国内女子ツアーで使用されるアイアンは、いわゆる一枚モノと呼ばれる軟鉄鍛造の単一素材のモデル、タングステンなど異素材を組み合わせた中空構造ではないモデル、そして中空構造のモデルと3種類のモデルが主流になっています。
スリクソンZXi7の5番~PWまで軟鉄鍛造の一枚モノを投入している小祝さくら選手や中空構造のテーラーメイドP770を7番~PWまで投入し浮上してきた山内日菜子選手など同モデルでそろえる選手もいますが、ここでは2種類のアイアンを組み合わせて投入するプロにそのメリットを聞きました。

スリクソンの新アイアン「ZXi5」と「ZXi7」を組み合わせて投入する青木瀬令奈
まずはスリクソンの新モデルで軟鉄鍛造の一枚モノ「ZXi7」と中空構造の「ZXi5」を組み合わせる青木瀬令奈選手。8番を「ZXi5」で9番とPWを「ZXi7」にしていますが、元々7番アイアンは抜いて30度のUTをセッティングしています。
「9番、PWはしっかりとダウンブローでスピンをかけて狙ったエリアに止めたいので、縦距離も合わせやすい軟鉄鍛造モデルにしています。8番は球を拾いやすくて高さも出る中空構造の『ZXi5』と組み合わせました。ライが悪くても打ちやすいので思い切って振り抜けます」(青木瀬令奈)
実際に2つのモデルを見比べてみると、構えた見た目に違和感がまったくないことに気づきます。ソール幅はやや広く悪いライにも対応しやすくなっていますし、ソールのバウンス形状は共通しているので抜けの良さや芝に当たる感触にも違和感はなさそうです。

中空構造の「ZXi5」はバウンス形状は同じながらボールを拾いやすく高弾道で飛距離も出ると青木瀬令奈
「ZXi5」はフェースにクロームバナジウム鋼を採用し反発力を上げ飛距離と弾道の高さを確保するモデル。

青木瀬令奈は9番とPWにスリクソン「ZXi7」、8番に「ZXi5」を投入する
青木選手は30度の7番UTは150ヤード、8番アイアンでは140ヤード、9番は130ヤードを打ち分けているといいますので、ドライバーのヘッドスピード41m/sくらいの青木選手のセッティングはアマチュアゴルファーにとって大いに参考になりそうです。

「ZXi7」は打感の軟らかさを持つ「S15C」を採用した軟鉄鍛造モデル
続いてテーラーメイドの軟鉄鍛造アイアン「P・7CB」と中空構造の「P・770」の同じ6番を組み合わせる山路晶選手。「スタンレーレディスホンダゴルフトーナメント」で取材すると、同じ番手でも飛距離や高さの違いがあるのでセッティングしているといいます。
「やっぱり『P・770』のほうはミスヒットに強くてやさしいんです。ただ6番までは『P・7CB』のほうが縦距離を合わせやすく感じています」(山路晶)

テーラーメイド「P・7CB」と「P・770」を組み合わせる山路晶
「P・7CB」は軟鉄鍛造モデルですが、ソール内部のトウ寄りにタングステン、中央にはセラミックコアを封入した複合素材の構造で打感や操作性は損なわずに重心位置を最適化したモデル。ヘッドスピードのある山路選手は、6番アイアンまで「P・7CB」をセッティングしています。

軟鉄鍛造モデルでありながらタングステンやセラミックコアを内蔵した複合素材のモデル
同じ6番の「P・770」を5番アイアンの代わりにセットしていますが、面白いことにロフト角は同じ29度です。このモデルは、軟鉄の中空ボディに反発の強いフェース素材とフォームを充填することで打感を確保しながら飛距離や弾道の高さを売りにしています。そのため、「P・7CB」の6番は170ヤード、「P・770」の6番は180ヤードと10ヤードの飛距離差が生まれます。

「P・770」はフェースに反発力の強いクロームモリブデン鋼を採用しタングステンや充填剤を注入し、打感や打音の良さを確保する
「770」とはフェース長を表し、コンパクトで「P・7CB」と組み合わせても違和感のないサイズと形状になっています。

山路晶は同じ6番のテーラーメイド「P・7CB」(左)と「P・770」(右)を投入する
スリクソンとテーラーメイドに共通するのは、コンボにすることを前提に設計されている点です。そのため組み合わせても違和感のないフォルムやソール形状を持ち、打感の違いも最小限に収めています。どの番手で組み合わせるかは、ダウンブローの強弱やヘッドスピードなどのインパクト条件によって選ぶとよいでしょう。

山内日菜子の場合はコンボにせず「P・770」を通しでセッティングしている
もちろん山内日菜子選手のように、中空構造の「P・770」を通しでセットする選手もいますので悩ましいところでもありますが、それもゴルフの楽しみ方の一つ。コースによって組み合わせる番手を変化させるのも大いにアリだと思います。
写真/中村修