顔、打感はツアーレベルのまま
“やさしさ”の限界に挑む
クリーンなルックスかつやさしい性能がトレンド
今年はアイアンが豊作だ。中でもプロが使用するようなアスリートモデルに秀作が目立つ。アスリートモデルである以上、弾道をイメージできる"顔のよさ"を持ち、距離感を育む"打感の良さ"が備わっていることは大原則。そしてここ数年は、そこに"やさしさ"をプラスできるか、これが各メーカーがしのぎを削っているポイントだ。そのためには、アイアンの小さなヘッドの中にいかに多くのテクノロジーを盛り込むかの勝負になるが、その点においてテーラーメイドが一歩先を進んでいることは間違いないだろう。そして今年、満を持してプロや上級者から注目を集める『P770』と『P7CB』が登場する。
まずは『P770』。こちらは軟鉄鍛造のボディとクロモリ鋼L型フォージドフェースを組み合わせた中空アイアン。前作同様、ロングアイアンからショートアイアンまで1つずつ内部構造を変化させ、最適な重心位置、そして最適な弾道を実現。ロングアイアンには寛容性、球の上がりやすさ(高弾道)、ミドルアイアンには再現性の高さ、ショートアイアンには高いスピン性能を、それぞれ持たせている。メーカーの言葉を借りれば、「P770自体が"コンボアイアン"の発想」なのだという。また中空構造でありながら、ロフト設定や重心位置の管理により、プロや上級者が懸念する"飛びすぎる"ことが起こりにくい。加えて今回、フェースのどこに当たるとどうヘッドがゆがむのか、それによってどう打音が変化するのかを徹底的に解析。巷の中空モデルとは一線を画す落ち着いた打感、打音を実現している。
一方の『P7CB』。こちらはP7MCと置き換わる新モデルだ。従来のMCは"マッスルキャビティ"の頭文字で、性能的にもマッスルバックに近く、「かっこいいけど難しい」という声も聞かれた。そこで新たにCBに変えたことで、性能的にもぐっとやさしくなった。ご覧のように、ソール部分を機械加工によってくり抜き、そこに異素材を装着。6番から上はタングステンとセラミックを、7番から下はセラミックだけを入れ、寛容性の向上や最適な重心設計を突き詰めた。またヘッドはS25Cを2000トンプレス機を使用して5回鍛造するという手間のかけようだ。鉄が高密度になり深みのある打感を実現するとともに、ヘッド一つ一つの仕上がりの完成度が上がる。バックフェースにメタルTマークのロゴがあるが、これは削り出しではなく、鍛造で浮かび上がらせたもの。この立体感を見ても鍛造技術の精度の高さがうかがえる。
従来テーラーメイドのP700シリーズアイアンは、P7MB、P7MCの性能が近く、P770との差が大きかった。しかし、P7MCから『P7CB』になったことにより、アスリート志向のゴルファーの選択肢が広がった。飛距離、寛容性、直進性が欲しいプレーヤーは『P770』、軟鉄鍛造の深い打感、そして操作性、かつやさしさも求めるプレーヤーは『P7CB』。ツアーレベルの顔、打感、そして彼らが求めている真の"やさしさ"をきっと体感できるだろう。
シャープなヘッドに秘められた
圧倒的テクノロジー
P770
軟鉄鍛造ボディの中空アイアン。前作同様、番手別の最適な重心設計が施されている。今回はツアー選手も違和感なくバッグインできるよう「ヘッド形状」と「打球音」などが徹底的に見直されている。
P770内部構造(6I)
クリーンな形状のヘッドに秘められたテクノロジー。8番から上はタングステンにより寛容性と球の上がりやすさを、また中空の弾く打感を抑えるためウレタンフォームを充填。ロングアイアンはリーディングエッジを地面に近づけて球を拾いやすくしている
P7CB
軟鉄鍛造モデル。ソール部分をくり抜いて異素材を装着し、寛容性の向上、重心コントロールを実現。従来以上に心地よい打感を追求し、P770同様に音の解析も徹底。プロが次々に乗り換えているモデルだ (※R・マキロイ、C・モリカワはロングアイアンを使用中)
P7CB内部構造(6I)
6番から上はタングステンも入れ、球の上がりやすさを考慮。7番から下は軽いセラミックのみで、これにより重心が低くなりすぎず、相対的に質量がトウとヒールに分散されるので、慣性モーメントの増大にもつながる。打点の裏を台形に厚くしている点も打感の向上に寄与。
※#3‐#6 タングステン&セラミックコア搭載 #7‐PW セラミックコアのみ搭載
試打インプレッション
P770はP7CB同様に高さとスピンできっちり止まる
この顔つきでここまで上がって飛ぶのはズルい
顔が良くなりましたし、中空とは思えない形状やサイズ感。飛距離も「あ、それぐらい飛んでくれると助かる」という、理想の飛距離がイイ感じなんです。
P7MCに比べてP7CBのやさしさは別次元の進化
P7MCに比べて段違いにやさしい。打感はすごくソフトで弾道の操作もしやすい。顔もつかまる雰囲気で安心感があります。コレ、本気で使いたい!
同じ33度のロフトということもあり飛距離は同等、P7CBのほうが若干スピンが多く入る。「P770は若干弾く感じがあって寛容性も高い。それでも食い付き感も感じられて操作性がある。両方ともスピンは程よく、それ以上に高さが出るので落下角度が大きく、しっかり止まる球になります」
プロ御用達この“コンボ”いただきだ
飛距離、再現性のギャップがどこか見極める
『P770』と『P7CB』の形状は非常に似ている。ブレード長はP770が770ミリなのに対し、P7CBは1ミリ弱短いだけ。オフセットも輪郭もほぼ同じ。バウンス角やソール形状の違いはあるものの、これは2モデルを"コンボ"で使用することを想定しているからだ。現にツアーでもロングアイアンだけ寛容性の高い、また楽に上がるモデルにすることはもはや常識。
今回のモデルも1本からカスタマイズできるオプションがある。「コンボする際には、何番で何ヤード飛ぶのかを頭に入れて、飛距離のギャップが詰まってしまう箇所、あるいはミート率が下がり、再現性が悪くなるところをつかみ、そこを境目にすることがポイントです」とは、同アイアンの開発担当者・柴崎高賜さんのアドバイス。アイアンショットの確率を上げてバーディチャンスが増える、そんなワンランク上のゴルフを味わえるに違いない。
ツアープロの声"助けてくれる"クラブを僕らも求めている
「上の番手はすぐにでもP770にしたい」(新村駿)
「顔が超好みです。いい意味で中空の感じがないですよね。僕はダウンブローの軌道が強いのですが、上から入れても気持ちよく抜けてくれる。ロングアイアンはすぐにでも使いたい!」
「P7CBに早速チェンジ。楽に高く、これがいい」(石坂友宏)
「ツアーのコースセッティングはシビアですから、クラブに助けてほしい。P7CBはやさしいですね。僕にとっての“やさしい”はどんなライからでも楽に球が上がること。早速チェンジです」
写真/三木崇徳、有原裕晶、森浩輔、Getty Images