選考・文／吉川丈雄
1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースのスペシャリスト。現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動
【新潟・赤倉ゴルフコース】眼下に広がる景観には建造物なく圧倒される
1934年鉄道省観光局は、ウィンタースポーツで外国人誘客を試み、国際スキー場構想を発表し、妙高高原を指定した。新潟県新発田市の出身で、帝国ホテル、川奈ホテルを経営していた大倉喜七郎は「外国人誘致には標高3000尺（約900メートル）以上の高さと眺望が必要」と主張し、妙高山中腹の現在地にホテル建設を計画。ゴルフ場が造られたのは戦後の1963年だった。
●住所／新潟県妙高市田切216●コースプロフィール／18H・6481Y・P72●開場／1963年●設計／井上誠一、岡田和男(写真は15番ホール・404Y・P4)
最初は大成建設により9ホール、3232ヤード、パー36が完成し、1971年に井上誠一が9ホールを追加して18ホールとなった。ホテルからは北アルプスの山並みが眺望でき、180度パノラマの景観が楽しめ、一度見たら忘れられない
写真左上/ホテルの外観は川奈ホテルを彷彿させる。後方の山は妙高山で標高2454メートル。写真右上/雲海を見下ろす赤倉観光ホテルの温泉。写真右下/外国人の誘客を考えていたことからパンフレットは英文だった。写真左下/創業者の大倉喜七郎男爵（右から2人目、3人目は朝香宮鳩彦）
【茨城・大みかゴルフクラブ】落ち着いた雰囲気が漂うコースに一度は身を委ねてほしい
日立製作所の創業者、小平浪平は1936年に従業員の健康管理、外国顧客の接待のため18ホール、6650ヤード、パー74の日立GCを完成させた。設計は、那須GCを手掛けて間もない井上誠一、高床式寝殿造のクラブハウスは東大安田講堂を建築した岸田日出刀によるものだった。戦況によりコースは解散、農地化され、戦後はわずかに残ったハウス周辺に3ホールからスタート。
●住所／茨城県日立市大みか町6-19 -22●6H・2028Y・P24●開場／1936年 ●設計／井上誠一(写真は2番ホール・381Y・P4)
1953年に6ホールになったが、1960年に6万7000坪を買い戻し、1962年8ホールとした（現在は6ホール）。日立製作所の福利厚生施設だが、予約すれば誰でもプレーできる。
戦後の18ホール時代は海に近く景観に優れていた
【神奈川・湯河原カンツリー倶楽部】真鶴半島と相模湾の絶景を堪能、貴重なハウスでくつろぐ
湯河原の山裾に展開するコースは、当時の吉浜町長の依頼による造成だった。現地を検分してレイアウトを作製したのは赤星四郎だったが、実務面はクラブハウス建設を担当した東大教授の岸田日出刀が行った。
●住所／神奈川県足柄下郡湯河原町吉浜2020●コースプロフィール／18H・6251Y・P72●開場／1955年 ●設計／岸田日出刀(写真は3番ホール・348Y・P4)
赤星は「理事長は南郷三郎に頼め」と助言。南郷は明治時代から神戸港の発展に尽くした財界人で舞子CCを自費で造ってしまったほどの人物。日本ゴルフ協会最初のチェアマンでもあった。コースは赤星四郎、岸田日出刀、南郷三郎の共作ともいえる。クラブハウスも趣があり円形屋根のレストランは鑑賞に値する。
クラブハウスは建て替えられたが、レストランとして使われている丸屋根部分の建物は保存されている
※2024年7月23日号「週刊ゴルフダイジェスト／隠れた宝石コース」より一部抜粋
スペシャリスト吉川丈雄が選ぶ国内外の“名物ホール”
