前週の「ゴルフ5レディス」で今季5勝目を飾り、国内メジャー2戦目「ソニー日本女子プロゴルフ選手権」に臨んだ竹田麗央選手と海外メジャー、オリンピック出場のため7月半ばの「大東建託・いい部屋ネットレディス」以来の出場となった山下美夢有選手の優勝争いは見応えのある展開になりました。
「AIG女子(全英女子)オープン」を最後に海外メジャーも終わり、久しぶりにJLPGAツアーのフルメンバーが揃いました。ポイントランク上位3名の竹田麗央、山下美夢有、岩井明愛選手が上位に名を連ね、選手、キャディ、ボランティアまでも棄権する暑さだった沖縄でも3選手は海外メジャーやオリンピックの経験を生かし、ランキング通りのプレーを見せてくれました。
今季、「KKT杯バンテリンレディス」の初優勝から覚醒し続け6勝目を飾った竹田選手は、飛距離の出るドライバーにウェッジを使うショットの上手さ、独特のタッチが求められる沖縄の芝にも対応したパッティングで4日間でボギーは4個、23個のバーディを奪いました。
一方の山下美夢有選手は、優勝こそないものの出場15試合で2位(タイを含む)6回を含め、ベスト10フィニッシュ11回と圧倒的な安定感で、今大会でもボギーは3個、21個のバーディを奪い1打差まで追い上げ2位でのフィニッシュとなりました。
この二人の共通項を考えてみると、竹田選手はフェード、山下選手はドローと球筋の違いこそあれ、どちらか一方向に曲がる球筋をベースにスウィングもコースマネジメントを構築している点、アプローチ、パットの技術が非常に高い点、そして強靭な体力やメンタルという3つのポイントが挙げられます。
フェードヒッターの竹田選手は、ヘッドをアウトサイドかつアップライトにテークバックし、下半身を使って回転力を最大限に利用しています。ドライバーが不調に陥ると「ラフが深く曲がるのを恐れて振れていなかった」と、しっかり振り切ることを意識することで復調させます。
朝の練習のスタートはウェッジを使ったスローモーションで振って15ヤードほど飛ばす練習から始めています。動き出しの順番を確認しながらバランスを整える練習法も、スウィングが複雑ではなく、とてもシンプルなのでできることでしょう。
ドローヒッターの山下選手は身長が高くないこともあり、特に長いクラブでスウィングプレーンはフラットになりやすく、スウィングプレーンがフラットになればなるほどインサイド軌道の角度は強くなりますので、ドローのほうが打ちやすくなります。その特性を生かしているのが山下であり古江彩佳選手もそうです。
山下選手は、フェースをシャットに使いながら手元を体の正面から外さないようにすることで、振り遅れがなく安定した曲がり幅のドローボールをコントロールしています。この手元が体の正面から外れないことこそ、シンプルなスウィングにつながることを山下選手は教えてくれています。
コーチを務める父・勝臣さんがトップでの間、右ひざが出るタイミングなどをアドバイスしている光景を目にしていましたが、余計なことはせずに小さい頃から培ってきたスウィングに磨きをかけてきたことで年間を通して安定したスウィングを作ることができているのでしょう。
竹田選手は兄と弟を持つ3兄妹で育ち、小さい頃から一緒に野球をしてきたこともあり、投げる、打つ、走ることで培った体力は大きなアドバンテージになっていますが、その体力があってこその4日間の集中力につながっていると思います。
山下選手も150センチの体ではありますが、水の入ったポリタンクを持ったスクワットで下半身を強化した話は有名ですが、19年のプロテスト合格当時とは比べ物にならないくらい体の線は太くたくましくなっています。故障やケガの防止、スウィングの安定性や年間を通して戦う体力や集中力にトレーニングは不可欠なことは当たり前になっていますが、現在でもしっかりと取り組んでいることは、二人に共通する点です。
アプローチ、パットのショートゲームのレベルの高さはバーディの多さとボギーの少なさに現れていますが、竹田選手はオデッセイ「Ai-ONE#7S」を使い続けているのに対して、山下選手はグリーンによってパターを使い分けています。今大会ではピン「PLD オスロ3」を投入していました。グリーンのスピードや転がりの違いに対して1本のパターで対応するタイプの選手とパターを替えることで対応するタイプの選手が存在しますが、竹田選手は前者で山下選手は後者という違いがあります。
年間女王争いは終盤に向けてこの二人を中心に進むと予想されますが、山下選手の3年連続の女王になるか、竹田選手の初優勝から一気に年間女王まで上り詰めるか、引き続き注目していきましょう。