解説:奥嶋誠昭プロ
プロコーチとして稲見萌寧の五輪銀メダル獲得を支えるなど活躍。
最新機器を用いた科学的なレッスンに定評がある理論派。
グリッププレーッシャーは“切り返し”がピーク
感圧テープと動画が連動する計測アプリを使用
感圧センサーがスマートフォンで撮った動画とリンクするシステムで、スウィング中にかかるグリップ圧を計測、視覚的に見ることができる。
グリッププレッシャーについて語るとき、レッスンの場面では「強く握ってはいけない」というのが定説だった。「小鳥を包むように」とか「クラブが飛ばない範囲で最小限の力で」といった表現を聞いたことがある人も多いだろう。
しかし奥嶋誠昭プロは、ずっと「そんなはずはない」と考えていたという。ボールを強く叩こう、クラブを速く振ろうとしたら、インパクトからフォローにかけて、グリップにかなりの力が入っているはずだというのが奥嶋プロの実感だった。
そこで今年9月奥嶋プロは、その考えを確かめるべく、自身のスタジオにグリッププレッシャーを計測できる機器を導入した。グリップに感圧センサーを巻き付け、そこで計測したグリップ圧が、スウィング動画と連動する形で確認できるというものだ。これを使って多くのゴルファーからデータを取ったところ、意外な事実が見えてきたという。
「結論から言うと、スウィング中、グリップはかなり強い力で握られています。ただしそれは、ほぼ切り返しの瞬間だけ。私自身はフォローでクラブを加速させたいイメージがあったので、インパクトからフォローにかけて強く握っていると思っていましたが、実際は切り返しでギュッと入った後はほぼグリップ圧は抜けてしまいます。取ったデータを見て自分の感覚とのギャップに驚きましたが、この傾向はプロや上級者はみな同じ。上手い人は例外なく、切り返しでグリップをMAX強く握っているんです」
切り返しの瞬間にグリップにかかる圧力は、奥嶋プロのアイアンショットで550NT(ニュートン)くらい。キログラム換算するとだいたい52~53キロなので、かなり強く握っていることになる。なぜこれが「ゆるゆる」とか「小鳥を包む」といった表現になり得るのだろうか?
「1つは、アドレスで強く握りすぎて肩に力が入ってしまうアマチュアを指導するための、極端なレッスンワードという側面があると思います。もう1つの側面は、これがほぼ受動的な出力だという点です。切り返しはクラブの方向転換が起こるため、手にそれを支える力が必要になります。切り返しでグリップに高い圧がかかるのは、このクラブモーメントと同じだけの力で受け止め、エネルギーを拮抗させているからなんです。つまりプレーヤーがクラブを強く振るために能動的に出力しているのではなく、“支えている”だけとも言えます。これを『力を入れていない』と感じる人が一定数いるということなのだと思います」
右手より左手のほうが強い!? アドレス時の強さは人それぞれ
感圧テープの位置を変え、左右の手の違いを測ってみると、右手もグラフの波形は概ね左手と同じだが、奥嶋プロで最大400NT程度。利き手にもかかわらず、左の7割程度だった。
アマチュアのグリップ計測の結果や、“いい力感”でグリップするポイントは2025年1月号の「月刊ゴルフダイジェスト」とMyゴルフダイジェストにて掲載中!
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TEXT/Kousuke Suzuki
PHOTO/Hiroyuki Arihara
THANKS/REAL SWING GOLF STUDIO
※月刊ゴルフダイジェスト2025年1月号「”手の中”を科学する」より一部抜粋