「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はドライバーの空力について教えてもらった。
画像: ”空力設計”によってヘッドスピードは上がるものなのか?(写真はイメージ)

”空力設計”によってヘッドスピードは上がるものなのか?(写真はイメージ)

さまざまなドライバーが”空力”を意識している

みんゴル取材班(以下、み):各メーカーともドライバーの空力性能を上げようといろいろな工夫をしています。いま勢いのあるタイトリスト「GT」なんかも「次世代のエアロダイナミクス」と謳っています。ただ、「G430」や「ゼクシオ」のようなクラウンの突起とか、「Qi10」のソールの膨らみのような特徴的な形状はありません。

宮城:フェースにぶつかった空気はヘッドの上下に分かれて流れます。上の方に流れた空気はロフトがあるためクラウンから離れますが、下側の空気はソールに沿って流れます。したがって、空力をよくするにはソールの形状が大事です。「GT」のソールは凹凸があまりなく、「GT3」もウェイトの部分に蓋をして隠しています。こうしたすっきりしたソール形状は空気の流れが乱れにくく空気抵抗が小さくなります。ちなみにF1などレースカーが床に板を貼ってフラットにしているのもそのためです。「スリクソンZXi」やホンマの「TW767」なんかもソールがすっきりしたデザインなのは空力を意識しているのかもしれません。

み:そういえば「Qi10」もソールのスリットに蓋をしています。見た目の問題だけではなかったわけですね。

宮城:テーラーメイドといえば「SIM」からイナーシャジェネレーターをソールに配置したのも理に適っています。

み:「M5」まではウエイトだったりスリットだったりソールがけっこう凸凹していました。「SIM」から空力が進化した感じですね。

宮城:素材や構造の進化が行き着くところまで行ってしまったので、空力をやらざるを得なくなったという一面もあると思います。また、空力に影響する要素として見落とされがちなのはフェースの大きさです。すれ違うときに風圧が大きいのはトラックとスポーツカーのどちらでしょうか?

み:断然トラックですね。クルマで走っていても前から抵抗を受ける感じがしますし、バイクや自転車だと風圧でふらついたりしますから。

宮城:反発力を上げるにはフェースを大きくするのが手っ取り早い方法ですが、フェース面積が増えるとボディが四角いトラックと同じように空気抵抗が増えます。逆にヘッドは大きく作ってもフェース面積を小さくすればスポーツカーのように抵抗は小さくなります。

み:なるほど。実際のところドライバーヘッドの空力はヘッドスピードにはどれくらい影響しますか?

宮城:クルマのエアロパーツなんかは80キロくらいスピードを出さないと効果がなく、速度が上がるほど効果が大きくなるといわれています。ゴルフクラブも同じで空力効果を体感できるのはある程度以上ヘッドスピードを出せる人でしょう。

み:ヘッドスピード40m/sくらいのアマチュアはどうでしょう。多少でもヘッドスピードが上がりませんか?

宮城:効果がゼロということはないでしょう。ただし、先ほどフェース面積の説明でも言ったようにボール初速や飛距離は空力だけで決まるものではありません。知っているプロからも空力のいいヘッドのお陰でヘッドスピードが上がったという話は聞きません。空力についてアマチュアが考える必要はないし、実際に打ってみて飛ぶか飛ばないかを判断すればいいと思います。

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