『RMX』ではなく『inpres』!?
藤田といえば、言わずと知れたヤマハの看板プロ。そのヤマハには2つのブランドがあり、ひとつがいわゆるプロモデルの『RMX』で、もうひとつが“やさしさ”を謳う『inpres』だ。プロモデルの『RMX』には看板プロである藤田の意向が多分に含まれているが、その『RMX』は昨年『RMX VDシリーズ』を発売したばかり。周期でいえば、今年でるなら『inpres』のはず。
現場にいたメーカーの担当者に確認すると、「発表前なので詳細は言えませんが」とのことだが、クラブを見せてくれた。ヘッドのソール部には『INPRES DRIVESTAR TYPE/S』の文字が。やはり現行モデルの『inpres ドライブスター』の後継モデルということで間違いないだろう。
では、歴代『RMX』を使い続けてきた藤田がなぜ、このタイミングで『inpres』をテストしているのか。藤田がいうには「実はいま発売中の『inpres ドライブスター』も3~4試合で使用しているので、はじめて『inpres』を使用するわけではないです」と前置きがありつつも、「うち(ヤマハ)のクラブは耐久性だったり、安全性だったり、信頼性だったりを守るあまり、外国ブランドのように反発係数の上限ギリギリを狙ったヘッドを作ってこなかった。だから、いままでのモデルでは自分が打ってもスマッシュファクターは1.48とかが最高で、いつもは1.45くらいがアベレージ。他社のクラブを打ったら1.5が出るのにです。でも、今回の『inpres』だと、1.5が必ず出る。1.51、1.52という数値もありました。2週間前くらいに初めて打ったのですが、それに一番驚いて、すぐに『まずはR&Aの認可が下りなくても、横浜ミナトチャンピオンシップのプロアマで使いたい』と打診しました」という。
弾道について聞いてみると「いままでのクラブは飛行機が離陸するような弾道で、自分はそういう弾道が好きなんですが、この『INPRES』は打ち出しから高く、棒球みたいに飛んでいきます。いままでにない弾道ですが、数値がいいので使ってみたいと思いました」。
なお、先ほどの未発表『INPRES』のフェース面を見ると「OCTA ANGLE CARBON FACE」の文字が。それについて藤田に尋ねると「自分がテストする時の暗黙のルールとして、新しいクラブを試打する際にはクラブの説明は受けないということを徹底しています。それは、真っ白な状態で打ってみて、どう感じるかが重要だからです。説明を聞いてしまうと、フィルターが掛かってしまい、もう『説明を聞いたとおりのクラブ』にしか見えないし、打球もそれに引っ張られてしまうんです。それで、今回の『INPRES』も同様に、何も聞かずに構えて、『クラウンはやっぱりカーボンなんですね』という感じで打ったら、数値も打感も良くて。何気なくフェースを見たらその文字(OCTA ANGLE CARBON FACE)がありました。自分も詳しくはわかりませんが、この素材のおかげでスマッシュファクターがかなり向上していると思います」とのこと。外国ブランドではテーラーメイドがカーボンフェースを採用しているが、国内メーカーとしては初となる技術だろう。ちなみに、OCTA(オクタ)を調べてみると、「8を表す数詞接頭語」というので、8に関する数字が関係しているカーボンフェースということだろう。
今平周吾も「使ってみたい」と話す
また同じく看板プロである今平周吾にも話を聞くと、「先週、プライベートでこのクラブ(『INPRES』)を使用してみました。『INPRES』モデルを使用するのは現行の『inpres ドライブスター』を試打したくらい。これまでの『inpres』はやさしさはあるのですが、その分、球が上がってしまって飛距離に納得がいきませんでした。それが今回のは、やさしいのに球が前に行く。言ってみれば高弾道の低スピンで強い球で飛んでいくイメージです。明日のプロアマで試してみて、よければ今週から使いたいですね」という。
ちなみに、「ヤマハってカーボン加工が得意だっけ?」と疑問に思うかもしれないが、調べてみると、1980年代はじめに世界で初めてカーボンコンポジットヘッドの開発に成功し、商品化したのがヤマハ。そういう意味では、「元祖」が満を持して「新製品」を業界に投入したというわけだ。
プロモデルでない『INPRES』を藤田、今平が試合で使うのか。木曜の初日で確認したいと思う。