもショットすることはなかなか難しく、ギブアップするかドロップするしかない選手が多く見られました。
風、傾斜、その先に待ち受けるハザードが利いていたので、かなり狭く感じるコースだったなという印象です。特に18番はフェアウェイが極端に湾曲していて、右サイドには大きなバンカー、左サイドには剛ラフと、フェアウェイキープできた人がほとんどいないようなホールでした。もう運でしかないというか、みんなよくやっているなと感心しましたね。
バンカーは全てポットバンカーなので入れたら出すだけ、ラフも深くて入れたらだすだけ、フェアウェイも傾斜と硬さでどうしようもなく、ナイスショットがナイスショットではなくなってしまう……、全ての要素がタフなコースでした。
日本のアマチュアも海外で通用する!?
そんなコースで、海外の選手は“ハザードに捕まったら捕まったで仕方ない”というスタンスなのか、かなり思い切りのいいショットで狭いエリアを狙ってきていました。特にマッチプレー2戦目で当たった、世界アマチュアランキング1位のロッティ・ウオード選手。風の使い方も上手で、風速14メートルの中バンバンドライバーを打って、風に乗せたり、風にぶつけたりとすごく上手だったなと。アプローチで球を上げていなかったのも印象的です。風が強かったというのもありますが、アプローチは基本転がしで、グリーン周りからパターを使ってきたり。夏場の日本ではそういうシチュエーションはあり得ないけど、その引き出しは持っておいてもいいよね、と話していました。
ただ、技術的なものや飛距離に関しては海外の選手が特段優れているなという印象は持ちませんでした。スコアをまとめてきた選手たちは会場への慣れがあるから卒なくこなしているんだなというか。むしろ技術面は日本のアマチュア選手たちのほうが上手かったんじゃないかな。コースでの練習を重ねて慣れるチャンスさえあれば、日本のアマチュア選手も十分海外で通用するだろうと感じました。この全英女子アマも、惜しくも2回戦敗退となってしまいましたが、コースへの慣れがあればもっといけたなという手応えは親子2人で感じましたし、例えばアメリカのコースはここまでトリッキーではないので、海外勢相手でももう少し戦えるのかなと思いました。
今回は愛桜にとって初めての海外遠征でしたが、緊張や不安のなかいいプレーができていましたし、海外のコースと選手を見られたこと、多国籍のなか1人ポツンと乗り込んで、決して調子が良かった訳ではないなか腕試しをできたこと、本戦1回戦まで勝てたことはかなりの財産と自信になったんじゃないかと思います。頭を抱えながらではありますが、楽しんでプレーしていましたし、海外選手のようにミスを怖がらない、ビビらないで打っていける度胸も必要なんだと感じたと思います。
今年はプロテストもありますが、この海外遠征で得た財産をもとにこれからの試合でも楽しみながら経験を積んでいって欲しいですね。
全英女子アマでの齋藤愛桜の成績
予選
8オーバー30位タイ(1日目:4オーバー 31位タイ、2日目:4オーバー 30位タイ)
マッチプレー1回戦 vs ベントレー・コットン(アメリカ)
1up(17番時点で1up、最終ホールで両者ともにボギーで勝利)
マッチプレー2回戦 vs ロッティ・ウオード(イングランド)
6 & 5(5ホールを残してロッティ・ウオードが6up、敗退)