「週刊ゴルフダイジェスト」や「みんなのゴルフダイジェスト」で、障害者ゴルフの取材記事を執筆したベテラン編集者が、日本だけでなく世界にアンテナを巡らせて、障害者ゴルフのさまざまな情報を紹介。初回となる今回は日本障害者ゴルフ協会が主催した「コースデビュー&レッスン会」についてです。

皆さんは「障害者ゴルフ」の世界をご存知ですか? ゴルフダイジェスト社ではこれまで、大会やイベント、障害者ゴルファーなどを多く紹介してきました。それらを読んで興味を持った方、全然気づかなかったという方、身近に障害者ゴルファーがいますという方、いろいろな方がいらっしゃると思います。

この連載では、障害者ゴルフに関するさまざまな情報、感想や意見、人々の物語、ときどき蘊蓄(うんちく)を、日本だけでなく世界にアンテナを巡らせて、紹介していきます。そして、ゴルフの力や魅力を再発見していただく場、皆さんの交流の場になればいいと考えています。

障害者だって、きちんと教わりたい

さて、今回紹介するのは、日本障害者ゴルフ協会(DGA)が初めて行った「コースデビュー&レッスン会」に関してです。

障害者にとって、まず「教わる」ということにハードルがあるんです。ゴルフに興味を持ったとき「本当に自分にできるんだろうか?」「難しそう」などと、ゴルフを再開しようとしたとき「前のように動かせないから無理かな」「こんな体で、こんなプレーで恥ずかしい……」などと思ってしまう。

これは健常者にも身に覚えがあるはずですよね。ただそこで、「教わる」という選択を思いつきます。職場近くや近所の練習場、家族や仲間のゴルファーのレッスンを受けようと。でも、障害者は、「どこに行ったらいいの?」「プロは私なんかに教えてくれるんだろうか」「練習場に行くこと(移動すること)自体が難しい」など、その“一歩”が出しづらい心身状態にあることも多いのです。

画像: 大会のみならずレッスン会もコースの協力があってこそ。「このような機会を作っていただき、DGAの方々、指導してくださったプロの方々、千葉市民ゴルフ場のスタッフの方々、一緒に回って下さった方々、感謝です」(参加者の三森さん)

大会のみならずレッスン会もコースの協力があってこそ。「このような機会を作っていただき、DGAの方々、指導してくださったプロの方々、千葉市民ゴルフ場のスタッフの方々、一緒に回って下さった方々、感謝です」(参加者の三森さん)

障害者だって、きちんと教わりたい――。
 
DGAでは、関東と関西で月1回程度、練習場での練習会とコースでの月例ラウンドを行っています。障害者ゴルフを知ってもらう、裾野を広げるためには必要なことだと考えてきたから。

ただ、なかなかコースに出るきっかけを作るまでには至らず、今年1月に初の試みとして「レッスン+ラウンドでの実践練習」を千葉市民ゴルフ場で行いました。何よりコースでプレーをする楽しさや気持ちよさを知ってほしいとの思いがあるのです。

レッスンはDGAの誇るプロメンバー3人が担当。埼玉の練習場で日々レッスン活動も行うゴルフインストラクターの小林茂(左下肢障害)、障害者ゴルフの第一人者でPGAティーチングプロA級の小山田雅人(右前腕切断)、300Yの飛ばし屋で海外の試合にも積極的に挑戦するPGAティーチングプロA級の吉田隼人(右大腿切断)です。

ひと口で障害者ゴルファーと言っても、その障害の種類やゴルフの腕前はさまざま。教える側も教わる側も、より「工夫」が必要となります。しかしその前に、やっぱり“一歩”を踏み出すこと、が大切なんです。

画像: 車椅子の菅原道直さんは、今回がコースデビュー!実際にコースで打ってみたほうが飛ぶようになったと嬉しそうに、ゴルフを楽しんでいました

車椅子の菅原道直さんは、今回がコースデビュー!実際にコースで打ってみたほうが飛ぶようになったと嬉しそうに、ゴルフを楽しんでいました

“楽しむ”だけでなく、“できるようになる”ゴルフを目指したい

参加した三森喜代美さん(左下肢障害)にお話を聞きました。
 
「千葉市民のレッスン会、目から鱗のとてもためになるレッスン会でした。小林プロのグループでしたが、障害やレベルに合わせた指導をしていただき、この年で考える大切さを教わりました。車椅子の方とご一緒して、車椅子に固定されることで、パターの振り方にメリットがあること、逆に自立できる私が当たり前のようにスタンスで調整していることが、車椅子では振り方を変えなければ対応できないのだということも知りました。
 
小林プロは、できないことに対して、理由をわかりやすく説明して、考えること、工夫をすることの大切さを教えてくれました。パッティング、アプローチ、スウィングと指導の時間があり、その後、コースで実践の指導も受け、ためになり、かつ楽しい時間があっという間に過ぎました。
 
昨年、月1の練習場レッスン会に参加させていただくようになりましたが、これからは、ただ楽しいゴルフではなく、少しでも進歩して、“できるようになる”楽しみも増やせていけたらと思っています。スタート地点のレベルが低いのですが、運動神経に恵まれない私でも、まだ伸びしろがあると信じて、気長に頑張ってみようと思います」

画像: 「ゴルフ場でのレッスンは初心者には有意義だったようです。パッティング、アプローチ、スウィング、各30分ずつ習い、数ホールをラウンド。1人の講師に生徒は3人だけという充実ぶり。じっくりレッスンを受けられました」(DGA・松田治子代表)

「ゴルフ場でのレッスンは初心者には有意義だったようです。パッティング、アプローチ、スウィング、各30分ずつ習い、数ホールをラウンド。1人の講師に生徒は3人だけという充実ぶり。じっくりレッスンを受けられました」(DGA・松田治子代表)

コースに出る気持ちよさ、そして“できるようになる”楽しさは、ゴルファーなら皆同じ。障害者同士の学びもあったようです。
 
昨日(2月13日)には新君津ベルグリーンCCで第2回目が行われました。こちらは次回レポートします。

写真提供/DGA

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