ジュニア時代に取材をした小斉平優和と金子駆大。プロになりシード権を獲得した今、「同じような思いの子が少しでも減ってくれれば」と、親から手を上げられていたことを実名で語ってくれた。日常的な暴力や学校へ行かせてくれないという生活。それらは、大人になっても彼らに影響をもたらしていた。連載の第5回目。
 
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▶【第2話】「学校に行ったらダメですか?」はこちら
 
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画像1: 第5話「ぼくが決めたらダメですか?」
【ジュニアゴルファーの闇に迫るルポ『ありがとうの闇』】

小斉平優和

26歳。小学校から全国優勝を経験し高校卒業後プロ入り。シード権を失った時期もあるが、2025年はシード選手としてレギュラーツアーに参戦予定。

画像2: 第5話「ぼくが決めたらダメですか?」
【ジュニアゴルファーの闇に迫るルポ『ありがとうの闇』】

金子駆大

22歳。小学時代から全国で名をとどろかせる存在で高校卒業後プロ入り。2024年に初シード選手としてレギュラーツアーに参戦、トップ10入り6回。2025年のシード権も獲得した。

聞き手/ゴルフダイジェスト・ヤマダ
ジュニア担当として全国の選手と親御さんに取材を続ける。自身も8歳から競技ゴルフをしてきた元ジュニアゴルファーで1児の父。

過干渉も子どもに大きな傷を残す

ヤマダ: 前回は、2人のほかにも何人かのジュニア選手が参加した私的な合宿で、より暴力や度を越えた罰走などが拡大した話をうかがいました。

金子: 暴力を受けているときは、嫌だと思いつつほかの子もされているので、それが「特別」とも「普通」とも思っていませんでした。今は、異常だということが分かりますが、仮に当時そう思ってたとしても、小学生なのでどうにもできないですし。

小斉平: 「普通」、っていうのがどんなことなのかもよく分からないしね。

金子: 暴力ではないですが、最近のジュニアを見ていると自分のキャディバッグを親に持ってもらっている子を頻繁に見かけます。あれは、普通じゃないって思います。

画像: ランチを食べながらインタビューに答える小斉平優和(左)と金子駆大(右)

ランチを食べながらインタビューに答える小斉平優和(左)と金子駆大(右)

ヤマダ: ゴルフ以外の教育の場でも、親の過干渉が問題になっていますね。

小斉平: 殴られるとゴルフ自体が嫌いになっちゃうっていう影響があるけど、過干渉も大きい影響があると思うわ。

ヤマダ: 自分の荷物を自分で持つ、ということ自体に大きな意味があるわけではないですが、「やってもらって当然」という思考になってしまいそうですよね。

金子: バッグを持ってあげている親は、他のことだって子どもの代わりにやっているでしょうから。

ヤマダ: ジュニアへの取材でも、あいさつができなかったりお礼が言えない子に頻繁に出会います。親があらゆることに干渉しすぎるため、他者に配慮する気持ちみたいなものが育っていないんだと思います。そういった子は、大人になってからとても苦労をすることになるんじゃないかと老婆心ながら思います。

人と上手く話せない……

――我が子をゴルフに集中させたい、という親心は誰しもがあるだろう。ただ、ボールを打つことや良いスコアで上がることだけがゴルフではない。

個人競技とはいえコースを管理してくれる人や大会を運営してくれる関係者の方々、そして同伴競技者があってこそ成り立っているのは言うまでもない。それらを理解し、感謝の気持ちを持たなければ、自立した大人にはなれないだろう。スウィングやスコアメイクだけを追い求めることに、プロである2人は警鐘を鳴らしている。

小斉平: 以前にも話したように、ボクは学校に行かせてもらえなかったせいで、大人になってから周りの人とコミュニケーションが上手く取れないなっていうことがありました。ただボールを打つのが上手いだけじゃプロとしてやっていけないし、やっぱり自分のことは自分でできるようになるっていう経験が必要だと思う。

金子: ゴルフをやってない時はイチ社会人なわけだし、ジュニアゴルファーの大半がプロになれるわけじゃないことを考えると過干渉も悪でしかない。

画像: 金子駆大

金子駆大

ヤマダ: 仮にそういった子どもたちが成果を出せなかったとき、親御さんのなかに「ここまでやっているのに!」という気持ちが芽生えてきてしまうのは、想像に難くありません。

金子: それが暴力につながったら最悪です。

ヤマダ: 私も子を持つ親として、もし息子がゴルフをやるなら、上手にボールを打つことと同時に、同伴者のボールを一緒に捜したり、スムーズにプレーが進行できるようにバンカーならしをサポートしたりするようなプレーヤーになってほしいと思います。

小斉平: ボクも自分の子どもがゴルフをやるなら、周りから「ありがとう」って言われるゴルファーになってほしいかも。

画像: 小斉平優和

小斉平優和

ヤマダ: きっと、ありがとうと言われた子は、ありがとうと言えるようになると思うんです。そうやって、社会と関わる経験をして自立していくんじゃないでしょうか。

――自分に子どもが生まれたことで、子育てや社会とのかかわり方についても深く考えるようになっていったという小斉平プロ。

一方の金子プロは、自分に子どもがいたら、ゴルフはやらせたくないという。ツアープロにまでなったのに、なぜそのような考えになってしまったのか。

次回、その理由について語ってくれた。

第6話「どうしたら褒めてくれますか?」は明日(2025年1月28日)18時に公開予定

※この記事は、週刊ゴルフダイジェストで連載中の「ありがとうの闇」を再構成したものです。

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