「大王製紙エリエールレディス」で今季2勝目を飾った山下美夢有。大会記録を1打更新するトータル22アンダーで優勝したスウィングをみんなのゴルフダイジェスト特派記者でプロゴルファーの中村修が解説。

今季の山下美夢有選手は、オリンピック出場の条件である日本勢2位以内の世界ランキングを目指してスタートし、6月17日時点の世界ランキングでは20位に古江彩佳、21位に畑岡奈紗、22位に山下美夢有の順位から、翌週の「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」で2位タイとなり出場資格の決まる6月24日時点の世界ランキングで19位となり、オリンピック出場ランキングでも17位に入り、笹生優花に続いて日本勢2位のランクになったことでオリンピック出場を叶えました。

画像: 「大王製紙エリエールレディス」で今季2勝目をトーナメントコースレコードで飾った山下美夢有(写真/岡沢裕行)

「大王製紙エリエールレディス」で今季2勝目をトーナメントコースレコードで飾った山下美夢有(写真/岡沢裕行)

そのため出場試合数も昨年の32試合から次戦の最終戦を含めても24試合と8試合少なくなっています。昨年は5勝を挙げトップ10回数10回で1位、20位以下の回数は8回でしたが今季は優勝2回でトップ10回数は17回で2位、20位以下の順位は1回しかありませんでした。世界ランキングの算出方法は獲得ポイントを出場試合数で割った平均点で決まるので、ランクを上げるためには出場した試合で少しでも上位で終えることがカギになります。

まさに今季の山下選手は海外メジャーも含め結果を出し続けたことで、現在の世界ランクはアムンディ・エビアン選手権でメジャー初制覇を遂げた古江彩佳選手の9位に次いで、日本勢2番目の14位(11月17日現在)に位置しています。その原動力になったのはショットだけでなくショートゲーム、メンタルなど総合的な安定感に他ならないでしょう。

スウィング面から見てみると、今大会の4日間の中で振り遅れて想定よりも右に出るショットが何度かありました。しかし、そのミスが出たとしてもグリーンを外さないマネジメントやアプローチとパットで簡単にはボギーにしない高い技術もさることながら、次のショットではすぐに修正しドローヒッターが狙いにくい右サイドに切られたピンにも、積極的に攻める姿勢に安定感の秘訣を見た気がします。

画像: 振り遅れずにピタリと決まったフィニッシュ(左)と少し振り遅れた際のフィニッシュ(右)(写真/岡沢裕行)

振り遅れずにピタリと決まったフィニッシュ(左)と少し振り遅れた際のフィニッシュ(右)(写真/岡沢裕行)

一般的に振り遅れると、先行する下半身の動きに対して上体が開き腕が遅れることでフェースが開いて当たり想定よりも出球が右に出たり、振り遅れたことに反応して体の動きを止めフェースを返して左に引っかけるケースもあります。逆に下半身の動きよりも上体が強くなるとフェースがかぶって引っかけることになります。

画像: 画像A/アドレスで作った腕とクラブの角度を変えずにテークバックする(写真/大澤進二)

画像A/アドレスで作った腕とクラブの角度を変えずにテークバックする(写真/大澤進二)

その上半身と下半身のタイミングを整えるために「手元を体の正面から外さないようにする」という表現は、選手からもコーチからもよく聞かれる言葉です。中継放送だとルーティンまで映ることは少ないですが、山下選手も打つ前のルーティンでまさしく腕を体の正面から外さないハーフスウィングを二度、三度と繰り返しています。

もちろんトップに近い位置では手元は体の正面からは外れますので、その感覚をつかめるハーフスウィングをルーティンに入れているのでしょう。

画像: 腕とクラブで作った角度をキープする意識を持つことでフェース面やクラブ軌道のコントロール性は上がる(写真/大澤進二)

腕とクラブで作った角度をキープする意識を持つことでフェース面やクラブ軌道のコントロール性は上がる(写真/大澤進二)

ポイントは画像Aのアドレスで作った腕とクラブの角度を変えないイメージを持ってハーフスウィングを繰り返すこと。そうすることによってフェース面や距離感のコントロールにつながっていきます。   

今週は山下選手にとっては、三連覇のかかる最終戦「JLPGAツアー選手権リコーカップ」です。左ドッグレッグの多いドローヒッター有利なコースで、新旧年間女王の二人がどんなプレーを見せてくれるのでしょうか。

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